「工事写真の撮り直しができなくて困った」「写真の整理に時間がかかりすぎる」「検査で写真の不備を指摘された」。工事写真に関するトラブルは、多くの現場で発生しています。

工事写真は、施工状況の記録や品質証明のための重要な資料です。撮影や管理の注意点を理解していないと、後から撮り直しができず、検査に通らない事態にもなりかねません。
この記事では、工事写真の撮影時の注意点と管理時の注意点を詳しく解説します。よくあるNG例や、トラブルを防ぐためのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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工事写真とは
工事写真とは、工事の施工状況や品質を記録するために撮影する写真のことです。工事完成後に見えなくなる部分(不可視部分)も多いため、工事写真は重要な証拠資料となります。
工事写真を撮影する目的
工事写真を撮影する目的は、主に以下の4つです。
- 施工状況の記録:各施工段階における施工状況を記録する
- 品質の証明:使用材料の品質、構造物の寸法が設計図どおりであることを証明する
- 施工方法の証明:施工方法が仕様書に基づいて行われたことを証明・説明する
- 維持管理の資料:工事完了後、維持管理を行うための証拠資料とする
工事写真が重要な理由
工事写真が重要な理由は、完成後に見えなくなる部分(不可視部分)が多いからです。基礎工事、配管工事、鉄筋工事など、完成後には確認できない部分を写真で記録しておく必要があります。
また、工事写真は後日再撮影することができないため、撮り忘れや不備があると取り返しがつきません。撮影時の注意点をしっかり理解しておくことが重要です。
工事写真の撮影時の注意点【10選】
工事写真を撮影する際の注意点を10個紹介します。
1. 撮影計画を立てる
工事写真の撮り忘れを防ぐために、事前に撮影計画を立てることが重要です。「何を・いつ撮影するか」を計画しておくことで、タイミングを逃さずに撮影できます。
撮影計画に含める項目:
- 撮影項目(どの工程を撮影するか)
- 撮影時期(いつ撮影するか)
- 撮影頻度(どのくらいの頻度で撮影するか)
- 撮影担当者(誰が撮影するか)
撮影計画は関係者全員で共有し、撮り忘れを防止しましょう。
2. 5W1Hが読み取れるように撮影する
工事写真は、5W1Hが読み取れるように撮影する必要があります。証拠として認められるためには、以下の情報が写真から読み取れなければなりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| When(いつ) | 撮影日時 |
| Where(どこで) | 撮影場所、工事箇所 |
| Who(誰が) | 施工者、撮影者 |
| What(何を) | 工種、作業内容 |
| Why(なぜ) | 撮影目的 |
| How(どのように) | 施工方法、寸法 |
写真だけで5W1Hが伝わりにくい場合は、黒板に詳細を記載してフォローします。
3. 撮影位置・アングルに注意する
適切な撮影位置とアングルを決めることが重要です。
撮影位置のポイント:
- 近すぎない:必要な要素が写真1枚に収まりきらない
- 遠すぎない:被写体が見えにくくなる
- 全体がわかる位置:工事現場全体の進行状況がわかるアングル
NG例:
- 被写体が小さすぎて何を撮影したかわからない
- 一部しか写っておらず全体像が把握できない
- ピントが合っていない
4. 太陽の位置に注意する
太陽の位置にも注意して撮影位置を決めましょう。
- 逆光を避ける:太陽光が邪魔して全体がかすんでしまう
- 影の写り込みを避ける:太陽を背にすると撮影者の影が写り込む場合がある
屋外撮影の場合は、時間帯によって光の状態が変わるため、撮影時間も考慮しましょう。
5. 黒板の配置・書き方に注意する
黒板は工事写真の補足説明をする重要な役割があります。黒板の配置や書き方によっては内容が見えにくくなるため、注意が必要です。
黒板の注意点:
