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建設業の見積書を書く方法|内訳と利益率を意識した作成ポイント

「見積書の書き方がよくわからない」「内訳はどこまで詳しく書けばいい?」「適正な利益率をどう設定すればいい?」とお悩みの建設業の方は多いのではないでしょうか。

建設業の見積書を書く方法|内訳と利益率を意識した作成ポイント

見積書は工事を受注するための重要な書類です。曖昧な見積書を作成してしまうと、追加費用やトラブルの原因になるだけでなく、適正な利益を確保できず経営を圧迫することにもつながります。

本記事では、建設業の見積書の書き方を徹底解説します。見積書の基本構成から内訳の記載方法、利益率を意識した価格設定のポイントまで、受注につながる見積書作成のノウハウを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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目次

建設業における見積書とは

まず、建設業における見積書の役割と重要性を理解しましょう。

見積書の役割と重要性

建設業における見積書とは、建設工事にかかる費用や詳細を記載した書類のことです。工事の総費用だけでなく、具体的な作業内容やそれぞれの工事費用の内訳も含まれます。

見積書には以下のような重要な役割があります。

  • 契約の基準となる:発注者と施工業者の間での契約や、工事進行の基準となる書類
  • トラブル防止:「言った」「言わない」といった口約束によるトラブルを回避できる
  • 信頼性の向上:材料費や単価を明確に記載することで、発注者からの信頼獲得につながる
  • 説明資料になる:社内外への説明資料として活用できる

建設業法における見積書の規定

建設業法では、見積書について以下のような規定が設けられています。

建設業法第20条では、建設工事の請負契約を締結する際に、工事の種別ごとに内訳を明確にして見積もりをするよう努めることが規定されています。また、建設業法第19条第1項では、契約書(見積書もこれに準ずる)に記載すべき13の事項が定められています。

さらに近年は、「見積もりの透明化」と「労務費の確保」が強く求められるようになり、国土交通省が推奨する標準見積書の活用も広がっています。

見積書の基本構成(3つの要素)

建設業の見積書は、以下の3つの要素で構成されるのが一般的です。

1. 見積書表紙

見積書表紙は、工事見積書の「顔」となる部分です。工事の全体概要と合計費用を端的に示すことが目的です。

見積書表紙には主に以下の情報を記載します。

  • タイトル(「御見積書」など)
  • 見積番号・発行日
  • 宛名(発注者名)
  • 見積金額(合計金額)
  • 工事名・工事場所
  • 工事概要(構造、階数、延床面積など)
  • 工期・有効期限
  • 支払条件
  • 作成会社名・担当者名・連絡先

発注者が最初に目を通す箇所であるため、見やすく整理されたレイアウトにすることがポイントです。

2. 見積内訳書

見積内訳書は、見積金額の詳細を示した書類です。「見積明細」とも呼ばれ、工事の種別ごとに工事費を記載し、資材の名称や数量、単価などを明確に記載します。

見積内訳書があることで、工事の各段階で発生する費用が明確になり、予算管理がスムーズになります。また、発注者も費用の妥当性を確認しやすくなります。

内訳書の詳しい書き方については、後述の「見積書内訳の書き方」で解説します。

3. 見積条件書

見積条件書は、工事の前提となる事項や工事のルールなどを示した書類です。施工範囲や見積範囲、支払条件などを記載します。

見積条件書に記載すべき8つの項目は以下の通りです。

  1. 工事名称
  2. 施工場所
  3. 設計図書
  4. 下請工事の工程、下請工事を含む工事の全体工程
  5. 見積条件、他工種との関係部位、特殊部分に関する事項
  6. 施工環境、施工制約に関する事項
  7. 材料費、産業廃棄物処理などに関する事項
  8. 元請・下請間の費用負担区分に関する事項

工事範囲を明確にすることで、発注者との認識の違いを防ぎ、後のトラブル回避につながります。

見積書に記載すべき項目一覧

見積書に記載すべき項目を一覧で整理しました。

項目記載内容ポイント
タイトル「御見積書」など表紙の一番上に記載
見積番号固有の番号複数回の修正管理に必須
発行日見積書の発行日有効期限の起算日になる
宛名発注者の会社名・担当者名「様」「御中」の使い分けに注意
見積金額合計金額(税込・税抜)改ざん防止に「-」を使用
工事名工事の正式名称官公庁の場合は指定名称を使用
工事場所工事を行う場所住所を明記
工事概要構造・階数・延床面積など改修工事は改修部位も記載
工期着工日・完工予定日具体的な日程を明記
有効期限見積の有効期間通常30~60日が目安
支払条件支払方法・期日着手金・中間金・完成金など
法定福利費社会保険料近年は記載が必須
作成者情報会社名・住所・連絡先・担当者名社印・担当者印を押印

