「工事見積書の諸経費って何を指すの？」「諸経費は何パーセントが適正？」「お客様に諸経費をどう説明すればいい？」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、工事見積書の諸経費の書き方を徹底解説します。諸経費の内訳、相場（何％が適正か）、計算方法、お客様に説明しやすい記載方法まで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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工事見積書の諸経費とは？
諸経費とは、工事に直接関係する費用ではないが、工事を完了させるために必要な間接的な費用のことです。材料費や労務費などの直接工事費とは別に、現場運営や会社運営にかかる費用が諸経費に含まれます。
諸経費の位置づけ
工事費全体の構成における諸経費の位置づけは以下の通りです。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 直接工事費 | 材料費、労務費、外注費など（工事に直接かかる費用） |
| 共通仮設費 | 仮設事務所、仮設トイレなど（現場全体の仮設費用） |
| 諸経費 | 現場経費 + 一般管理費（間接的な費用） |
つまり、見積金額 = 直接工事費 + 共通仮設費 + 諸経費 + 消費税 という構成になります。
「諸経費」と「諸費用」の違い
似た言葉ですが、意味が異なるので注意しましょう。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 諸経費 | 工事を進行・完了させるために必要な費用 | 現場管理費、保険料、通信費など |
| 諸費用 | 土地や建物の購入以外にかかる費用 | 登記費用、住宅ローン手数料、火災保険料など |
諸経費の内訳
諸経費は、大きく「現場経費」と「一般管理費」の2つに分けられます。
①現場経費（現場管理費）
現場経費とは、工事現場を運営するために必要な費用です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 労務管理費 | 現場監督・現場作業員の人件費 |
| 法定福利費 | 社会保険料の事業主負担分 |
| 保険料 | 工事保険、賠償責任保険など |
| 通信交通費 | 現場への移動費、通信費 |
| 車両費 | 現場で使用する車両の維持費 |
| 事務用品費 | 現場で使用する事務用品 |
| 福利厚生費 | 現場作業員の福利厚生 |
| 安全対策費 | 安全看板、保護具など |
| 近隣対策費 | 近隣への挨拶、騒音対策など |
②一般管理費
一般管理費とは、会社を運営するために必要な費用のうち、工事が負担する分です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本社管理費 | 本社の運営にかかる費用 |
| 事務員人件費 | 経理、総務などの事務員給与 |
| 役員報酬 | 役員の報酬 |
| 地代家賃 | 事務所の賃料 |
| 水道光熱費 | 事務所の電気代、水道代など |
| 通信費 | 電話代、インターネット代 |
| 広告宣伝費 | 広告、ホームページ運営費など |
| 接待交際費 | 取引先との接待費 |
| 減価償却費 | 設備・機器の減価償却 |
| 利益 | 会社の利益 |
諸経費の相場は何パーセント？
諸経費の適正な割合について解説します。
一般的な相場
諸経費の相場は、工事費全体の5〜20%と幅があります。一般的には5〜10%が目安とされています。
| 工事金額 | 諸経費（5%） | 諸経費（10%） | 諸経費（20%） |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 25万円 | 50万円 | 100万円 |
| 1,000万円 | 50万円 | 100万円 | 200万円 |
| 2,000万円 | 100万円 | 200万円 | 400万円 |
| 3,000万円 | 150万円 | 300万円 | 600万円 |
諸経費率が変動する要因
諸経費の割合は、さまざまな要因によって変動します。
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| 工事規模 | 大規模工事→スケールメリットで諸経費率↓ 小規模工事→固定費の割合が高く諸経費率↑ |
| 会社規模 | 大きな会社→人件費・管理費が高く諸経費率↑ 小さな会社→諸経費率↓の傾向 |
| 工期 | 極端に短い・長い→人件費が増加し諸経費率↑ |
| 現場の立地 | 都心部→駐車場代・交通費が高く諸経費率↑ 地方→諸経費率↓の傾向 |
| 工事の難易度 | 特殊な工事・複雑な工事→諸経費率↑ |
諸経費が高いと悪い会社？
諸経費が高いからといって、悪い会社とは限りません。諸経費には安全管理費や保険料など、工事を安全に進めるために必要な費用が含まれています。
むしろ、諸経費を極端に抑えている会社は、安全対策が不十分だったり、サービスの質が低い可能性もあります。諸経費だけでなく、工事費全体のバランスを見て判断することが大切です。
諸経費の計算方法
諸経費を計算する方法は主に2つあります。
方法①：諸経費率を掛ける方法
直接工事費に一定の諸経費率を掛けて算出する簡便な方法です。
計算式：
諸経費 = 直接工事費 × 諸経費率
計算例：
- 直接工事費：500万円
- 諸経費率：10%
- 諸経費：500万円 × 10% = 50万円
メリット：計算が簡単、手間がかからない
デメリット：工事内容によっては過大・過小になる可能性がある
方法②：内訳を積み上げる方法
諸経費の各項目を個別に算出して積み上げる方法です。
計算例：
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 労務管理費 | 150,000円 |
| 法定福利費 | 80,000円 |
| 保険料 | 50,000円 |
| 通信交通費 | 30,000円 |
| 車両費 | 40,000円 |
| 本社管理費 | 100,000円 |
| 事務所経費 | 50,000円 |
