097_人工計算の方法

人工計算の方法|建設業の労務費を正確に算出するコツ

「人工計算の方法がよくわからない」「労務費を正確に算出したい」「見積に人工代をどう反映すればいいか知りたい」——そんなお悩みをお持ちの建設業の方も多いのではないでしょうか。

人工計算の方法|建設業の労務費を正確に算出するコツ

本記事では、人工計算の方法を基礎から解説します。労務費の正確な算出方法、人工単価の設定、見積への反映ポイントを紹介し、利益を確保するための人工計算のコツを詳しく解説します。

関連記事: 人工代・人工出しとは?【建設業】計算方法、相場を解説

関連記事: 労務費の計算方法とは?【積算】人件費との違いを解説

目次

人工(にんく)とは?

建設業における「人工(にんく)」とは、1人の作業員が1日(8時間)でこなせる作業量を表す単位です。「一人工(いちにんく)」「1人工」とも呼ばれます。

人工は、工事の見積もりや予算管理、工程管理において不可欠な要素です。工事にどれだけの労働力が必要かを数値化することで、正確なコスト管理が可能になります。

人工と人工代の違い

用語意味
人工(にんく)1人の作業員が1日(8時間)でこなせる作業量を表す単位
人工代(にんくだい)作業員1人が1日働いた際に発生する人件費

人工は「作業量」の単位であり、人工代は「費用」を意味します。人工に単価を掛けたものが人工代となります。

なぜ人工計算が重要なのか

建設業において人工計算が重要な理由は以下の通りです。

  • 正確な見積もり作成:工事にかかる労務費を正確に算出できる
  • 適正な利益確保:安すぎる見積もりによる赤字工事を防止できる
  • 工程管理の効率化:必要な人員と工期を正確に把握できる
  • 顧客への説明根拠:見積もりの根拠を明確に提示できる

人工計算の基本

人工計算の基本的な考え方と計算式を解説します。

人工の基本計算式

人工(作業量)は以下の計算式で求めます。

人工 =(作業人数 × 作業時間)÷ 8時間

1人工 = 1人の作業員が8時間働く作業量です。建設業では1日あたりの標準労働時間を8時間とみなすのが一般的で、これは労働基準法で定められた法定労働時間にも合致しています。

人工計算の具体例

具体例を見てみましょう。

【例1】作業員1人が2時間かかる作業

(1人 × 2時間)÷ 8時間 = 0.25人工

【例2】作業員2人で4時間かかる作業

(2人 × 4時間)÷ 8時間 = 1人工

【例3】作業員3人が6時間作業した場合

(3人 × 6時間)÷ 8時間 = 2.25人工

人工代の計算式

人工代(労務費)は以下の計算式で求めます。

人工代 = 人工単価 × 作業員数 × 作業日数

または

人工代 = 人工単価 × 人工数

人工代計算の具体例

人工単価を20,000円と設定した場合の計算例です。

ケース計算式人工代
職人1人が3日間働いた場合3人工 × 20,000円60,000円
職人2人が1日働いた場合2人工 × 20,000円40,000円
半日(4時間)の作業0.5人工 × 20,000円10,000円
職人3人が5日間働いた場合15人工 × 20,000円300,000円

歩掛(ぶがかり)を使った人工計算

より正確な人工計算を行うためには、「歩掛(ぶがかり)」という指標を活用します。

歩掛とは?

歩掛とは、ある作業を行うために必要な労務や機械作業量を、標準的な条件のもとで算出した基準値のことです。「1つの作業にかかる手間を数値化したもの」とも言えます。

例えば、「コンクリート打設1㎥あたりに0.3人工必要」「エアコン取り付け1台あたり0.25人工必要」といった形で設定されています。

なぜ歩掛が必要なのか

材料費は「材料単価 × 数量」で簡単に計算できますが、労務費は以下の理由から単純計算では正確に算出できません。

  • 作業の難易度によって所要時間が異なる
  • 施工方法によって手間が変わる
  • 現場条件(高所作業、狭小地など)で効率が変わる
  • 作業員の熟練度によって作業量が異なる

歩掛を使うことで、これらの条件を考慮した正確な労務費を算出できます。

歩掛を使った労務費の計算式

労務費 = 設計作業量 × 歩掛 × 労務単価

または

労務費 = 所要人数(設計作業量 × 該当作業の歩掛)× 労務単価(基本日額 + 割増賃金)

