「建設業の請求書はどう書けばいい?」「人工費の計算方法がわからない」「インボイス制度にどう対応すればいい?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、建設業の請求書の書き方を徹底解説します。人工費の計算・記載方法、インボイス制度への対応、必要な記載項目、一人親方の請求書の書き方まで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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建設業の請求書の特徴
建設業の請求書には、他の業種とは異なる特徴があります。
建設業特有の請求書の特徴
- 人工費(人工代)という建設業特有の項目がある
- 工期が長いため、出来高に応じて分割請求することが多い
- 着手金・中間金・最終金と複数回に分けて請求する
- 材料費・人工費・諸経費など内訳が細かい
請求書に決まったフォーマットはない
建設業の請求書に法的に定められたフォーマットはありません。ただし、ビジネスマナーやインボイス制度への対応の観点から、記載すべき項目があります。
建設業の請求書に必要な記載項目
建設業の請求書に記載すべき項目を解説します。
基本的な記載項目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 請求書番号 | 請求書を管理するための番号(任意) |
| 発行日 | 請求書を発行した日付(締め日) |
| 宛先(請求先) | 取引先の会社名、担当者名など |
| 発行者情報 | 自社の会社名、住所、電話番号など |
| 工事名・件名 | 対象となる工事の名称 |
| 品目・内容 | 作業内容、材料名など |
| 数量 | 人工数、材料の数量など |
| 単価 | 1人工あたりの単価、材料単価など |
| 金額 | 数量×単価の金額 |
| 小計 | 税抜金額の合計 |
| 消費税額 | 消費税の金額 |
| 合計金額 | 税込の請求金額 |
| 支払期日 | 支払いの期限 |
| 振込先 | 銀行名、支店名、口座番号など |
インボイス制度対応の追加項目
インボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応するため、以下の項目も記載が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録番号 | 適格請求書発行事業者の登録番号(T+13桁の数字) |
| 適用税率 | 税率ごとに区分(10%、8%) |
| 税率ごとの消費税額 | 10%対象〇〇円、8%対象〇〇円と区分して記載 |
人工費(人工代)とは?
人工費(人工代)とは、作業員1人が1日(8時間)働いた際に発生する人件費のことです。建設業特有の概念で、請求書や見積書で使用されます。
人工(にんく)の単位
- 1人工 = 1人の作業員が1日(8時間)でこなせる作業量
- 0.5人工 = 半日(4時間)の作業量
- 0.25人工 = 2時間の作業量
人工費の相場
人工費の相場は、国土交通省が発表する「公共工事設計労務単価」を参考にできます。
令和6年3月適用の公共工事設計労務単価(主要職種):
参考:国土交通省「令和7年度 公共工事設計労務単価」
| 職種 | 全国平均単価 |
|---|---|
| 普通作業員 | 約21,800円 |
| 大工 | 約27,700円 |
| 鉄筋工 | 約28,400円 |
| 電工 | 約26,000円 |
| 塗装工 | 約28,500円 |
※実際の人工費は地域や経験年数、繁忙期・閑散期などにより変動します。
人工費の計算方法
人工費の計算方法を解説します。
人工の計算式
人工 = (1人 × 作業時間)÷ 8時間
計算例:
- 網戸取り付け作業(1回2時間)を4部屋分実施
- 1回あたりの人工:(1人 × 2時間)÷ 8時間 = 0.25人工
- 4回行う場合:0.25人工 × 4回 = 1人工
人工費の計算式
人工費 = 人工単価 × 人数 × 労働日数
計算例①:基本パターン
- 人工単価:30,000円
- 作業員:2人
- 労働日数:3日
- 人工費 = 30,000円 × 2人 × 3日 = 180,000円(6人工)
計算例②:半日作業
- 人工単価:30,000円
- 作業員:1人
- 作業時間:半日(0.5人工)
- 人工費 = 30,000円 × 0.5人工 = 15,000円
人工費の請求書への記載方法
人工費を請求書に記載する方法を解説します。
人工費の記載例①:シンプルな記載
| 品目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 内装塗装作業 | 6 | 人工 | 30,000円 | 180,000円 |
人工費の記載例②:詳細な記載
| 品目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|---|
| 内装塗装作業 | 6 | 人工 | 30,000円 | 180,000円 | 2人×3日 |
人工費の記載例③:複数職種の場合
| 品目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 大工工事 | 10 | 人工 | 28,000円 | 280,000円 |
| 電気工事 | 3 | 人工 | 30,000円 | 90,000円 |
| 普通作業員 | 5 | 人工 | 20,000円 | 100,000円 |
| 人工費 小計 | 470,000円 | |||
人工費と材料費を分けて記載
| 品目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 【材料費】 | ||||
| 塗料(水性ペイント) | 10 | 缶 | 5,000円 | 50,000円 |
| 養生シート | 5 | 巻 | 2,000円 | 10,000円 |
| 材料費 小計 | 60,000円 | |||
| 【人工費】 | ||||
| 塗装工 | 6 | 人工 | 30,000円 | 180,000円 |
| 人工費 小計 | 180,000円 | |||
| 合計(税抜) | 240,000円 | |||
インボイス制度への対応
2023年10月1日から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応方法を解説します。
インボイス制度とは?
