「建築工事見積書の書き方がわからない」「見積書の内訳にはどんな項目があるの?」「適正価格を提示するコツを知りたい」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、建築工事見積書の見本と内訳を徹底解説します。直接工事費、共通仮設費、現場管理費など項目別の書き方、適正価格を提示するコツまで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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建築工事見積書とは?
建築工事見積書とは、建築工事にかかる費用の詳細を記載した書類です。工事の総費用だけでなく、具体的な作業内容や費用の内訳まで細かく記載されており、発注者と施工業者の間での契約や工事進行の基準となります。
見積書を作成する目的
- 工事内容の明確化:何にいくらかかるかを明示
- トラブル防止:「言った・言わない」を防ぐ
- 予算管理:施主の予算計画に役立つ
- 信頼構築:透明性の高い見積書で信頼を得る
- 契約の根拠:工事請負契約の基礎資料
建築工事見積書の構成
建築工事見積書は、一般的に3つの構成要素で成り立っています。
①見積書表紙
見積書の冒頭にあり、工事の概要と合計金額が記載されています。
記載項目:
- タイトル(御見積書)
- 見積番号
- 工事名
- 工事場所
- 見積金額(税込合計)
- 宛先(発注者名)
- 作成者(会社名・担当者名)
- 作成日・有効期限
②見積内訳書
表紙の合計金額の内訳が記載されており、工事の詳細がわかります。
記載項目:
- 工種(仮設工事、躯体工事など)
- 項目名
- 数量
- 単位
- 単価
- 金額
- 備考
③見積条件書
見積書の根拠となる条件や前提を明示する書類です。
記載項目:
- 工期
- 施工範囲
- 設計図書名
- 支払条件
- 含む項目・含まない項目
- 施工条件(搬入経路、電源確保など)
工事費の構成と内訳
工事費がどのように構成されているかを理解しましょう。
工事費の構成図
工事価格は以下のように構成されています。
| 大分類 | 中分類 | 説明 |
|---|---|---|
| 純工事費 | 直接工事費 | 実際の工事に直接かかる費用 |
| 共通仮設費 | 現場全体の仮設に関する費用 | |
| 諸経費 | 現場管理費 | 現場の運営・管理にかかる費用 |
| 一般管理費 | 会社の運営にかかる費用 |
直接工事費の内訳
直接工事費は、実際の工事に直接かかる費用です。工事費の約70〜80%を占めます。
| 工種 | 割合目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 仮設工事 | 約7% | 足場、養生、仮囲い、仮設電気など |
| 躯体工事 | 約30% | 基礎、コンクリート、鉄筋、鉄骨など |
| 仕上工事 | 約25% | 外壁、内装、塗装、左官など |
| 設備工事 | 約20% | 電気、給排水、空調、衛生など |
| 外構工事 | 約5% | 駐車場、門扉、植栽など |
共通仮設費の内訳
共通仮設費は、工事全体を進めるために必要な仮設費用です。
- 仮設事務所:現場事務所の設置・撤去費
- 仮設トイレ:仮設トイレのリース費
- 電力・用水:仮設電気・仮設水道費
- 安全対策:安全看板、誘導員など
- 清掃・片付け:現場清掃費
諸経費(現場管理費・一般管理費)の内訳
諸経費は、直接工事には含まれないが工事に必要な費用です。工事費の約10〜20%を占めます。
現場管理費:
- 現場監督の人件費
- 現場事務員の人件費
- 車両費、通信費
- 保険料(工事保険など)
一般管理費:
- 本社経費
- 役員報酬
- 事務員人件費
- 利益
見積書表紙の見本と書き方
見積書表紙の具体的な記入例を紹介します。
見積書表紙の見本
| 御 見 積 書 | |||
| 〇〇様 | 見積番号:2025-0001 | ||
| 下記の通りお見積り申し上げます。 | |||
| 工事名 | 〇〇邸新築工事 | ||
| 工事場所 | 〇〇県〇〇市〇〇町1-2-3 | ||
| 見積金額 | ¥25,000,000-(税込) | ||