歩掛を使った計算例

具体例を見てみましょう。

【例1】エアコン取り付け

  • 作業内容:エアコン取り付け3台
  • 歩掛:1台あたり0.25人工
  • 労務単価:21,200円/日

所要人工 = 3台 × 0.25人工 = 0.75人工

労務費 = 0.75人工 × 21,200円 = 15,900円

【例2】換気扇取り付け

  • 作業内容:換気扇取り付け3台
  • 歩掛:1台あたり0.31人工
  • 労務単価:20,000円/日

所要人工 = 3台 × 0.31人工 = 0.93人工

労務費 = 0.93人工 × 20,000円 = 18,600円

【例3】土砂掘削

  • 作業内容:土砂掘削100㎥
  • 歩掛:1㎥あたり0.25人工
  • 労務単価:23,000円/日

所要人工 = 100㎥ × 0.25人工 = 25人工

労務費 = 25人工 × 23,000円 = 575,000円

標準歩掛の参照先

歩掛は、国土交通省が公表している以下の資料を参考にできます。

  • 公共建築工事標準単価積算基準:材料の種類やサイズ別の標準歩掛が設定されている
  • 土木工事標準歩掛:全国での施工実態調査に基づき、施工に要する標準的な労務・材料・機械等の所要量を設定

ただし、標準歩掛はあくまで参考値です。自社の作業員の熟練度や現場条件に合わせて調整することが重要です。

人工単価の設定方法

人工計算で重要なのが、適正な人工単価の設定です。

公共工事設計労務単価を参考にする

人工単価の目安として、国土交通省が毎年公表している「公共工事設計労務単価を参考にできます。

公共工事設計労務単価は、都道府県別・職種別に設定されており、公共工事の予定価格を算出するために使用されます。民間工事でも参考値として広く活用されています。

主要職種の労務単価(令和6年度)

令和6年3月から適用されている公共工事設計労務単価の一例です(全国平均)。

職種労務単価(目安)
普通作業員約22,000〜25,000円
電工約25,000〜30,000円
塗装工約27,000〜33,000円
鉄筋工約28,000〜32,000円
型枠工約27,000〜31,000円
左官約26,000〜30,000円
とび工約27,000〜31,000円

