「工事写真の撮り方がわからない」「黒板に何を書けばいいの?」「撮り忘れを防ぐ方法を知りたい」——そんなお悩みをお持ちの建設業の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、工事写真の撮り方を基礎から解説します。黒板の書き方、撮影のポイント、写真整理の方法を紹介し、検査に通る工事写真の撮影テクニックをお伝えします。

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工事写真とは?
工事写真とは、建設工事の施工前・施工中・施工後の各段階において、施工状況や進捗状況、工事過程などを撮影し記録したものです。「施工写真」とも呼ばれます。
工事写真は、単に現場の状況を記録するだけでなく、工事の品質を保証し、トラブルを防ぐ重要な役割を担っています。
工事写真を撮影する目的
工事写真を撮影する主な目的は以下の通りです。
- 施工状況の記録:工事の各施工段階における施工状況を記録する
- 品質の証明:構造物の寸法、使用材料の品質が設計図通りであることを証明する
- 施工方法の証明:施工方法が仕様書に従っていることを説明・証明する
- 維持管理の資料:工事完了後の維持管理やトラブル発生時の原因究明に役立てる
- 隠ぺい部の確認:コンクリート打設後など、完成後に見えなくなる箇所を確認する
特に、コンクリート打設前の配筋状況など、施工後には見えなくなる部分の記録は非常に重要です。適切な工事写真がないと、後から確認ができず、トラブルや工期の遅れにつながる可能性があります。
工事写真に必要な9項目
国土交通省の「営繕工事写真撮影要領」などに基づき、工事写真として残すべき項目は以下の9つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ①着手前及び完成写真 | 工事の前後で変化が確認できる全景写真 |
| ②安全管理写真 | 安全対策、安全設備の状況を記録 |
| ③使用材料写真 | 工事に使用する材料の品質・規格を記録 |
| ④施工状況写真 | 施工の経過状況、特に施工後に見えなくなる箇所 |
| ⑤品質管理写真 | 品質試験や検査の状況を記録 |
| ⑥出来形管理写真 | 構造物の寸法や形状を記録 |
| ⑦災害写真 | 災害発生時の状況を記録 |
| ⑧検査写真 | 各種検査の状況を記録 |
| ⑨その他 | 関係機関との協議状況など |
工事写真の黒板とは?

工事写真における黒板(小黒板)とは、現場で撮影する写真の中に一緒に写し込む「情報を記載した板」のことです。公共工事・民間工事を問わず、現場の記録として広く使われています。
黒板の役割
黒板には、写真だけでは伝わりにくい情報を正確に補足し、施工状況や工事の正当性を証明する役割があります。
例えば、ただの鉄筋の写真だけでは、それが柱の配筋なのか、梁の配筋なのかわからず、用途や位置も判断できません。しかし、黒板に「○○工事」「柱C1」「配筋完了」「2025年4月10日」と書かれていれば、その写真がいつ・どこで・どの作業を記録したものか、はっきり読み取れます。
黒板の使用は義務?
