「建設業の週休2日は義務化されたの?」「週休2日制を導入したいが、どう対応すればいい?」「工期や収入への影響が心配」。建設業界では、週休2日制への関心が高まっていますが、疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、建設業の週休2日制は現時点で法律上の義務ではありません。ただし、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、国土交通省が週休2日制を強く推進しています。今後、週休2日制の導入は避けられない流れとなっています。
この記事では、建設業の週休2日制について、義務化の状況、導入のメリット・デメリット、対応方法を詳しく解説します。
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建設業の週休2日制とは
まず、週休2日制の基本と、建設業界の現状を確認しましょう。
週休2日制と完全週休2日制の違い
「週休2日制」と「完全週休2日制」は似ているようで異なります。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 週休2日制 | 月に1回以上、週に2日の休みがある制度 |
| 完全週休2日制 | 毎週必ず2日の休みがある制度 |
| 4週8休 | 4週間(28日間)で8日の休みがある制度 |
建設業界では、「4週8休」という表現がよく使われます。これは4週間で8日の休み、つまり週に換算すると2日の休みに相当します。
建設業の休日の現状
建設業界の休日の現状は、他産業と比べて厳しい状況にあります。
- 4週8休を達成している企業:約2割程度
- 4週4休以下で就業している企業:約4割
- 年間出勤日数:全産業平均より約30日多い
つまり、建設業界では週休1日が依然として主流であり、週休2日制の導入は大きな課題となっています。
週休2日は義務?法律の現状
建設業の週休2日制の義務化について、現在の法律の状況を解説します。
週休2日制は義務ではない
建設業の週休2日制は、現時点では法律で義務付けられておらず、罰則も存在しません。
国土交通省は「令和6年4月から、建設業においても罰則付きの時間外労働規制が適用されることを踏まえ、計画的に週休2日を推進する」という方針を示していますが、週休2日制そのものを義務化するものではありません。
2024年4月から適用された時間外労働の上限規制
2024年4月から、建設業にも罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されました。これは週休2日制とは別の話ですが、労働時間の削減を促すものです。
【時間外労働の上限規制】
| 項目 | 上限 |
|---|---|
| 原則 | 月45時間、年360時間 |
| 特別条項付き36協定を締結した場合 | 年720時間以内 |
| 単月 | 100時間未満(休日労働含む) |
| 複数月平均 | 80時間以内(休日労働含む) |
| 月45時間超えの回数 | 年6回まで |
違反した場合の罰則:6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
国土交通省の週休2日推進の取り組み
国土交通省は、週休2日制の普及に向けて以下の取り組みを行っています。
- 直轄工事での週休2日工事の拡大:公共工事から週休2日を定着させる
- 週休2日推進工事:達成度合いに応じて労務単価に補正係数を適用
- 適正な工期設定:週休2日を前提とした工期設定の推進
- 経費補正:週休2日取得に必要な費用を計上
公共工事から民間工事へと、週休2日制を段階的に広げていく方針です。
今後の見通し
現時点で週休2日制は義務ではありませんが、今後義務化される可能性は十分にあります。以下の理由から、週休2日制への対応は避けられない流れとなっています。
- 時間外労働の上限規制への対応として週休2日が有効
- 公共工事での週休2日が標準化されつつある
- 人材確保のために労働環境の改善が必須
- 2020年改正建設業法で著しく短い工期での発注が規制
週休2日制が求められる背景
なぜ建設業界で週休2日制が強く求められているのか、その背景を解説します。

深刻な人手不足
建設業界では深刻な人手不足が続いています。就業者数はピーク時の685万人から約200万人減少し、有効求人倍率は5倍を超える異常な水準です。
週休1日という労働環境では、若い人材が建設業を選ばないのは当然です。人材確保のためには、他産業と同等の労働条件が必要不可欠です。
高齢化の進行
建設業就業者の高齢化も深刻です。55歳以上が約35%を占める一方、29歳以下は約12%にとどまっています。ベテランの大量退職が進む中、若手の入職が追いつかない状況が続いています。
働き方改革の推進
政府主導の働き方改革により、全産業で労働環境の見直しが求められています。建設業界でも、長時間労働や休日の少なさを改善することが急務となっています。
国土交通省は、従来の3K(きつい・きたない・危険)に代わる新3K(給与・休暇・希望)を提唱し、建設業のイメージ改善に取り組んでいます。
週休2日制のメリット
週休2日制を導入するメリットを解説します。
メリット1:人材確保・定着率の向上
週休2日制の導入は、若手人材の確保に大きく貢献します。建設業離職者が仕事を辞めた理由の上位に「休みが取りづらい」があり、週休2日制によってこの課題を解消できます。
また、求人票に週休2日制を記載することで、求職者の増加が期待できます。
メリット2:企業イメージの向上
週休2日制の導入は、企業の働き方改革への取り組み意欲を示すことになります。採用活動においても、週休2日制を導入している企業は選ばれやすくなります。
メリット3:従業員の健康維持・生産性向上
適切な休息は、従業員の健康維持に不可欠です。疲労が蓄積すると、事故やミスのリスクも高まります。週休2日制により、心身ともにリフレッシュした状態で仕事に臨めるようになります。
メリット4:時間外労働の上限規制への対応
2024年4月から適用された時間外労働の上限規制に対応するためにも、週休2日制は有効な手段です。休日を増やすことで、労働時間を適切に管理できます。