※地域によって単価は異なります。都市部は高く、地方は低い傾向にあります。

令和6年度の全国全職種の平均労務単価は23,600円で、前年比+5.9%となっています。平成25年度(2013年)以降、12年連続で上昇しています。

人工単価設定のポイント

人工単価設定のポイント

適正な人工単価を設定するためのポイントを紹介します。

ポイント①:必要経費を考慮する

公共工事設計労務単価には、法定福利費(事業主負担分)などの諸経費が含まれていません。実際の人工単価を設定する際は、以下の経費を上乗せする必要があります。

  • 法定福利費(事業主負担分)
  • 研修訓練等に要する費用
  • 安全管理費
  • その他諸経費

国土交通省は、労務単価の約41%を加算した金額を参考値として公表しています。

ポイント②:作業の難易度を考慮する

以下のような作業条件によって、人工単価を調整する必要があります。

  • 高所作業
  • 狭小地での作業
  • 夜間作業
  • 危険を伴う作業
  • 特殊な技術を要する作業

ポイント③:作業員の経験・資格を考慮する

作業員のスキルレベルによっても単価は変わります。

  • 経験年数
  • 保有資格
  • 熟練度

ポイント④:地域差を考慮する

労務単価は地域によって異なります。例えば、令和6年度の普通作業員の単価を見ると、東京都は約25,400円、北海道は約20,000円と差があります。

残業代・割増賃金の計算方法

人工計算では、残業代や割増賃金も考慮する必要があります。

割増賃金の種類と割増率

種類割増率
時間外労働(残業)25%以上
休日労働35%以上
深夜労働(22時〜5時)25%以上
時間外+深夜50%以上
休日+深夜60%以上

残業代の計算例

人工単価20,000円(8時間)の場合、時間単価は2,500円です。

【例】2時間の残業が発生した場合

残業代 = 2,500円 × 1.25(割増率)× 2時間 = 6,250円

この日の人工代合計 = 20,000円 + 6,250円 = 26,250円

見積書への人工代の反映方法

算出した人工代を見積書に正しく反映する方法を解説します。

見積書への記載項目

人工代を見積書に記載する際は、以下の項目を明確にしましょう。

  • 作業内容:具体的な作業名
  • 数量:作業量(㎡、m、台など)
  • 人工数:必要な人工
  • 単価:人工単価
  • 金額:人工数 × 単価

見積書の記載方法

見積書の記載方法には「材工別単価」と「複合単価」の2種類があります。

材工別単価:材料費と労務費を分けて記載

  • 材料費:○○円
  • 労務費:○○円

複合単価(材工共単価):材料費と労務費を合わせて記載

  • ○○工事一式:○○円

公共工事では複合単価が主流ですが、民間工事では材工別単価で記載することで、見積もりの根拠を明確に示すことができます。

外注費の計算

外注業者に作業を依頼する場合は、通常の人工単価に加えて外注費を計上します。

外注労務費 = 外注人工 × 外注単価

外注単価は、自社での人工単価よりも高めに設定されるケースが一般的です。

利益を確保する人工計算のコツ

人工計算で利益を確保するためのコツを紹介します。

コツ①:最新の労務単価を使用する

労務単価は毎年上昇傾向にあります。古い単価を使用していると、実際のコストを下回り赤字工事になるリスクがあります。国土交通省が公表する最新の公共工事設計労務単価を参考に、常に単価を更新しましょう。

コツ②:現場条件を考慮した歩掛を使用する

標準歩掛はあくまで参考値です。以下の現場条件によって歩掛を調整しましょう。

  • 作業環境が悪く効率が落ちる場合 → 歩掛を引き上げる
  • 熟練工が多く効率が良い場合 → 歩掛を引き下げる
  • 高所作業や狭小地 → 歩掛を引き上げる

コツ③:諸経費を忘れずに計上する

人工代だけでなく、以下の諸経費も忘れずに計上しましょう。

  • 法定福利費:労務費総額 × 法定保険料率
  • 現場管理費:現場監督の人件費、安全管理費など
  • 一般管理費:事務所経費、営業経費など

コツ④:予備費を見込む

工事では予期せぬトラブルや手戻りが発生することがあります。見積もりには5〜10%程度の予備費を見込んでおくと安心です。

コツ⑤:過去の実績データを蓄積する

過去の工事で実際にかかった人工数を記録し、データを蓄積しましょう。実績データをもとに歩掛を修正することで、より正確な人工計算が可能になります。

コツ⑥:安易な値引きをしない

受注を優先して人工代を安く見積もると、赤字工事につながります。歩掛や労務単価に基づいた根拠のある見積もりを提示し、適正な利益を確保しましょう。

人工計算でよくあるミスと対策

人工計算でよくあるミスとその対策を紹介します。

ミス①:残業代・割増賃金の計上漏れ

対策:工事期間中の残業や休日出勤を想定し、あらかじめ割増賃金を見込んでおく

ミス②:法定福利費の計上漏れ

対策:労務費総額に法定保険料率を乗じた法定福利費を別途計上する

ミス③:現場条件の考慮不足

対策:事前に現場調査を行い、作業効率に影響する条件を把握して歩掛を調整する

ミス④:古い労務単価の使用

対策:毎年公表される最新の公共工事設計労務単価を参照し、単価を更新する

ミス⑤:工事規模の見誤り

対策:設計図書を丁寧に確認し、正確な数量拾い出しを行う

人工計算を効率化する方法

人工計算を効率化する方法を紹介します。

方法①:エクセルテンプレートを活用する

エクセルで人工計算用のテンプレートを作成すれば、計算の手間を省けます。以下の項目を含むテンプレートを用意しましょう。

  • 作業内容
  • 数量
  • 歩掛
  • 人工数(自動計算)
  • 単価
  • 金額(自動計算)

方法②:積算ソフトを導入する

積算ソフトを導入すれば、歩掛の自動入力や労務費の自動計算が可能です。ミスを防ぎ、作業効率を大幅に向上できます。

方法③:施工管理アプリを活用する

施工管理アプリを活用すれば、以下のメリットがあります。

  • 自動計算機能:必要なデータを入力するだけで人工代や総コストを自動計算
  • テンプレート生成:見積書や請求書を簡単に作成可能
  • リアルタイム管理:作業進捗やコスト管理をリアルタイムで共有可能
  • データ蓄積:過去の実績データを蓄積し、次回の見積もりに活用

まとめ

人工計算は、建設業において正確な見積もりを作成し、適正な利益を確保するために欠かせません。

本記事のポイント:

  • 人工は1人の作業員が1日(8時間)でこなせる作業量の単位
  • 人工代 = 人工単価 × 人工数
  • 歩掛を活用することで、作業の難易度や現場条件を考慮した正確な労務費を算出できる
  • 労務費 = 設計作業量 × 歩掛 × 労務単価
  • 人工単価は公共工事設計労務単価を参考に設定
  • 法定福利費諸経費を忘れずに計上する
  • 過去の実績データを蓄積し、歩掛を修正することで精度が向上

正確な人工計算を行い、赤字工事を防ぎながら適正な利益を確保しましょう。

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