- 文字が読み取れる大きさで配置する
- 被写体を隠さない位置に配置する
- 黒板が光を反射しない角度で配置する
- 必要事項を漏れなく記載する
- 誤字・脱字がないか確認する
黒板に記載する項目:
- 工事名
- 工種・種別
- 撮影部位・撮影箇所
- 施工状況・寸法
- 撮影日
- 施工者名
6. 不可視部分は特に注意して撮影する
完成後に見えなくなる部分(不可視部分)は、特に注意して撮影する必要があります。出来形寸法が確認できるように撮影しましょう。
不可視部分の例:
- 基礎工事(埋め戻し前)
- 配筋工事(コンクリート打設前)
- 配管工事(壁や床で隠れる前)
- 断熱材の施工(仕上げ前)
不可視部分は後から撮り直しができないため、撮り忘れがないよう撮影計画を徹底しましょう。
7. スケール(寸法)を入れる
出来形を確認する写真では、スケール(寸法)を入れて撮影します。スケールを当てることで、設計図どおりの寸法であることを証明できます。
スケール撮影の注意点:
- スケールの目盛りがはっきり読み取れるように撮影
- スケールが正確な位置に当てられているか確認
- 撮影補助者がスケールを持つ場合は協力して撮影
8. 撮影後すぐに確認する
撮影後はその場で写真を確認しましょう。以下の点をチェックします。
- ピントが合っているか
- 黒板の文字が読み取れるか
- 必要な要素がすべて写っているか
- スケールの目盛りが読み取れるか
- 撮影者の影が写り込んでいないか
不備があればその場で撮り直しができますが、工程が進んでからでは撮り直しができないため、こまめな確認が重要です。
9. 写真の編集・加工は禁止
工事写真の編集・加工は原則として禁止されています。写真の信憑性を確保するためです。
禁止されている行為:
- 写真の切り抜き・トリミング
- 明るさ・コントラストの調整
- 画像の合成
- 不要な部分の消去
ただし、「デジタル工事写真の小黒板情報電子化基準」に基づく電子黒板の使用は認められています。
10. 作業の段取りを事前に共有する
施工中に「撮影のため作業を中断してほしい」と伝えると、作業効率が悪くなります。作業開始前に段取りを共有し、効率よく撮影できるようにしましょう。
全体ミーティングなどで撮影タイミングを連絡し、作業員との連携を図ることが重要です。
工事写真の管理時の注意点【7選】

工事写真の管理時の注意点を7つ紹介します。
1. 工種・工程順に整理する
工事写真は工種および工程順に整理し、検索が容易になるようにします。バラバラに保存していると、必要な写真を探すのに時間がかかります。
整理のポイント:
- フォルダを工種・工程ごとに分ける
- ファイル名に日付や撮影内容を含める
- 撮影箇所一覧表と対応させる
2. ファイル名のルールを統一する
ファイル名のルールを統一しておくと、整理・検索がしやすくなります。
ファイル名の例:
- 20251201_基礎工事_配筋検査_001.jpg
- 20251205_躯体工事_コンクリート打設_001.jpg
国土交通省の基準では、ファイル名に使用できる文字は半角英数字および全角文字とされています。
3. 原本は必ず保存する
工事写真の原本(撮影時のJPEGデータ)は必ず保存しておきます。原本は改ざんされていないことの証明になります。
原本保存の注意点:
- 撮影時のデータをそのまま保存する
- 複数の媒体にバックアップを取る
- Exif情報(撮影日時など)を削除しない
4. 電子媒体の管理方法を決める
デジタル写真を電子媒体で管理する場合は、以下の点に注意します。
電子媒体に記載する情報:
- 工事番号
- 工事名称(工事写真)
- 作成年月
- 発注者名称
- 受注者名称
- 何枚目/総枚数
- ウイルスチェック情報
5. 定期的にバックアップを取る
工事写真のデータは定期的にバックアップを取りましょう。データの消失や破損に備えることが重要です。
バックアップの方法:
- 外付けHDDに保存
- クラウドストレージに保存
- 複数の場所に分散して保存
6. 写真台帳を作成する
