お役立ちコラム

仮設工事

仮設工事とは?共通仮設費と直接仮設工事の違いを徹底比較

建設工事では、実際の建物や構造物をつくる“本体工事”だけでなく、それを支えるための仮設工事が必ずと言っていいほど必要になります。仮設工事に関わる費用は、大きく「共通仮設費」と「直接仮設工事費」に分かれ、どちらも見積書に含まれる重要な項目です。しかし、その違いや計算方法を正確に理解していないと、コスト管理や工期管理の面で大きなロスを生むことも。
本記事では、仮設工事 とはそもそも何を指すのか、そして共通仮設費直接仮設工事の具体的な違いは何なのかをわかりやすく解説します。さらに、共通仮設費率計算エクセルの活用や、コストを適正に算出するポイントについても取り上げます。

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参考記事(外部サイト):共通仮設費とは?含まれる費用や計算方法などを解説!


仮設工事とは

仮設工事の基本的な定義

「仮設工事」とは、建設現場で本体工事を安全かつ効率的に進めるために、一時的に設置・使用する施設や設備、作業環境のことを指します。完成後の建物や構造物には直接関係しないものの、工事を成立させるうえで欠かせない役割を果たすのが特徴です。
一般的に仮設工事は、建物が完成すると撤去されるため、工事期間中だけ存在する“仮”の施設といえます。

仮設工事の主な例

  • 足場の設置
    建物の外装工事や高所作業を行うための足場。安全確保や作業効率向上に不可欠。
  • 仮囲い・仮設フェンス
    現場周囲を囲んで、第三者への危険を防止すると同時に、粉じん・騒音の飛散を抑制。
  • 仮設トイレ・休憩所
    作業員の健康管理や労働環境の維持のために設置。
  • 仮設事務所・倉庫
    工程管理や資材保管を行うためのスペース。
  • 仮設道路・仮橋
    重機や資材を搬入しやすくするため、一時的に設ける作業路や橋など。

仮設工事は安全管理・品質管理に直結するうえに、工事全体のコストにも影響を及ぼすため、計画段階から慎重に設計する必要があります。


共通仮設費と直接仮設工事の違い

仮設工事費用は大きく分けて、「共通仮設費」と「直接仮設工事費」(または直接仮設費)に区分されることが多いです。これは工事現場の費用管理を明確にするための分類であり、どちらに分類するかで原価管理や見積書の作成方法が変わってきます。

共通仮設費とは

定義と役割

「共通仮設費」とは、現場全体を通じて必要となる仮設工事や施設設備の費用です。工事の種類や工程にかかわらず、すべての作業に共通して利用されるため、「共通」という言葉が使われています。主に下記のような項目が該当します。

  • 仮囲い・仮設事務所
  • 作業員の休憩所・食堂・トイレ
  • 電気・水道の仮設配線、電話回線工事
  • 看板や標識の設置
  • 現場監督や警備員などの人件費(共通経費として扱う場合も)

重要性と特徴

共通仮設費は、工事全体を管理・運営するために必要な費用であり、工事が進む間じゅう現場に設置されるものが多いのが特徴です。直接生産に関与しないため、コストダウンの余地があると考えられがちですが、必要最小限の対策を怠ると安全管理や品質に悪影響を及ぼす可能性があります。

直接仮設工事(直接仮設費)とは

定義と役割

一方、「直接仮設工事」または「直接仮設費」とは、特定の工程や作業に直接必要な仮設を指し、本体工事に密接に関係する費用をいいます。たとえば、鉄骨工事やコンクリート打設工事で使用される足場型枠などが典型例です。

  • 足場の組立・解体
  • 型枠工事(コンクリートを流し込む枠の設置・撤去)
  • 一部の電気設備や給排水設備の仮設(特定の工種専用など)

重要性と特徴

直接仮設工事は、それぞれの工程で不可欠な作業を支え、工事が完了すれば撤去されることが多いのがポイントです。たとえば、足場は外壁工事が完了すれば取り外されますし、型枠もコンクリートが固まれば不要になります。そのため、工程ごとに発生する費用として捉えられ、追加工事や設計変更があると直接仮設費も変動しやすいという特徴があります。

なぜ区別が必要なのか

  • コスト計算の透明化
    工事全体に共通する費用(共通仮設費)と、特定工程のみで必要な費用(直接仮設費)を分けることで、見積の根拠原価管理が明確になります。
  • 施工計画の精度向上
    直接仮設工事の費用を把握することで、どの工程にどれだけの仮設が必要なのか、計画の精密度を高めやすくなります。
  • 責任範囲の明確化
    下請けや協力会社が担当する領域と、元請が負担する領域をわける際にも、共通仮設費・直接仮設費の区別が重要です。

