「建設業法19条って何?」「契約書に何を書けばいい?」「見積期間のルールがわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、建設業法19条について徹底解説します。契約書面の記載事項、見積期間のルール、下請法との関係、違反した場合の罰則、適正な見積作成と契約のポイントまで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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建設業法19条とは?
建設業法19条は、建設工事の請負契約における契約書面の作成・交付義務を定めた条文です。
参考:国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(第4版)」
建設業法19条の概要
建設業法19条では、建設工事の請負契約を締結する際に、以下のことが義務付けられています。
- 契約内容を書面に記載すること
- 署名または記名押印をすること
- 相互に交付すること(両者が原本を保有)
民法では口頭での契約も有効ですが、建設業法では書面による契約が必須です。
建設業法19条の目的
- 請負契約の明確性・正確性を担保する
- 紛争の発生を防止する
- 請負契約の「片務性」を改善する(対等な立場での契約)
契約書作成が必要な工事
契約書の作成義務は、以下のすべての工事に適用されます。
- 建設業許可の有無に関わらず
- 元請け・下請けに関わらず
- 工事の種類・規模に関わらず
- 請負金額の大小に関わらず
契約書面の記載事項(16項目)
建設業法19条1項では、契約書面に記載しなければならない16項目が定められています。
必須記載事項16項目
| 記載事項 | 内容 |
|---|---|
| 工事内容 | 工事の名称、場所、種類、範囲など |
| 請負代金の額 | 契約金額(税込・税抜を明記) |
| 工事着手の時期 | 工事を開始する日 |
| 工事完成の時期 | 工事を完了する日 |
| 工事を施工しない日・時間帯 | 施工しない日や時間帯の定め(令和6年12月追加) |
| 前払金・出来高払いの定め | 前払金や出来高払いの時期・方法(定める場合) |
| 設計変更等の場合の対応 | 工期・請負代金の変更、損害負担の定め |
| 天災等の場合の対応 | 不可抗力による工期変更・損害負担の定め |
| 価格変動の場合の対応 | 価格変動に基づく請負代金・工事内容の変更 |
| 第三者損害の負担 | 第三者に損害を与えた場合の賠償金負担 |
| 材料費等の負担 | 注文者が材料等を提供する場合の内容・方法 |
| 検査の時期・方法 | 工事完了後の検査と引渡しの時期 |
| 引渡し時期 | 工事目的物の引渡しの時期 |
| 請負代金の支払時期・方法 | 代金支払いの時期と方法 |
| 契約不適合責任 | 契約不適合の場合の履行追完請求等の定め(定める場合) |
| 紛争解決方法 | 契約に関する紛争の解決方法(定める場合) |
※令和6年12月13日施行の改正により、「工事を施工しない日・時間帯」が追加されました。
特に重要な記載事項
トラブルを防ぐために、特に以下の項目は詳細に記載しておきましょう。
- 工事内容:具体的な施工範囲、仕様を明記
- 工期:着手日・完成日を明確に
- 設計変更の対応:追加工事・変更時の手続きを明記
- 支払条件:支払時期・方法を具体的に
見積期間のルール(建設業法20条)

見積期間については、建設業法20条に定められています。元請負人は、下請負人に対して十分な見積期間を設けることが義務付けられています。
見積期間の最低日数
| 下請工事の予定金額 | 見積期間 |
|---|---|
| 500万円未満 | 中1日以上 |
| 500万円以上5,000万円未満 | 中10日以上 |
| 5,000万円以上 | 中15日以上 |
「中○日」の数え方
「中○日」とは、契約内容を提示した日と契約締結日を除いて期間を設けることを意味します。
計算例:
- 12月1日に契約内容を提示した場合
- 500万円未満の工事(中1日以上)→ 12月3日以降に契約締結
- 500万円以上5,000万円未満の工事(中10日以上)→ 12月12日以降に契約締結
- 5,000万円以上の工事(中15日以上)→ 12月17日以降に契約締結
見積期間に関する違反事例
違反となるおそれがある行為:
- 不明確な工事内容の提示により見積りを行わせた場合
- 「できるだけ早く」等、曖昧な見積期間を設定した場合
- 見積期間を設定せずに見積りを行わせた場合
- 工事内容の質問に対して未回答・曖昧な回答をした場合
違反となる行為:
- 予定価格700万円の工事で、見積期間を3日とした場合(中10日以上必要)
- 予定価格1億円の工事で、見積期間を1週間とした場合(中15日以上必要)
建設業法19条の関連条文
建設業法19条には、関連する重要な条文があります。