工事写真は写真台帳(アルバム)にまとめて整理します。写真台帳は検査時に提出する重要な書類です。
写真台帳に記載する情報:
- 工事名
- 撮影日
- 工種・種別
- 撮影箇所
- 撮影内容の説明
写真台帳は紙媒体または電子媒体で作成し、監督職員との協議により提出方法を決定します。
7. 撮影箇所一覧表と照合する
撮影した写真が撮影箇所一覧表の項目を網羅しているかを確認します。撮り忘れがないかを定期的にチェックしましょう。
工事の進捗に合わせて照合し、不足があれば早めに撮影します。
工事写真でよくあるNG例
工事写真でよくあるNG例を紹介します。これらの失敗を避けるために注意しましょう。
撮影時のNG例
| NG例 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| ピントが合っていない | 何を撮影したか判別できない | 撮影後すぐに確認する |
| 黒板の文字が読めない | 5W1Hの情報が伝わらない | 黒板の位置・角度を調整する |
| 逆光で暗く写っている | 被写体が確認できない | 太陽の位置を考慮して撮影する |
| 撮影者の影が写り込んでいる | 被写体が見えにくい | 撮影位置を調整する |
| スケールの目盛りが読めない | 寸法が確認できない | スケールの位置を調整する |
| 被写体が小さすぎる | 確認したい部分が見えない | 適切な距離から撮影する |
| 不可視部分を撮り忘れた | 証拠資料が残らない | 撮影計画を立てる |
管理時のNG例
| NG例 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 写真を整理せずに保存 | 必要な写真を探すのに時間がかかる | 工種・工程順に整理する |
| ファイル名がバラバラ | 検索しにくい | ファイル名のルールを統一する |
| 原本を削除した | 改ざんの疑いが生じる | 原本は必ず保存する |
| バックアップを取っていない | データ消失のリスク | 定期的にバックアップを取る |
| 写真を編集・加工した | 証拠として認められない | 編集・加工は禁止 |
工事写真管理を効率化する方法
工事写真の撮影・管理を効率化する方法を3つ紹介します。
1. 電子黒板を活用する
電子黒板を活用すると、黒板の書き換えや配置の手間を削減できます。スマホやタブレットの画面上で黒板の内容を編集し、写真に合成することができます。
電子黒板のメリット:
- 黒板を持ち運ぶ必要がない
- 黒板の書き換えが簡単
- 文字が読みやすい
- テンプレートを登録できる
2. クラウド型の写真管理アプリを使う
クラウド型の写真管理アプリを使うと、撮影した写真を自動でクラウドに保存でき、現場と事務所間の情報共有が容易になります。
写真管理アプリのメリット:
- 撮影した写真を自動でクラウドに保存
- 現場と事務所でリアルタイムに共有
- 写真台帳の自動作成
- フォルダ分けや整理が簡単
3. 撮影チェックリストを活用する
撮影チェックリストを作成し、撮り忘れを防止します。撮影箇所一覧表をもとにチェックリストを作成し、撮影完了した項目にチェックを入れていきます。
まとめ
工事写真は、施工状況や品質を証明する重要な資料です。撮影時・管理時の注意点を理解し、トラブルを未然に防ぎましょう。
この記事のポイント:
【撮影時の注意点】
- 撮影計画を立てて撮り忘れを防ぐ
- 5W1Hが読み取れるように撮影する
- 撮影位置・アングル・太陽の位置に注意
- 黒板の配置・書き方に注意
- 不可視部分は特に注意して撮影
- 撮影後すぐに確認する
- 写真の編集・加工は禁止
【管理時の注意点】
- 工種・工程順に整理する
- ファイル名のルールを統一する
- 原本は必ず保存する
- 定期的にバックアップを取る
- 写真台帳を作成する
工事写真は後から撮り直しができないため、日頃から注意点を意識して撮影・管理を行いましょう。

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