共通仮設費率の計算とエクセル活用

共通仮設費率とは

「共通仮設費率」とは、工事全体の直接工事費(本体工事費+直接仮設費)に対する、共通仮設費の割合を示す指標です。これによって、全体コストに占める共通仮設のウェイトを把握しやすくなります。
一般的な見積書では、直接工事費(本体工事+直接仮設費)に対して、共通仮設費率を掛け合わせて共通仮設費を算出する方法が用いられます。

共通仮設費率の計算式

大まかな計算式としては、次のように表せます。

共通仮設費率(%) =  (共通仮設費 ÷ 直接工事費) × 100

ただし、実務では「直接工事費」の定義に直接仮設費を含めるかどうかなど、会社やプロジェクトによって計算方法に多少の違いがある点に注意が必要です。また、同じ建築工事でも、工事規模や工期、現場条件によって適正な共通仮設費率が異なるため、一概に「○%が妥当」とは言いづらい面があります。

エクセルでの管理方法

シンプルなテンプレート例

エクセルを活用すれば、仮設工事費の内訳管理や率計算が効率的に行えます。たとえば、下記のようなシート構成を作るとわかりやすいでしょう。

  1. 入力シート
    • 各工程(基礎工事、鉄骨工事、内装工事など)の直接工事費
    • 直接仮設費(足場、型枠など)
    • 共通仮設費(事務所設置費、仮囲い、電気・水道など)
  2. 計算シート
    • 直接工事費の合計を求める
    • 共通仮設費の合計を求める
    • (共通仮設費 ÷ 直接工事費)×100 で共通仮設費率を算出
  3. 出力シート
    • 見積書の体裁に合わせ、算出結果を表示

注意すべきポイント

  • 品目の重複
    どこまでが共通仮設費に含まれ、どこからが直接仮設費なのかを明確に線引きする。
  • 追加工事の反映
    変更や追加が出た場合は、すぐにエクセル上の項目を更新して、最新の共通仮設費率を再計算する。
  • 工期や規模による変動
    共通仮設費が毎月一定額で発生するケース(仮設事務所のレンタルなど)もあるため、工期の延長による費用増をしっかりと反映させる必要がある。

コスト管理のポイント

1. 早期の計画・見積が重要

仮設工事は本体工事と同時並行で計画する必要があります。後から「足場が足りなかった」「仮設電気の容量が不足した」などの問題が発覚すると、追加工事や工期延長でコストが膨らむ危険があります。初期段階で入念に設計・見積を行い、必要な仮設を洗い出しましょう。

2. 工期短縮によるコスト削減

共通仮設費の多くは、工事期間中ずっとかかる費用(事務所の光熱費や仮囲いのレンタル料など)です。工期を短縮できれば、それだけ日数に応じた費用を削減できます。ただし、無理な工程圧縮は品質や安全面に悪影響を及ぼすため、バランスを考慮した施工計画が求められます。

3. 再利用・レンタルの活用

足場材や仮設ハウスなど、レンタルが可能な資材・設備は積極的に活用することで初期費用を抑えられます。一方で、長期工事や複数現場を同時に抱える場合は、購入して自社保有したほうがトータルコストが安くなる場合もあります。工事規模や期間を踏まえて判断するとよいでしょう。

4. 安全への投資を怠らない

仮設工事は、安全管理と深い関係にあります。費用を抑えたいがために最低限の足場しか組まなかったり、仮囲いを簡素に済ませたりすると、労災や第三者被害が起きるリスクが高まります。その結果、工期の遅延や賠償問題など、むしろ大きなコスト増につながる可能性があるため、必要な投資はしっかり確保することが大切です。


まとめ

本記事では、仮設工事とは何かという基本から、共通仮設費と**直接仮設工事(直接仮設費)**の違い、そして費用計算やエクセルでの管理手法、コスト管理のポイントまでを解説しました。

  1. 仮設工事とは
    本体工事を支えるため、一時的に設置・利用される施設や設備の総称。工事中の安全や作業効率を支える重要要素。
  2. 共通仮設費と直接仮設工事の違い
    • 共通仮設費:工事現場全体に共通して必要な仮設(仮設事務所、仮囲い、仮設電気など)
    • 直接仮設工事:特定の工程や作業に直接必要な仮設(足場、型枠など)
  3. 共通仮設費率の計算とエクセル活用
    • 共通仮設費率=(共通仮設費 ÷ 直接工事費) × 100
    • エクセルで品目ごとに入力・集計し、計算書や見積書を自動生成すると効率的
  4. コスト管理のポイント
    • 早期計画・見積で抜け漏れを防止
    • 工期短縮や再利用・レンタル活用でコスト削減
    • 安全への投資は惜しまない

仮設工事は地味な印象を持たれがちですが、実際には工事の成否や安全、コスト面まで幅広く影響を与える重要な要素です。適切に計画・管理を行うことで、工期短縮や費用の最適化が期待できると同時に、安全性と品質の向上にもつながります。ぜひ本記事を参考に、仮設工事の理解を深め、より効率的で安全な現場づくりに役立ててください。

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