| 工期 | 2025年4月1日〜2025年7月31日(約4ヶ月) | ||
| 支払条件 | 契約時30%、着工時30%、完成時40% | ||
| 有効期限 | 2025年3月31日まで | ||
| 2025年3月1日 | |||
| 株式会社〇〇工務店 | |||
| 〒000-0000 〇〇県〇〇市〇〇町0-0-0 | |||
| TEL:000-000-0000 | |||
| 担当:〇〇 | |||
表紙の各項目の書き方
| 項目 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 見積番号 | 管理しやすい番号を付与(年度-連番など) |
| 工事名 | 正式名称を記載(〇〇邸新築工事など) |
| 見積金額 | 税込金額を大きく記載、消費税額も明記 |
| 有効期限 | 一般的に2週間〜3ヶ月(資材価格変動を考慮) |
| 支払条件 | 着工前・中間・完成時の支払割合を明記 |
見積内訳書の見本と書き方
見積内訳書の具体的な記入例を紹介します。
見積内訳書の見本(住宅新築工事)
| No. | 工種 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 仮設工事 | 1,500,000 | |
| 2 | 基礎工事 | 2,800,000 | |
| 3 | 木工事 | 4,500,000 | |
| 4 | 屋根工事 | 1,200,000 | |
| 5 | 外壁工事 | 2,000,000 | |
| 6 | 建具工事 | 1,800,000 | |
| 7 | 内装工事 | 2,500,000 | |
| 8 | 電気設備工事 | 1,500,000 | |
| 9 | 給排水衛生設備工事 | 2,000,000 | |
| 10 | 外構工事 | 800,000 | |
| 直接工事費 計 | 20,600,000 | ||
| 11 | 共通仮設費 | 600,000 | |
| 12 | 現場管理費 | 800,000 | |
| 13 | 一般管理費 | 500,000 | |
| 工事価格 計 | 22,500,000 | ||
| 14 | 法定福利費 | 227,273 | |
| 小計 | 22,727,273 | ||
| 消費税(10%) | 2,272,727 | ||
| 合計 | 25,000,000 |
工種別の詳細内訳例(基礎工事)
| 項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 遣り方 | 1 | 式 | 50,000 | 50,000 |
| 根切り | 45 | m³ | 3,000 | 135,000 |
| 砕石敷き | 30 | m² | 2,500 | 75,000 |
| 捨てコンクリート | 30 | m² | 4,000 | 120,000 |
| 防湿シート | 30 | m² | 500 | 15,000 |
| 配筋工事 | 1.5 | t | 180,000 | 270,000 |
| 型枠工事 | 80 | m² | 5,000 | 400,000 |
| コンクリート打設 | 25 | m³ | 25,000 | 625,000 |
| アンカーボルト | 40 | 本 | 1,500 | 60,000 |
| 基礎断熱 | 50 | m² | 3,000 | 150,000 |
| 土間コンクリート | 30 | m² | 6,000 | 180,000 |
| 残土処分 | 40 | m³ | 7,000 | 280,000 |
| 玄関ポーチ | 1 | 式 | 150,000 | 150,000 |
| 雑工事 | 1 | 式 | 90,000 | 90,000 |
| 基礎工事 計 | 2,600,000 |
内訳書の書き方のポイント
悪い例と良い例:
| 悪い例 | 良い例 |
|---|---|
| 基礎工事 一式 2,800,000円 | 根切り 45m³ × 3,000円 = 135,000円 |
| 電気工事 一式 1,500,000円 | 配線工事 120m × 1,200円 = 144,000円 |