見積有効期限の設定

建設業では材料価格が大きく変動しやすいため、見積有効期限を必ず設定しましょう。有効期限を設定することで、価格変動による損失リスクを防げます。

一般的な有効期限の目安は以下の通りです。

  • 短期工事:2週間~1ヶ月
  • 中規模工事:1~3ヶ月
  • 大規模工事:3~6ヶ月

法定福利費の記載

法定福利費とは、雇用している従業員が加入している社会保険料全般のことです。具体的には以下が含まれます。

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 労災保険料
  • 介護保険料

国土交通省は、社会保険未加入対策として、見積書に法定福利費を内訳明示するよう推奨しています。適正な労務費を確保し、従業員の処遇改善につなげるためにも、必ず記載しましょう。

見積書内訳の書き方

見積書の内訳は、発注者に費用の妥当性を理解してもらうための重要な部分です。ここでは、内訳の構成と書き方を詳しく解説します。

工事原価の4つの構成要素

工事原価は、以下の4つの要素で構成されます。

構成要素内容具体例
材料費工事に使用する資材・材料の費用セメント、鉄筋、木材、ガラス、配管材など
労務費作業員に支払う賃金・手当基本給、賞与、資格手当、危険手当など
外注費下請業者に委託する費用専門工事、塗装、電気工事など
経費上記以外の工事関連費用機械リース代、燃料費、運搬費など

工事費用の構造

工事費用は、以下のような構造で成り立っています。

【工事費用の構造】

工事費用
├── 工事原価
│   ├── 直接工事費(材料費・労務費・直接経費)
│   └── 間接工事費(共通仮設費・現場管理費)
└── 一般管理費(本社経費・利益)

直接工事費:特定の工事に直接かかる費用(材料費・労務費・直接経費)

間接工事費:現場全体の運営にかかる費用(共通仮設費・現場管理費)

一般管理費:本社の維持費や会社としての利益

工種別の内訳項目

見積書内訳に記載する主な工種は以下の通りです。

工種内容項目例
仮設工事工事を進めるための一時的な施設・設備現場事務所、仮設トイレ、足場、養生など
土工事土地の掘削・造成掘削、盛土、残土処分など
躯体工事建物の骨組み形成型枠工事、鉄筋工事、コンクリート工事など
仕上工事内外部の最終仕上げ防水、塗装、タイル、内装、ガラスなど
設備工事電気・ガス・水道・空調の設置電気設備、給排水設備、空調換気設備など
諸経費現場管理費・一般管理費労務管理、保険料、本社経費など

階層を意識した内訳の書き方

建設業の見積書は内訳項目が非常に多岐にわたるため、階層を意識して記載することが重要です。階層分けを行うことで、発注者にとってわかりやすい見積書になります。

【階層分けの例】

1. 仮設工事
   1-1. 直接仮設工事
      ・外部足場 ○○m² @○○円
      ・内部足場 ○○m² @○○円
   1-2. 共通仮設工事
      ・現場事務所 1式 ○○円
      ・仮設トイレ 1式 ○○円

2. 躯体工事
   2-1. 型枠工事
      ・壁型枠 ○○m² @○○円
      ・床型枠 ○○m² @○○円
   2-2. 鉄筋工事
      ・壁配筋 ○○kg @○○円

このように階層分けすることで、「どの部分に何を使用し、いくらかかるのか」が明確になります。

「一式」表記を避ける

見積書では「一式」表記は極力避けましょう。数量や単価を工種ごとに明確に記載することが、建設業法でも求められています。

悪い例良い例
塗装工事一式 500,000円外壁塗装 150m²×@2,500円=375,000円
軒天塗装 30m²×@2,000円=60,000円
付帯部塗装 1式 65,000円

