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どの書類に収入印紙が必要?【工事請負契約書・注文書・発注書】

【建設業】どの書類に収入印紙が必要?【工事請負契約書・注文書・発注書】

建設業では、さまざまな書類が契約や取引の記録として使用されますが、これらの中には「収入印紙」の貼付が必要なものがあります。収入印紙は、印紙税法に基づいて課税される書類に必要な税金を納付するための証票です。本記事では、工事請負契約書、注文書、発注書をはじめ、「請書」「請求書」「見積書」など建設工事で使用される可能性のある書類について、収入印紙の必要性や注意点を網羅的に解説します。

参考記事:【建設業】注文請書とは?注文請書の記載方法や収入印紙について解説。

参考記事:工事請負契約書に必要な印紙税とは?収入印紙の貼付ルールと軽減措置を解説

[1] 収入印紙が必要な書類とは?

印紙税法では、一定の取引に関する文書を「課税文書」として分類しており、収入印紙の貼付が義務付けられています。建設業で使用される主な書類について、収入印紙が必要かどうかを以下にまとめます。


1. 工事請負契約書

収入印紙が必要です。
工事請負契約書は、発注者と受注者が工事内容や条件を明確にするための書類で、印紙税法第2号文書に該当します。なお、租税特別措置法によって、工事請負契約書に記載の金額が100万円を超え、なおかつ、2014年4月1日から2027年3月31日までの間に作成されるものに関して、軽減措置が取られています。

契約金額本則税率軽減税率
金額の記載のないもの200円
1万円未満非課税非課税
100万円以下200円200円
100万円を超え 200万円以下のもの400円200円
200万円を超え 300万円以下のもの1千円500円
300万円を超え 500万円以下のもの2千円1千円
500万円を超え1千万円以下のもの1万円5千円
1千万円を超え 5千万円以下のもの2万円1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え 5億円以下のもの10万円6万円
5億円を超え 10億円以下のもの20万円16万円
10億円を超え 50億円以下のもの40万円32万円
50億円を超えるもの60万円48万円

参考:建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置


2. 注文書・発注書

注文書

注文書が契約内容を明記している場合、収入印紙が必要です。例えば、支払い条件や工事内容が記載され、契約書の役割を果たしている場合は課税文書に該当します。

発注書

発注書は原則収入印紙は不要です。一方、工事請負契約書が締結されておらず、発注書に契約金額や具体的な工事内容を明記している場合で発注書への両者の署名や捺印がされる場合、契約書と同様に扱われるため、工事請負契約書同様の金額の収入印紙が必要です。単なる発注の意思表示にとどまる書類の場合は収入印紙は不要です。

契約金額本則税率軽減税率
金額の記載のないもの200円
1万円未満非課税非課税
100万円以下200円200円
100万円を超え 200万円以下のもの400円200円
200万円を超え 300万円以下のもの1千円500円
300万円を超え 500万円以下のもの2千円1千円
500万円を超え1千万円以下のもの1万円5千円
1千万円を超え 5千万円以下のもの2万円1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え 5億円以下のもの10万円6万円
5億円を超え 10億円以下のもの20万円16万円
10億円を超え 50億円以下のもの40万円32万円
50億円を超えるもの60万円48万円

参考:建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置


3. 注文請書

収入印紙が必要です。
注文請書(うけしょ)は、受注者が発注者からの注文内容を承諾したことを証明する書類です。原則、工事請負契約書と同様に課税文書に該当します。ただし、工事請負契約書が存在しており、注文請書に工事請負契約書と異なる条件の記載がないなど、注文請書が形式的に発行されているような場合には、課税文書には該当しないため、文書が「契約機能を有するか」どうかを個別に検討する必要があります。

契約金額本則税率軽減税率
金額の記載のないもの200円
1万円未満非課税非課税
100万円以下200円200円
100万円を超え 200万円以下のもの400円200円
200万円を超え 300万円以下のもの1千円500円
300万円を超え 500万円以下のもの2千円1千円
500万円を超え1千万円以下のもの1万円5千円
1千万円を超え 5千万円以下のもの2万円1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの6万円3万円
1億円を超え 5億円以下のもの10万円6万円
5億円を超え 10億円以下のもの20万円16万円
10億円を超え 50億円以下のもの40万円32万円
50億円を超えるもの60万円48万円

4. 見積書

通常、収入印紙は不要です。
見積書は、課税文書には該当しません。ただし、見積書が契約書の役割を果たしている場合は例外的に課税対象となります。


5. 請求書

請求書には、原則として収入印紙は不要です。ただし、以下の場合には貼付が必要です。

  • 金銭の受領書としての機能を持つ場合
    請求書に「代金受領済」などの記載があり、領収書としての機能を兼ねている場合は課税対象となります。
金額収入印紙税額
5万円以上~100万円以下200円
100万円以上~500万円以下400円

6. 領収書

収入印紙が必要です。
領収書は印紙税法第17号文書に該当し、課税文書となります。

金額収入印紙税額
5万円以上~100万円以下200円
100万円以上~500万円以下400円

[2] 収入印紙が不要な書類の例

次のような場合、収入印紙は不要です。

  1. 電磁的記録(電子契約書など)
    デジタル形式で作成された契約書や注文書は印紙税の課税対象外です。
  2. 契約金額が記載されていない文書
    契約金額の記載がない契約書や注文書は課税文書に該当しません。

[3] 割り印とその重要性

割り印とは?

割り印は、収入印紙を貼付した書類に印鑑を押すことで、収入印紙の再利用を防ぎ、課税文書としての正当性を示します。

押印のルール

  • 収入印紙の半分に書類内容がかかるよう押印します。
  • 発注者と受注者が双方署名する契約書の場合、それぞれ割り印を行います。

[4] 収入印紙に関するよくある質問

1. 収入印紙は誰が用意する?

収入印紙は、契約書を作成する側が用意するのが一般的です。ただし、具体的な負担については発注者と受注者の間で事前に取り決めることが重要です。


2. 貼付しないとどうなる?

収入印紙を貼付しなかった場合、未納税額に加え、最大3倍の過怠税が課される可能性があります。

[5] まとめ

「請書」「注文書」「発注書」が課税文書に該当するかどうかは、その内容次第です。特に契約金額や条件が明記されている場合、契約書としての役割を果たすため収入印紙が必要となります。一方、単なる確認書や指示書としての書類であれば、印紙税の対象外です。

電子契約の導入を検討することで、印紙税の負担を軽減しつつ、契約業務を効率化することが可能です。本記事を参考に、収入印紙の必要性を正しく判断し、適切に対応してください。

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