建設業法18条(請負契約の原則)
建設工事の請負契約の当事者は、「対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない」と定められています。
建設業法19条の3(不当に低い請負代金の禁止)
元請負人が取引上の優越的地位を利用して、通常必要とされる原価を下回る金額で下請契約を締結することを禁止しています。
違反事例:
- 元請負人の予算不足を理由に、下請負人に原価を下回る金額で契約を強制
- 一方的な指値発注による不当な値引き
建設業法19条の5(著しく短い工期の禁止)
通常の工期を著しく下回る工期による請負契約を締結することを禁止しています。
下請法との関係
建設業法と下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、どちらも下請業者を保護するための法律ですが、適用される場面が異なります。
建設業法と下請法の違い
| 項目 | 建設業法 | 下請法 |
|---|---|---|
| 対象 | 建設工事の請負契約 | 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託 |
| 適用 | 建設工事に適用 | 建設工事には適用されない |
| 規制内容 | 契約書面の作成、見積期間、不当な取引の禁止など | 書面の交付、支払遅延の禁止、不当な値引きの禁止など |
重要ポイント:
建設工事の下請取引には下請法は適用されません。代わりに建設業法が適用されます。ただし、建設業法にも下請法と同様の保護規定(見積期間、不当に低い請負代金の禁止など)が設けられています。
契約書面の交付方法
契約書面の交付方法には、以下の3つがあります。
方法①:契約書を相互に交付
16項目すべてが記載された契約書を2通作成し、双方が署名または記名押印をして相互に交付する方法です。
方法②:基本契約書+注文書・請書
あらかじめ基本契約書を取り交わした上で、具体の取引については注文書と請書の交換を行う方法です。
方法③:注文書・請書のみの交換
注文書と請書のみの交換による方法です。16項目が注文書・請書に記載されている必要があります。
電子契約も可能
平成13年の法改正により、国土交通省が定める技術的基準を満たすシステムによる電子契約も認められています。
注意:契約書をFAXやメールでやり取りすることは認められていません。
違反した場合の罰則・処分
建設業法19条に違反した場合、以下の罰則・処分を受ける可能性があります。
行政処分
| 処分 | 内容 |
|---|---|
| 指示処分 | 違反行為の是正を指示 |
| 営業停止処分 | 一定期間の営業停止(指示処分に従わない場合など) |
| 許可取消処分 | 建設業許可の取消し(特に重大な違反の場合) |
その他のリスク
- 社会的信用の失墜:違反が公表されると信用を失う
- 紛争の発生:契約書がないとトラブル発生時に不利になる
- 公共工事の入札参加資格喪失:指名停止処分を受ける可能性
適正な見積作成と契約のポイント
建設業法を遵守し、適正な見積作成と契約を行うためのポイントを解説します。
ポイント①:工事内容を具体的に提示する
見積依頼時に、以下の内容を具体的に提示しましょう。
- 工事の具体的な内容・範囲
- 工事の着手・完成時期
- 施工条件(現場の状況、制約など)
- 材料費・労務費・法定福利費等の費用負担区分
ポイント②:十分な見積期間を設ける
法定の見積期間を遵守し、下請業者が十分に検討できる期間を確保しましょう。
ポイント③:着工前に契約書面を交付する
契約書面の交付は、原則として工事の着工前に行わなければなりません。災害時等のやむを得ない場合を除き、着工後の契約は避けましょう。
ポイント④:16項目を漏れなく記載する
契約書には、建設業法で定められた16項目を漏れなく記載しましょう。
ポイント⑤:変更契約も書面で行う
工事内容や請負代金に変更が生じた場合は、変更契約も書面で行う必要があります。口頭での変更は認められません。
ポイント⑥:質問には誠実に回答する
下請業者から見積条件に関する質問があった場合は、誠実に回答しましょう。未回答や曖昧な回答は違反となるおそれがあります。
まとめ
建設業法19条は、建設工事の請負契約における契約書面の作成・交付義務を定めた重要な条文です。契約書面には16項目の記載が必要であり、見積期間についても法定の日数を設けなければなりません。
本記事のポイント:
- 建設業法19条は契約書面の作成・相互交付を義務付け
- 契約書面には16項目の記載が必要
- 見積期間は工事金額に応じて中1日〜中15日以上
- 建設工事には下請法ではなく建設業法が適用
- 違反すると指示処分・営業停止・許可取消しのリスク
- 着工前に契約書面を交付することが原則
建設業法を遵守し、適正な見積作成と契約を行いましょう。
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