内訳を詳細に記載することで、発注者の信頼獲得につながり、工事後の追加請求トラブルも防止できます。

利益率を意識した見積書作成

見積書作成において、適正な利益率の確保は経営の安定に直結する重要なポイントです。

建設業の利益率の種類

建設業で主にチェックすべき利益率には、以下の5種類があります。

利益率の種類計算式意味
売上高総利益率(粗利益率)売上総利益÷売上高×100工事でどれだけ儲けが出たか
売上高営業利益率営業利益÷売上高×100本業でどれだけ利益が出ているか
売上高経常利益率経常利益÷売上高×100企業活動全体の収益性
自己資本経常利益率(ROE)経常利益÷自己資本×100株主資本に対する収益性
総資本経常利益率(ROA)経常利益÷総資本×100総資産に対する収益性

見積作成時に特に意識すべきは、売上高総利益率(粗利益率)です。

建設業の利益率の目安

建設業の利益率の目安は以下の通りです。

利益率の種類目安備考
粗利益率(売上高総利益率)18~25%業界平均は約25%
営業利益率3~5%業界平均は約4%
経常利益率3~6%業界平均は約3.5%

つまり、粗利益率が25%を超えるかどうか営業利益率が4%を超えるかどうかが、建設業における経営判断の一つの目安になります。

正しい利益率の計算方法

見積書作成時に注意すべきなのが、利益率の計算方法です。多くの方が間違えやすいポイントがあります。

【よくある間違い】

原価100万円に30%の利益を乗せて130万円で見積もった場合、利益率は30%だと思いがちですが、実際は…

粗利30万円(130万円-100万円)÷ 売上130万円 = 粗利率23%

30%ではなく23%しか取れていないのです。

【正しい見積金額の計算式】

見積金額 = 原価の積算 ÷ 原価率

例:粗利率30%を確保したい場合
見積金額 = 100万円 ÷ 0.7 = 約143万円

この計算方法を間違えると、年商1億円の会社であれば数百万円の損失につながる可能性があります。

利益率を確保するためのポイント

適正な利益率を確保するためのポイントは以下の通りです。

  • 原価管理の徹底:材料費や労務費を日々モニタリングし、ロスや無駄を削減する
  • 工程管理の効率化:工期が延びれば人件費や仮設費が増加するため、適切なスケジュール管理を行う
  • リスク対策:追加工事や仕様変更が発生しそうな場合、あらかじめ条件を見積書に盛り込んでおく
  • 付加価値の提案:単純な価格競争に陥らないよう、耐久性やデザイン性など付加価値を提示して、適正価格で受注できる体制を整える
  • 定期的な単価見直し:材料費や人件費は変動するため、社会情勢に合わせて定期的に見直す

過度な低価格受注を避ける

利益率を下げれば受注率は上がるかもしれませんが、過度な低価格受注を続けると以下のリスクがあります。

  • 赤字リスクの増大
  • 工事品質の低下
  • 従業員の待遇悪化
  • 会社の持続可能性への悪影響

コスト削減と付加価値提供のバランスを取り、適正な利益率を確保することが安定した経営につながります。

見積書作成の5つのステップ

見積書作成の5つのステップ

見積書作成の基本的な流れを5つのステップで解説します。

ステップ1:工事内容の把握

設計図や仕様書をよく確認し、工事範囲や材料、仕上げレベルを明確にします。不明点があるまま見積を進めると、後から追加工事が多発しやすくなります。

確認すべき項目:

  • 設計図書の内容
  • 使用材料の仕様
  • 施工範囲の境界
  • 特殊条件や制約事項

ステップ2:協力業者・材料業者との打ち合わせ

自社でカバーできない工種や専門工事は、下請けに依頼するケースが多いです。見積金額を確定するには、下請け業者や材料業者との打ち合わせを十分に行い、正確な価格を反映させましょう。

ステップ3:内訳の作成

直接工事費(材料費・労務費・下請負費など)と諸経費を区分し、内訳を作成します。数量と単価を明確にし、階層を意識して記載しましょう。

ステップ4:利益率の設定

過去の実績や経営目標を踏まえ、利益を確保できる金額を算出します。前述の正しい計算方法で見積金額を算出しましょう。

ステップ5:社内チェック・提出

見積ミスを防ぐためにダブルチェックを行い、発注者へ提出します。

チェックポイント:

  • 計算式に間違いがないか
  • 数量の拾い出しに漏れがないか
  • 単価が最新のものか
  • 必要項目に記載漏れがないか
  • 宛名や日付に誤りがないか