| 諸経費 合計 | 500,000円 |
メリット：正確な算出が可能、内訳を説明しやすい
デメリット：手間がかかる
諸経費の見積書への書き方
諸経費の見積書への記載方法は、統一されたルールがありません。一般的に2つの方法があります。
書き方①：内訳を記載する方法
諸経費の内訳を項目ごとに記載する方法です。
記載例：
| No. | 項目 | 摘要 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 【諸経費】 | |||
| 1 | 労務管理費 | 現場監督人件費 | 150,000 |
| 2 | 法定福利費 | 社会保険料事業主負担 | 80,000 |
| 3 | 保険料 | 工事保険、賠償責任保険 | 50,000 |
| 4 | 通信交通費 | 現場移動費、通信費 | 30,000 |
| 5 | 車両費 | 現場車両維持費 | 40,000 |
| 6 | 本社管理費 | 会社運営費の按分 | 100,000 |
| 7 | 事務所経費 | 事務所維持費の按分 | 50,000 |
| 諸経費 計 | 500,000 | ||
メリット：
- 透明性が高く、お客様が納得しやすい
- 何にいくらかかるかが明確
- 信頼関係を築きやすい
デメリット：
- 作成に手間がかかる
- 項目を細かくしすぎると見積書が煩雑になる
書き方②：一式で記載する方法
諸経費の総額のみを記載する方法です。
記載例：
| No. | 項目 | 数量 | 単位 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 10 | 諸経費 | 1 | 式 | 500,000 |
メリット：
- 見積書がシンプルになる
- 作成が簡単
デメリット：
- 内容が不透明でお客様が不安を感じやすい
- 「何に使われるの？」と質問される可能性
※実際の建設業界では、「一式」で記載するケースが多いのが実情です。ただし、お客様から質問された際には、内訳を説明できるようにしておくことが重要です。
諸経費の見積書記載例（全体）
諸経費を含めた見積書全体の記載例を紹介します。
記載例：住宅リフォーム工事（500万円）
| 工種 | 金額 |
|---|---|
| 仮設工事 | 150,000 |
| 解体工事 | 300,000 |
| 木工事 | 1,200,000 |
| 内装工事 | 800,000 |
| 電気設備工事 | 400,000 |
| 給排水設備工事 | 500,000 |
| 外壁工事 | 600,000 |
| 直接工事費 計 | 3,950,000 |
| 共通仮設費 | 150,000 |
| 諸経費 | 400,000 |
| 工事価格 計 | 4,500,000 |
| 消費税（10%） | 450,000 |
| 合計 | 4,950,000 |
※この例では諸経費率は約10%（400,000円 ÷ 3,950,000円 ≒ 10.1%）となっています。
お客様への諸経費の説明のコツ
お客様に諸経費を納得してもらうための説明のコツを紹介します。
コツ①：内訳と割合を丁寧に説明する
見積書に内訳を記載しない場合でも、お客様から質問された際には丁寧に説明できるようにしておきましょう。
説明例：
「諸経費の内訳は、現場監督の人件費、保険料、交通費、会社の管理費などが含まれています。工事費全体の約10%で、一般的な相場の範囲内です。」
コツ②：諸経費の必要性を伝える
諸経費は安全に工事を進めるために必要な費用であることを説明しましょう。
説明例：
「諸経費には、万が一の事故に備えた保険料や、現場を安全に管理するための費用が含まれています。これらは工事を安全に、品質高く完成させるために欠かせない費用です。」
コツ③：相場との比較を示す
自社の諸経費率が業界の相場の範囲内であることを説明しましょう。
説明例：
「諸経費の相場は一般的に5〜10%程度です。本見積りは約8%となっており、相場の範囲内でございます。」
コツ④：諸経費率が高い理由を説明する
諸経費率が高めの場合は、その理由を具体的に説明しましょう。
説明できる理由の例：
- 小規模工事のため、固定費の割合が相対的に高くなる
- 都心部のため、駐車場代や交通費が高い
- 工期が短く、集中的な管理が必要
- 特殊な工事で、専門的な管理が必要
コツ⑤：値引き要求への対応
「諸経費を削減できないか」と言われた場合の対応です。
説明例：
「諸経費には保険料や安全対策費など、工事を安全に進めるために必要な費用が含まれています。これらを削減すると、万が一の際にお客様にもご迷惑をおかけする可能性がございます。ご理解いただけますと幸いです。」
諸経費を記載する際の注意点
諸経費を見積書に記載する際の注意点を解説します。
注意点①：諸経費と利益を混同しない
諸経費と会社の利益は別物です。利益は一般管理費に含まれることもありますが、諸経費＝利益ではありません。
注意点②：質問に答えられるようにしておく
「一式」で記載した場合でも、内訳を把握しておき、質問に明確に答えられるようにしておきましょう。
注意点③：適正な諸経費率を設定する
諸経費率が極端に高い、または低い場合は、お客様の不信感につながります。相場を参考に適正な諸経費率を設定しましょう。
注意点④：内訳を細かくしすぎない
内訳を記載する場合でも、あまりに細かくしすぎると見積書が煩雑になります。適度にまとめながら、わかりやすい項目名を使用しましょう。
まとめ
工事見積書の諸経費は、工事を安全に完了させるために必要な間接費用です。現場経費と一般管理費に分けられ、相場は工事費全体の5〜10%程度が目安です。
本記事のポイント：
- 諸経費は「現場経費」と「一般管理費」の2つに分類
- 諸経費の相場は工事費全体の5〜20%（一般的には5〜10%）
- 計算方法は「諸経費率を掛ける方法」と「内訳を積み上げる方法」の2つ
- 見積書への記載は「内訳記載」と「一式記載」の2パターン
- お客様には内訳と相場、必要性を丁寧に説明することが大切
諸経費を適切に記載し、お客様に納得してもらえる見積書を作成しましょう。
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