工事写真に黒板を写し込むことは、法令で明確に義務づけられているわけではありません。しかし、公共工事や多くの元請契約では、黒板によって必要な情報を写真に記録することが実質的に求められています。
国土交通省の「営繕工事写真撮影要領」では、撮影時に黒板などを使って「工事名」「撮影場所」「施工状況」などを明確に示すことが推奨されています。
黒板の書き方
黒板を正しく書くことで、工事写真の価値が大きく変わります。ここでは、黒板の書き方のポイントを解説します。
5W1Hを意識して書く
黒板に書く内容は、「5W1H」を意識すると、必要な情報が網羅できます。
| 5W1H | 内容 | 黒板への記載例 |
|---|---|---|
| Who(誰が) | 施工業者・立会者 | ○○建設株式会社 |
| When(いつ) | 撮影日時・施工時期 | 令和7年4月10日 |
| Where(どこで) | 工事場所・部位 | 1階柱C1 |
| What(何を) | 工事名・工事種目 | ○○ビル新築工事 配筋工事 |
| Why(何のために) | 工事目的・規格・寸法 | D13@200 |
| How(どのように) | 施工状況・施工方法 | 配筋完了 |
黒板に記載すべき項目
国土交通省の「営繕工事写真撮影要領」では、黒板に記載すべき項目が定められています。一般的に求められる主な項目は以下の通りです。
- 工事名:「○○ビル新築工事」「△△邸リフォーム工事」など
- 工種:「基礎配筋」「外壁タイル貼り」「電気配線工事」など
- 撮影部位・箇所:「1階柱C1」「2階トイレ」など
- 施工状況:「配筋完了」「コンクリート打設中」など
- 撮影日時:「令和7年4月10日」など(できれば時刻も)
- 寸法・規格:「D13@200」「t=150」など
- 施工業者名:「○○建設株式会社」など
- 立会者名:必要に応じて記載
黒板の書き方のポイント
黒板を書く際は、以下のポイントを意識しましょう。
ポイント①:文字は大きく読みやすく書く
黒板の文字は、写真に写し込んだ際に読める大きさで書くことが重要です。小さすぎると判読できず、工事写真としての価値がなくなります。
ポイント②:略語や専門用語はわかりやすく
後から見返したときに誰でも理解できるよう、略語や専門用語はなるべくわかりやすく表記しましょう。
ポイント③:記入内容を統一する
複数の担当者が撮影する場合、黒板への記入方法や記入内容を統一しておきましょう。あらかじめフォーマットを作成し、各担当者に渡しておくと効率的です。
ポイント④:撮影箇所と黒板の内容を一致させる
黒板に記入した内容と、実際に撮影している箇所が一致しているか必ず確認しましょう。記載内容と写真が一致していないと、工事写真として認められない場合があります。
黒板の書き方の例
具体的な黒板の書き方の例を紹介します。
【例1】配筋工事の場合
工事名:○○ビル新築工事
工種:配筋工事
部位:1階柱C1
施工状況:配筋完了
規格:主筋D22、帯筋D13@100
撮影日:令和7年4月10日
施工者:○○建設株式会社
【例2】コンクリート打設の場合
工事名:△△マンション新築工事
工種:コンクリート工事
部位:2階床スラブ
施工状況:コンクリート打設中
配合:21-18-20N
撮影日:令和7年4月15日 10:30
施工者:△△建設株式会社
【例3】外壁タイル貼りの場合
工事名:□□ビル改修工事
工種:タイル工事
部位:北面外壁
施工状況:タイル貼り完了
材料:45二丁タイル
撮影日:令和7年5月20日
施工者:□□工業株式会社
工事写真の撮り方のポイント
工事写真を適切に撮影するためのポイントを解説します。
ポイント①:撮影計画を立てる
工事写真撮影の第一歩は、撮影計画を立てることです。
施工の全体像を把握し、「いつ、どこで、何を撮影するのか」を明確にすることが大切です。撮影計画を立てる際は、以下の点に注意しましょう。
- 工事工程表や施工計画書を確認し、撮影が必要な時期や箇所を洗い出す
- 施工の各段階(着工前、施工中、完成時)で必要な写真を漏れなく撮影する
- 施工手順や条件など、工事の特性を考慮して撮影タイミングを決める
- 撮影箇所が重複しないよう、担当者間で情報を共有する
特に、施工後には見えなくなる部分(鉄筋組立状況など)の撮影漏れには注意が必要です。撮影タイミングを逃さないよう、工程表に撮影予定を書き込んでおくと効果的です。
ポイント②:施工前・施工中・施工後の3ステップで撮影
工事写真は、施工前・施工中・施工後の3ステップで撮影するのが基本です。