見積書作成時の注意点

見積書を作成する際に注意すべきポイントを解説します。

1. 修正前の見積書を残しておく

見積書を修正する場合は、修正前の見積書を必ず保管しましょう。エクセルなどで上書きしてしまうと、以前提出した内容がわからなくなり、発注者から「前の見積で依頼したい」と言われた際に対応できなくなります。

版数や見積番号を付与し、誰がいつどのように変更を加えたかを記録しておくことで、混乱や誤用を防止できます。

2. 計算式の確認を徹底する

工事見積書は一度提出すると修正が難しいため、提出前に計算式が間違っていないか十分に確認しましょう。見積書に誤りがあると、発注者に連絡を入れて訂正したものを再提出する必要があり、信頼を失う原因となります。

3. 宛名の書き方に注意する

宛名の書き方にも注意が必要です。

  • 株式会社を(株)に省略しない
  • 「様」と「御中」を正しく使い分ける(個人宛は「様」、会社・団体宛は「御中」)
  • 担当者宛ての場合は「様」を使用
  • 誤字脱字がないか確認

4. 具体的な条件を記載する

見積条件書には具体的な条件を記載しましょう。曖昧な条件では、後々の認識違いやトラブルの原因になります。工事範囲に含める項目と含めない項目を明確にすることが重要です。

5. 定期的に単価を見直す

建設業では人件費や材料費が変動しやすいため、社会情勢の変化に合わせて定期的な単価見直しが必要です。古い単価のまま見積を作成すると、利益が圧迫される可能性があります。

見積書作成を効率化する方法

見積書作成を効率化するための方法を紹介します。

エクセルテンプレートの活用

エクセルテンプレートには、あらかじめ関数が組み込まれており、エクセルの知識がなくても直感的に見積書を作成できます。項目の抜け漏れも防げるでしょう。

エクセルテンプレートのメリット:

  • 導入コストが低い
  • 使い慣れた操作感
  • カスタマイズが自由

エクセルテンプレートのデメリット:

  • データ量が多くなると動作が重くなる
  • 関数やマクロが機能しなくなることがある
  • データの一元管理が難しい

見積作成ソフト・アプリの導入

見積作成ソフトを使用することで、作成時間の大幅な短縮につながります。建設業に特化した機能を備えた見積作成ソフトを導入すれば、以下のようなメリットがあります。

  • 階層を分けた見積書作成が簡単
  • 見積から発注まで一元管理できる
  • 自動計算でミスを防止
  • 過去データの管理が容易
  • 複数人での共同作業が可能

受注につながる見積書のポイント

最後に、受注率を高める見積書作成のポイントをまとめます。

1. 発注者目線でわかりやすく作成する

見積書は発注者が理解しやすい形で作成しましょう。建設業の専門用語をできるだけ避け、内訳を階層化して視認性を高めることが重要です。

2. 透明性を確保する

何にいくらかかるのかを明示することで、発注者は費用の妥当性を理解しやすくなります。詳細な内訳や条件を示すことで信頼関係が構築されます。

3. 適正価格で提案する

安すぎる見積は不安を与え、高すぎる見積は敬遠されます。市場相場を把握し、適正な利益率を確保しながらも競争力のある価格を提示しましょう。

4. 付加価値を提案する

価格だけの競争に陥らないよう、耐久性やデザイン性、アフターサービスなどの付加価値を積極的に提案しましょう。

5. 迅速に対応する

見積依頼への迅速な対応は、発注者に好印象を与えます。見積作成ソフトを活用して、スピーディーかつ正確な見積書を提出しましょう。

まとめ

建設業の見積書作成について、基本構成から内訳の書き方、利益率を意識した価格設定まで解説しました。

本記事のポイント:

  • 見積書は「表紙」「内訳書」「条件書」の3つで構成される
  • 内訳は階層を意識し、「一式」表記を避けて詳細に記載する
  • 工事原価は「材料費」「労務費」「外注費」「経費」の4要素で構成される
  • 建設業の粗利益率の目安は18~25%、営業利益率は3~5%
  • 正しい計算式(見積金額=原価÷原価率)で利益率を確保する
  • 法定福利費や有効期限など必須項目を漏れなく記載する

適正な見積書を作成することで、発注者との信頼関係を築き、受注率の向上と安定した経営につなげることができます。見積作成ソフトなどのツールを活用しながら、効率的かつ正確な見積書作成を目指しましょう。

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