「一式」表記は避け、材料ごとに数量・単価・金額を明記することで、見積書の信頼性が向上します。
法定福利費の記載
見積書には法定福利費を記載することが求められています。
法定福利費とは
法定福利費とは、従業員の社会保険料の事業主負担分です。
- 雇用保険
- 健康保険
- 介護保険
- 厚生年金保険
法定福利費の計算方法
法定福利費は、労務費(人件費)に保険料率を掛けて算出します。
計算例:
- 労務費:500万円
- 法定福利費率:約16%
- 法定福利費:500万円 × 16% = 80万円
適正価格を提示するコツ
施主に納得してもらえる適正価格を提示するためのコツを紹介します。
コツ①:内訳を階層的に整理する
工事内容を大分類→中分類→小分類に整理して記載しましょう。
例:建築工事 → 木工事 → 構造材、造作材、金物など
階層的に整理することで、どの部分にどの費用がかかっているかが一目でわかり、信頼性が高まります。
コツ②:「一式」表記を避ける
「〇〇工事 一式」ではなく、材料ごとに数量・単価・金額を明記しましょう。
内訳を明確に記載することで、施主との認識のズレやトラブルを防げます。
コツ③:業界相場を併記する
可能であれば、業界の相場も併せて説明することで、施主に納得してもらいやすくなります。
例:「坪単価は約60万円が相場です。本見積りは58万円/坪となっております。」
コツ④:含む項目・含まない項目を明確に
見積書に何が含まれ、何が含まれないかを明確に記載しましょう。
含む項目の例:
- 建物本体工事
- 付帯設備工事(給排水、電気)
- 仮設工事
含まない項目の例:
- 地盤改良工事(別途調査結果による)
- 外構工事(別途見積り)
- エアコン工事
- カーテン・照明器具
コツ⑤:有効期限を明記する
資材価格は変動しやすいため、見積有効期限を明確に記載しましょう。一般的に2週間〜3ヶ月で設定します。
コツ⑥:見やすいレイアウトにする
見積書は視認性が重要です。
- 金額は右揃えで統一
- 合計金額は太字で目立たせる
- 工種ごとに小計を入れる
- 罫線を使って区切る
見積書作成時の注意点
見積書を作成する際に注意すべきポイントを解説します。
注意点①:計算ミスを防ぐ
見積書は一度提出すると修正が難しいため、計算式に誤りがないか十分にチェックしましょう。
- 数量 × 単価 = 金額 が正しいか
- 小計・合計の集計が正しいか
- 消費税の計算が正しいか
注意点②:会社名・担当者名を正確に
宛先の会社名は省略せずに正式名称で記載しましょう。
- 悪い例:(株)〇〇
- 良い例:株式会社〇〇
注意点③:見積番号で管理する
複数回の修正が必要になることも多いため、見積番号を付与して管理しましょう。
例:2025-0001-01(年度-案件番号-版番号)
注意点④:作成者と担当者を一致させる
可能であれば、お客様対応をしている営業担当者が見積書の作成者として名前を記載しましょう。施主は安心感を得られます。
見積書作成を効率化する方法
見積書作成を効率化するための方法を紹介します。
①エクセルテンプレートを活用
エクセルのテンプレートを活用することで、関数で自動計算され、入力ミスを防げます。
②過去の見積書を再利用
類似工事の過去見積書をベースに、数量や単価を調整することで作成時間を短縮できます。
③見積作成ソフト・システムを導入
見積作成に特化したソフトを使えば、項目の抜け漏れ防止、自動計算、見やすいレイアウトが実現できます。
まとめ
建築工事見積書は、「表紙」「内訳書」「条件書」の3つで構成されます。内訳を明確に記載することで、施主との信頼関係を築き、トラブルを防止できます。
本記事のポイント:
- 工事費は「直接工事費」「共通仮設費」「諸経費」で構成
- 「一式」表記は避け、数量・単価・金額を明記する
- 内訳を階層的に整理して見やすくする
- 含む項目・含まない項目を明確に記載
- 法定福利費の記載を忘れずに
- 有効期限を明記して資材価格変動に対応
見積書の質は、そのまま建築会社の信頼性につながります。透明性の高い見積書で、施主の信頼を獲得しましょう。
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