| 段階 | 撮影内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 施工前 | 着工前の状況、現場全景 | 完成後との比較ができるよう撮影 |
| 施工中 | 作業状況、使用材料、隠ぺい部 | 後から見えなくなる箇所は必ず撮影 |
| 施工後 | 完成状況、仕上がり | 施工前と同じアングルで撮影 |
ポイント③:全景と部分の両方を撮影する
工事写真は、全体がわかる「遠景」と、詳細がわかる「近景」の両方を撮影しましょう。
- 遠景(全景):現場全体や構造物全体が把握できる写真
- 近景(部分):施工箇所の詳細や寸法が確認できる写真
遠景と近景を組み合わせることで、どの位置のどの部分を撮影したのかが明確になります。
ポイント④:同じアングルで撮影する
工事写真は、基本的に同じ方向・同じアングルから撮り続けることが重要です。
理由としては、撮影方向がバラバラだと、同じ施工箇所だと認識しづらくなるからです。工程や現場の状況を考えて、撮影位置を固定しましょう。
定点撮影(同じ地点から同じ構図で定期的に撮影)を行う場合は、天気の良い日を選び、毎回同じ時間帯に撮影するとより効果的です。
ポイント⑤:黒板の配置に気をつける
黒板は、撮影対象と一緒に写し込み、かつ文字が判読できる位置に配置することが重要です。
以下の点に注意しましょう。
- 黒板が被写体を隠さない位置に配置する
- 黒板の文字が読めるサイズで写るよう距離を調整する
- 逆光や照り返しで文字が見えなくならないよう角度を調整する
- 屋外では三脚を使用するか、補助者に持ってもらう
ポイント⑥:スケール(添尺)を使用する
寸法を確認する必要がある写真では、スケール(添尺)を添えて撮影しましょう。
スケールを入れることで、構造物の大きさや寸法が一目でわかります。出来形管理写真などでは必須となります。
ポイント⑦:撮影後すぐに確認する
撮影した写真は、その場ですぐに確認しましょう。確認すべきポイントは以下の通りです。
- 画像にブレやピンボケがないか
- 黒板の文字が読めるか
- 撮影対象が適切に写っているか
- 不要な写り込みがないか
不備があればその場で撮り直しましょう。施工が進んでしまうと、後から撮り直すことができない場合があります。
工事写真撮影の注意点
工事写真撮影における注意点を解説します。
注意点①:撮影タイミングを逃さない
工事写真で最も注意すべきは、撮影タイミングを逃さないことです。
例えば、コンクリート打設前の配筋検査では配筋写真を撮る必要があります。配筋写真がないと、コンクリート打設後に本当に鉄筋が問題なく組まれていたのか確認できず、トラブルの原因になります。
撮影タイミングを逃さないために、以下の対策を行いましょう。
- 撮影計画書を作成し、撮影タイミングを明確にする
- 工程表に撮影予定を書き込む
- 職人さんに事前に撮影タイミングを伝えておく
- 撮影担当者を決めて責任を明確にする
注意点②:写真の編集・加工は禁止
工事写真は重要な「証拠」となるため、意図的な改ざんや不必要な加工は厳禁です。
色補正や切り抜きも状況によっては「改ざん」とみなされる可能性があるため、必要最低限の編集にとどめ、原本データを必ず保管しておきましょう。
ただし、国土交通省の「営繕工事写真撮影要領」では、小黒板情報の電子的記入は編集に該当しないとされています。電子小黒板の使用は問題ありません。
注意点③:光の状況に気をつける
撮影時の光の状況によって、黒板の文字が見えなくなることがあります。
- 逆光:被写体が暗くなり、詳細が確認できなくなる
- 照り返し:黒板が白飛びして文字が読めなくなる
- 暗すぎる:全体的に暗く、詳細が確認できない
試し撮りをして、光の状況を確認してから本撮影を行いましょう。
注意点④:不要なものを写さない
工事写真には、撮影対象以外の不要なものをできるだけ写さないようにしましょう。
- 関係のない人物
- 車のナンバープレート
- 近隣の住宅
- 散らかった資材や道具
プライバシーに関わる情報が写り込んだ場合は、配慮が必要です。
注意点⑤:データのバックアップを取る
万が一のデータ消失を防ぐため、定期的なバックアップは欠かせません。
外付けハードディスクやクラウドストレージへのバックアップを行い、二重または三重のバックアップ体制を整えておくと安心です。
撮り忘れを防ぐ方法
工事写真の撮り忘れを防ぐための方法を紹介します。
方法①:撮影計画書を作成する
撮影すべき場面や頻度を明確にした撮影計画書を作成しましょう。