週休2日制のデメリット・課題
一方で、週休2日制の導入には課題もあります。
課題1:日給制の従業員の収入減少
建設業では日給制を採用している会社がまだ多く存在します。週休2日になると、働く日数が減る分、収入も減少してしまいます。
例:日当15,000円の場合、月に4日休みが増えると収入が約6万円減少
週休2日を望まない職人がいるのは、収入面での不安が大きな理由です。
課題2:工期への影響
現場の工期がギリギリで設定されているケースが多く、週休2日にすると工期が厳しくなるという問題があります。工期を伸ばすと工事費もかさむため、発注者との調整が必要です。
課題3:協力会社との足並み
建設業では、複数の会社が現場に携わることがほとんどです。会社ごとに事情が異なるため、週休2日制に向けて足並みを揃えることが難しい場合があります。
課題4:人材不足の悪循環
週休2日になると、従業員1人あたりの工数が減るため、これまで通りの作業量をこなすにはより多くの人材が必要となります。人材が確保できないと、週休2日にするのは難しいという悪循環に陥ります。
週休2日制を実現するための対応方法
週休2日制を実現するための具体的な対応方法を解説します。
対応1:給与体系の見直し(月給制への移行)
週休2日制を導入する上で、日給制から月給制への移行が重要です。月給制であれば、稼働日数に関わらず安定した給与を支払うことができ、従業員の生活が安定します。
| 給与体系 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 日給制 | 働いた分だけ稼げる | 休みが増えると収入減 |
| 月給制 | 収入が安定する | 稼働日数に関係なく固定 |
対応2:適正な工期設定
週休2日を前提とした工期設定が必要です。週休2日を考慮した人件費やリース代を計算し、発注者に適切な工期と費用を提示して了承を得ましょう。
2020年改正建設業法では、著しく短い工期で依頼した発注者は国土交通大臣等による勧告・公表の対象となります。
対応3:業務効率化・DX推進
週休2日制を実現しながら生産性を維持するためには、業務効率化とDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が不可欠です。
【効率化できる業務の例】
- 日報作成:施工管理アプリで現場から入力
- 工事写真管理:電子黒板で撮影、自動整理
- 工程管理:クラウドでリアルタイム共有
- 勤怠管理:スマホで打刻、自動集計
- 情報共有:チャット機能で連絡
施工管理アプリを導入することで、書類作成や写真整理の時間を大幅に削減できます。
対応4:現場閉所の徹底(4週8閉所)
日本建設業連合会は、現場を週に2日閉じる「4週8閉所」を推進しています。現場自体を閉所することで、全員が休める環境を作ります。
対応5:交替制の導入
現場を閉所できない場合は、交替制で週休2日を確保する方法もあります。国土交通省も「週休2日交替制適用工事」を試行しています。
週休2日制導入のステップ
週休2日制を導入するための具体的なステップを紹介します。
ステップ1:現状の把握
まず、自社の労働時間・休日の現状を把握しましょう。
- 現在の休日数(4週あたり何日か)
- 時間外労働の実態
- 従業員の給与体系(日給制・月給制)
ステップ2:課題の洗い出し
週休2日制を導入する上での課題を洗い出します。
- 日給制の従業員の収入補填
- 工期の見直し
- 人材の確保
- 協力会社との調整
ステップ3:対策の実施
課題に対して具体的な対策を実施します。
- 月給制への移行
- 適正な工期設定・発注者との交渉
- 業務効率化ツールの導入
- 協力会社との事前調整
ステップ4:段階的な導入
いきなり完全週休2日にするのではなく、段階的に導入することをおすすめします。
- まずは4週6休から始める
- 次に4週7休へ移行
- 最終的に4週8休(週休2日)を達成
ステップ5:効果の検証・改善
導入後は効果を検証し、必要に応じて改善を行います。
- 休日取得状況の確認
- 時間外労働の推移
- 従業員の満足度
- 生産性の変化
週休2日制に関するよくある質問
Q1:週休2日制は義務ですか?罰則はありますか?
A:現時点では、週休2日制は法律で義務付けられておらず、罰則もありません。ただし、時間外労働の上限規制には罰則があるため、労働時間の管理は必要です。
Q2:週休2日と時間外労働の上限規制は関係がありますか?
A:直接的な関係はありませんが、時間外労働を削減するための手段として週休2日制は有効です。国土交通省も時間外労働規制への対応として週休2日を推進しています。
Q3:週休2日にすると収入が減りませんか?
A:日給制の場合は収入が減少します。そのため、月給制への移行や、労務単価の補正など、収入を補填する対策が必要です。
Q4:公共工事では週休2日が必須ですか?
A:国土交通省の直轄工事では週休2日工事が拡大しています。達成度合いに応じて労務単価の補正が行われる制度もあります。今後、公共工事では週休2日が標準化されていく見込みです。
まとめ
建設業の週休2日制は、現時点では法律上の義務ではありませんが、国土交通省が強く推進しており、今後は避けられない流れとなっています。
週休2日制のポイント:
- 義務化状況:現時点で義務ではないが、国が強く推進
- 時間外労働規制:2024年4月から罰則付きで適用
- メリット:人材確保、企業イメージ向上、従業員の健康維持
- 課題:収入減少、工期への影響、人材不足
週休2日制を実現するための対応方法:
- 給与体系の見直し:月給制への移行
- 適正な工期設定:週休2日を前提とした工期
- 業務効率化・DX推進:施工管理アプリの導入
- 現場閉所の徹底:4週8閉所の実施
- 交替制の導入:現場を閉所できない場合の対応
週休2日制の導入は、人材確保や働き方改革の観点から、建設業界にとって重要な課題です。業務効率化ツールを活用しながら、段階的に週休2日制を実現していきましょう。

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