インボイス制度とは、適格請求書を発行・保存することで仕入税額控除を受けられる制度です。適格請求書発行事業者として登録した事業者のみが適格請求書を発行できます。
適格請求書(インボイス)の記載事項
適格請求書には、以下の6つの項目を記載する必要があります。
| 記載事項 | 内容 |
|---|---|
| 発行事業者の氏名・名称・登録番号 | T+13桁の登録番号を記載 |
| 取引年月日 | 取引を行った日付 |
| 取引内容 | 工事内容、材料名など(軽減税率対象はその旨を記載) |
| 税率ごとに区分した合計金額・適用税率 | 10%対象〇〇円、8%対象〇〇円と区分 |
| 税率ごとの消費税額 | 10%対象の消費税〇〇円、8%対象の消費税〇〇円 |
| 買い手事業者の氏名・名称 | 請求先の会社名など |
登録番号の記載位置
登録番号の記載位置に決まりはありませんが、以下の例が多くみられます。
- 発行事業者名の直下に記載
- 請求書右上に発行日と並べて記載
建設業のインボイス対応の注意点
注意点①:軽減税率(8%)の欄も記載する
建設業では通常、軽減税率(8%)の対象となる取引はありませんが、請求書には8%の欄も用意し、該当がなければ「0円」と記載します。
注意点②:取引先が適格請求書発行事業者か確認する
下請業者や一人親方が適格請求書発行事業者でない場合、仕入税額控除が受けられなくなります。取引先の登録状況を確認しましょう。
注意点③:適格請求書は7年間保存が必要
発行した適格請求書の写しは、交付した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存する義務があります。
インボイス対応の請求書の記載例
インボイス制度に対応した建設業の請求書の記載例を紹介します。
記載例:人工費の請求書
| 請 求 書 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 請求書番号:2025-001 | 発行日:2025年11月30日 | |||
| 〇〇建設株式会社 御中 | ||||
| 下記の通りご請求申し上げます。 | ||||
| ご請求金額 | ¥264,000- | |||
| 【工事名】△△邸 内装塗装工事 | ||||
| 品目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 塗装工 | 6 | 人工 | 30,000円 | 180,000円 |
| 材料費(塗料一式) | 1 | 式 | 60,000円 | 60,000円 |
| 10%対象 小計 | 240,000円 | |||
| 消費税(10%) | 24,000円 | |||
| 8%対象 小計 | 0円 | |||
| 消費税(8%) | 0円 | |||
| 合計金額 | 264,000円 | |||
| 発行者情報 | |
| 会社名 | 株式会社□□工務店 |
| 住所 | 東京都〇〇区△△1-2-3 |
| 電話番号 | 03-XXXX-XXXX |
| 登録番号 | T1234567890123 |
| 支払期日 | 2025年12月31日 |
| 振込先 | 〇〇銀行 △△支店 普通 1234567 |
| 備考 | 振込手数料はご負担をお願いいたします |
一人親方の請求書の書き方
一人親方が請求書を作成する際のポイントを解説します。
一人親方の請求書の基本
一人親方の場合も、基本的な記載項目は同じです。発注者のフォーマットに従って作成することが多いですが、以下の項目は必ず記載しましょう。
- 発行者の氏名または名称
- 請求書の宛先
- 取引年月日
- 取引の内容
- 請求金額
一人親方のインボイス対応
一人親方がインボイス制度に対応するためには、適格請求書発行事業者として登録する必要があります。
登録した場合:
- 登録番号を請求書に記載
- 取引先は仕入税額控除を受けられる
- 消費税の申告・納税義務が発生
登録しない場合:
- 適格請求書を発行できない
- 取引先は仕入税額控除を受けられない(経過措置あり)
- 取引に影響が出る可能性がある
請求書作成の注意点
建設業の請求書を作成する際の注意点を解説します。
注意点①:業界用語を避ける
建設業特有の業界用語を使用すると、税理士や発注者がわかりにくくなる場合があります。誰が見てもわかる一般的な言葉で記載しましょう。
注意点②:会社名は略さない
株式会社を(株)、有限会社を(有)と略すのはマナー違反です。正式名称で記載しましょう。
注意点③:消費税の端数処理
消費税額の端数処理は、税率ごとに1回行います。品目ごとに端数処理を行うと、合計金額がずれる可能性があります。
注意点④:振込手数料の負担を明記
振込手数料を発注者・受注者のどちらが負担するか明記しておくと、入金時のトラブルを防げます。
注意点⑤:支払期日を明記
支払期日を明記することで、支払遅延を防止できます。取引先のルールに合わせて設定しましょう。
請求書の送付方法
請求書の送付方法は、郵送または電子送付(メール等)があります。
郵送の場合
- 送付状を同封する
- 封筒の左下に「請求書在中」と記載
- 三つ折りにして封入してもOK
メールの場合
- 送付状の内容をメール本文に記載
- 請求書はPDF形式で添付(改ざん防止のため)
- 宛先のミスに注意(CCを含めて確認)
まとめ
建設業の請求書は、人工費の記載とインボイス制度への対応が重要です。適切な請求書を作成することで、取引先との信頼関係を築き、スムーズな支払いを促進できます。
本記事のポイント:
- 人工費は「人工単価 × 人数 × 労働日数」で計算
- 請求書には人工数を数量、「人工」を単位として記載
- インボイス対応には登録番号・適用税率・消費税額の記載が必要
- 8%の軽減税率対象がなくても「0円」と記載する
- 適格請求書は7年間保存が必要
- 一人親方もインボイス対応が求められる場合がある
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