撮影計画書には以下の内容を記載します。
- 撮影対象(何を撮影するか)
- 撮影タイミング(いつ撮影するか)
- 撮影場所(どこで撮影するか)
- 撮影方法(どのように撮影するか)
- 黒板に記載する内容
方法②:撮影担当者を決める
撮影の担当者を決めて責任を明確にすることで、撮影漏れのリスクを減らせます。
担当者は工事の内容や撮影目的をよく理解している人が適任です。
方法③:工程表に撮影予定を書き込む
工程表に撮影予定を直接書き込むことで、撮影タイミングを見逃しにくくなります。
工事計画を画像として保存しておき、スマホやタブレットでいつでも確認できるようにしておくと便利です。
方法④:チェックリストを活用する
撮影すべき写真のチェックリストを作成し、撮影後にチェックを入れていく方法も効果的です。
チェックリストがあれば、撮り漏れに気づきやすくなります。
工事写真の整理方法
撮影した工事写真を適切に整理・管理する方法を紹介します。
工事写真台帳とは
工事写真台帳とは、工事写真をファイリングした台帳のことです。工事が適切に進められて完了したことや、一定の品質を保っていることを証明するために使用されます。
施工後に見えなくなる部分を撮影して、後から確認するためにも用いられます。
工事写真台帳の並べ方
工事写真台帳に写真を並べる順番は以下の通りです。
| 順番 | 内容 |
|---|---|
| ① | 着手前及び完成写真:左ページに着工前、右ページに完成写真を配置 |
| ② | 施工状況・手順写真:各工程の施工中の写真 |
| ③ | 使用材料写真:材料の品質・規格がわかる写真 |
| ④ | 品質管理写真:試験・検査の状況 |
| ⑤ | 出来形管理写真:寸法・形状の確認写真 |
| ⑥ | 安全管理写真:安全対策の状況 |
写真整理のポイント
工事写真を整理する際のポイントを紹介します。
ポイント①:撮影後すぐに仕分けする
撮影した写真は、撮影後すぐに工種や日付ごとに仕分けしましょう。後からまとめて整理しようとすると、膨大な量になり大変です。
ポイント②:ファイル名を統一する
写真のファイル名は、日付_工種_部位などのルールで統一しておくと、検索しやすくなります。
例:20250410_配筋_1階柱C1.jpg
ポイント③:フォルダ分けを徹底する
工種ごと、日付ごとにフォルダを分けて管理すると、必要な写真をすぐに見つけられます。
電子小黒板・工事写真アプリの活用
近年は、電子小黒板や工事写真アプリを活用して、工事写真業務を効率化する動きが広がっています。
電子小黒板とは
電子小黒板とは、スマホやタブレットで黒板を作成し、撮影時に画像に合成できる機能です。従来の手書き黒板と比べて、以下のメリットがあります。
| 比較項目 | 手書き黒板 | 電子小黒板 |
|---|---|---|
| 持ち運び | 黒板の持ち運びが必要 | スマホ・タブレットのみでOK |
| 文字入力 | 手書きで記入 | テキスト入力で簡単 |
| 視認性 | 天候や光で見えにくい場合あり | 常に見やすい状態で表示 |
| テンプレート | 毎回書き直し | テンプレート保存・呼び出し可能 |
| 撮り直し | 黒板の書き直しが必要 | 黒板情報の修正が簡単 |
工事写真アプリのメリット
工事写真アプリを活用することで、以下のメリットがあります。
- 黒板の持ち運び不要:電子小黒板でスマホ1台で撮影可能
- 1人でも撮影可能:黒板を持つ補助者が不要
- 写真の自動整理:撮影した写真を自動でフォルダ分け
- 写真台帳の自動作成:写真を選ぶだけで台帳が完成
- クラウド共有:撮影した写真をリアルタイムで共有
- 検索機能:必要な写真をすぐに検索できる
まとめ
工事写真は、施工状況を正確に記録し、品質管理やトラブル防止に役立つ重要なデータです。正しい撮り方を身につけることで、検査に通る工事写真を撮影できます。
本記事のポイント:
- 工事写真は施工前・施工中・施工後の3ステップで撮影
- 黒板には5W1Hを意識して情報を記載
- 黒板の記載内容は工事名、工種、部位、施工状況、撮影日時、寸法など
- 撮影計画を立てて、撮り忘れを防ぐ
- 撮影後はその場で確認し、不備があれば撮り直す
- 工事写真の編集・加工は禁止(電子小黒板の使用は可)
- 工事写真アプリを活用すれば、撮影・整理・台帳作成を効率化できる
撮影のコツを押さえて、検査に通る工事写真を撮影しましょう。
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