工事台帳とは?工事台帳のつけ方から管理方法まで解説!
公開日:2024.12.15
▼ 目次
工事台帳は、建設業界で工事ごとの費用や進捗を管理するために必要不可欠な帳簿です。効率的なプロジェクト運営と適正な経営判断を支える情報が詰まっており、特に元請けや下請けなど立場を問わず活用が求められるツールです。
この記事では、工事台帳の基本的な役割や目的、記載する項目、エクセルや専用ソフトを活用した作成方法について、実際の業務で役立つ具体例を交えながら解説します。
[1] 工事台帳とは?
工事台帳の定義
工事台帳とは、1つの工事プロジェクトにおける収入と支出を正確に記録し、工事の進捗や費用を把握するために用いられる帳簿です。すべての工事情報を一元管理するための書類であり、作成が法的にも義務づけられている場合があります。
工事台帳の目的
1. 工事ごとの収支管理
工事台帳は、各工事の収入(契約金額や追加工事費用)と支出(材料費、労務費、外注費など)を記録し、収支の状況をリアルタイムで把握するために役立ちます。逆に、工事台帳が適切に管理されていなければ、予定以上に職人を補充したり、材料を投入したりしてしまうなど予算オーバーにつながる可能性があります。
2. 完成工事原価や未成工事支出金の把握
完成工事原価とは、すでに完成した工事に計上する工事原価のことをいいます。材料費・労務費・外注費・経費の4つの費用で構成され、完成した工事の利益を明らかにするために必要となります。
未成工事支出金とは、未完成の工事に支出される費用をいいます。同じく材料費・労務費・外注費・経費の4つで構成され、貸借対照表上は棚卸資産として計上されます。
3. (公共工事の場合)経営事項審査で提出するため
建設業には、建設業法で定められた経営事項審査があります。公共工事の場合には、競争入札に参加する建設業者について資格審査が実施されます。資格審査の際に工事台帳の提出が求められるることが多く、建設会社の経営状況を客観的に数値で評価され、競争入札に参加ができるか、競争入札で有利な立場に立てるかが決まります。
4. 税務調査のため
工事台帳は、税務調査の際にも使用されます。工事台帳を用いて各工事の支出の記録を残せるため、税務調査時の指摘にもスムーズに対応することができるようになります。
工事台帳の法的義務
工事台帳を作成する法的義務はありませんが、工事台帳の作成は経営事項審査に欠かせない書類であり、公共工事を請け負うのであれば事実上必須となります。
また、公共工事・民間工事にかかわらず、建設業法で定められた条件(元請けが4,000万円以上を下請けに出す場合等)に当てはまる場合は施工体制台帳等の作成が義務づけられています。
[2] 工事台帳に記載する基本項目
工事台帳を適切に作成するためには、記載する項目を正確に把握しておく必要があります。以下は一般的に記載される項目です。
1. 工事情報
工事に関する基本情報を記載します。
- 工事名(例:〇〇ビル新築工事)
- 工事番号(社内で管理する識別番号)
- 工事場所(所在地住所)
- 発注者(元請け・下請けの場合は元請け業者名)
- 工期(開始日・終了日)
2. 収入
工事台帳には、収入として以下の項目を記録します。
- 契約金額(基本契約)
- 追加工事費用
- 前金・中間金の受領状況
- 最終精算金額
3. 費用
費用は、工事に関わるすべてのコストを記載します。
4. 工事進捗
工事の進捗状況を管理するため、以下の情報を記録します。
- 作業工程ごとの進捗率
- 主要な完成日(基礎工事、構造工事、内装工事など)
- 作業員の出勤状況
[3] 工事台帳に記載する費用の詳細
工事台帳は原価管理を行うためのものであり、費用項目は複数あります。工事台帳を正確に管理するために、書き方や記載内容を把握しておきましょう。工事台帳に記入する費用の種類を説明します。
材料費
材料費は、工事に必要な材料にかかる費用です。材料の原価だけではなく、取引にかかった費用も含まれるので注意が必要です。
労務費
労務費は、現場の従業員の賃金を指します。給料だけでなく、手当や交通費も含まれるため、漏れなく記載する必要があります。ポイントは、自社雇用かつ現場での建設作業に従事する従業員の費用のみ集計することです。
外注費
外注費は、業務を外注している下請業者や協力会社に支払う費用です。下請業者や協力会社の従業員や一人親方など、工事を受注した企業が外注した場合に発生します。
経費
経費とは、上記3つの費用に該当しないものを指します。工事に必要な機材、消耗品、工事現場の光熱費、事務員の給料や退職金などが該当します。
[4] 工事台帳の作成方法
工事台帳を作成する際は、エクセルや専用ソフトを活用するの一般的です。それぞれの方法についてメリットと手順を解説します。
1. エクセルを使った工事台帳の作成
エクセルは、コストを抑えて工事台帳を作成するのに適したツールです。
メリット
- 初期費用がかからない
- カスタマイズ性が高い
- 小規模工事でも活用しやすい
基本的なフォーマット例
以下のような表形式で工事台帳を作成します。
項目 | 内容 | 金額 | 備考 |
---|---|---|---|
工事名 | ○○ビル新築工事 | – | – |
収入 | 契約金額 | 10,000,000円 | 前金50%受領済 |
支出 | 材料費 | 3,000,000円 | 資材搬入費含む |
外注費 | 下請け業者Aへの支払い | 2,000,000円 | – |
労務費 | 職人の人件費 | 500,000円 | – |
合計 | 5,500,000円 |
エクセル作成のポイント
- 項目を明確に分類し、収支が一目で分かるようにする。
- 数式を設定し、合計金額を自動計算できるようにする。
- 更新日を記録してデータの正確性を保つ。
工事台帳のおすすめテンプレート
Anymore施工管理では、工事台帳のエクセルテンプレートを無料で提供しています。無料版テンプレートながら、原価項目別の実行予算の管理や、項目別の原価の管理、売上の管理に対応しており、非常に使いやすいテンプレートです。
次に、専用ソフトを活用した工事台帳の作成方法と、管理時の注意点について解説します。
[4] 施工管理アプリを活用した工事台帳の作成
エクセルは便利ですが、専用の施工管理アプリを利用することで、より効率的かつ正確な工事台帳管理が可能です。特に中規模以上のプロジェクトや複数現場を同時に管理する場合、施工管理アプリの導入が推奨されます。
専用ソフトのメリット
- データの一元管理
複数の工事台帳をクラウドで管理でき、リアルタイムでの情報共有が可能です。 - 作業の効率化
収支計算や進捗管理が自動化され、手作業による入力ミスが減少します。 - 法令遵守の強化
法定保存期間の管理や帳簿作成要件を満たすためのテンプレートが標準搭載されています。
専用ソフト導入の流れ
- 業務の課題を洗い出す
現在の台帳管理の問題点(例:情報共有の遅れ、計算ミスの発生)を明確にします。 - ソフトを比較検討する
必要な機能(収支管理、進捗管理など)をリスト化し、複数のソフトを比較します。 - トライアルを実施
無料トライアルを活用して、自社の業務フローに適合するか確認します。 - 導入・運用開始
スタッフへの操作説明を行い、運用を開始します。初期段階ではエクセルとの併用も検討します。
[5] 工事台帳の管理方法
台帳を作成するだけではなく、適切に管理することが成功の鍵です。以下は、効率的な管理方法のポイントです。
1. 定期的な更新を徹底する
工事台帳はリアルタイムで更新することが重要です。特に以下のタイミングでの更新を推奨します。
- 契約変更や追加工事が発生した場合
- 支払い(材料費、外注費など)が完了した場合
- 進捗状況が大きく変化した場合
2. チェックリストを活用する
台帳管理の漏れを防ぐため、チェックリストを活用しましょう。
項目 | 確認内容 |
---|---|
契約金額が正確に記録されているか | 契約変更後の金額が反映されているか確認する。 |
支出が正確に計上されているか | 材料費や外注費が最新データに基づいているか確認。 |
進捗情報が最新であるか | 現場担当者と連携して進捗状況を更新する。 |
3. 定期的なレビューを実施する
月次や四半期ごとに台帳のレビューを行い、収支の確認や計画との差異を分析します。
4. トラブルを未然に防ぐ記録方法
- 透明性の確保
項目ごとに根拠資料(請求書、領収書)を紐付けて記録します。 - デジタル化の推進
紙ベースではなくデジタルデータで管理することで、検索性や共有性を向上させます。
[6] エクセルと専用ソフトの比較
エクセルと専用ソフトにはそれぞれメリットがあります。工事の規模や業務の複雑さに応じて適切な方法を選びましょう。
項目 | エクセル | 専用ソフト |
---|---|---|
コスト | 初期費用が不要 | 導入費用・月額費用が発生する |
操作性 | カスタマイズが自由 | 簡単に操作可能 |
適用規模 | 小規模~中規模工事に最適 | 中規模~大規模工事に最適 |
データ管理 | 手作業での入力が多くミスが起こりやすい | 自動入力やリアルタイム更新が可能 |
[7] まとめ
工事台帳は、工事現場の経営効率や収支透明性を向上させるために必要不可欠なツールです。エクセルや専用ソフトを活用し、正確な記録と効率的な管理を実践することで、プロジェクトの成功率を高めることができます。
本記事を参考に、自社に最適な工事台帳の管理方法を見つけてください。