「施工管理職ってどんな仕事？」「現場監督と何が違うの？」「キャリアアップするにはどうすればいい？」。建設業界で働くことを検討している方や、施工管理職に興味がある方の中には、このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
施工管理職は、建設工事現場の指揮・監督をして、安全かつ効率的に工事を進めるために工事全体を管理する職業です。建設業界において欠かせない存在であり、安定した需要と将来性がある専門職です。
この記事では、施工管理職とは何か、仕事内容である「5大管理」の内容、キャリアパス、年収まで詳しく解説します。
関連記事： 施工管理とは？現場監督との違いや役割を解説
関連記事： 施工管理の4大管理とは？品質・工程・安全・原価管理を解説
関連記事： 施工管理技士とは？資格の種類・難易度・年収を解説
施工管理職とは
施工管理職とは、建設工事が計画に沿って安全かつ高品質に進むよう、現場全体を統括・管理する仕事です。工事の開始（着工）から完了（竣工）まで、工程・品質・安全・コストを最適化する重要なポジションを担います。
施工管理職の役割
施工管理職は、建設現場において以下のような役割を担います。
- 工事全体のマネジメント：スケジュール・品質・安全・コストを管理
- 現場作業の指揮監督：作業員への指示・監督
- 関係者との調整：発注者・設計者・協力会社との折衝
- 書類作成・事務処理：施工計画書、報告書、各種申請書類の作成
施工管理職と現場監督の違い
施工管理職と現場監督という言葉はしばしば混同されますが、役割や責任範囲に違いがあります。
| 項目 | 施工管理職 | 現場監督 |
|---|---|---|
| 役割 | 工事全体の管理・監督 | 主に現場での作業員の指導・監督 |
| 責任範囲 | プロジェクト全体を俯瞰 | 現場作業に特化 |
| 業務内容 | 工程・品質・安全・原価管理、発注者との折衝、書類作成 | 現場での作業員の指揮・監督 |
企業によっては両者の呼称が入れ替わることもありますが、一般的に施工管理職の方が責任範囲が広く、より総合的な管理業務を行います。
施工管理の5大管理とは
施工管理職には「5大管理」と呼ばれる重要な業務領域があります。これは品質管理・工程管理・安全管理・原価管理・環境管理の5つを指し、どれも工事の円滑な進行や結果の品質に直結する大切な要素です。
参考記事：国土交通省「監理技術者等の職務（役割）の明確化」
※従来は「4大管理（品質・工程・安全・原価）」と呼ばれていましたが、近年は環境管理を加えた5大管理が一般的です。
1. 品質管理（Quality）
品質管理とは、設計図や仕様書に記載されている品質基準を満たすため、工事の各段階で検査や確認を行う業務です。
【品質管理の具体的な業務】
- 材料の受け入れ検査
- 施工過程のチェック
- 工事写真の撮影・記録
- 検査報告書の作成
- 出来形管理（寸法・数量の確認）
品質不良があれば工事のやり直しが発生し、工期やコストにも大きく影響します。そのため、日々の確認作業と記録が欠かせません。
2. 工程管理（Cost/Delivery）
工程管理とは、工期（納期）を守るために、どのタイミングでどの作業を進めるかをスケジュール化し、進捗を管理する業務です。
【工程管理の具体的な業務】
- 工程表の作成（バーチャート、ネットワーク工程表等）
- 資材・建設機材の手配
- 作業員の手配・配置
- 進捗状況の確認・報告
- 遅延発生時のリカバリー対応
雨天などの天候要因や資材の納期、作業員の確保状況など、さまざまな要素でスケジュールが左右されるため、臨機応変な対応力が求められます。
3. 安全管理（Safety）
安全管理とは、工事現場で働く作業員の安全を確保し、事故を未然に防ぐための業務です。
【安全管理の具体的な業務】
- 安全計画の作成
- 朝礼での安全確認・危険予知活動（KY活動）
- 安全パトロールの実施
- 保護具の着用確認
- 安全教育の実施
- ヒヤリハット報告の収集・対策
建設業は労働災害が多い業種であり、安全管理は施工管理職の最も重要な業務の一つです。
4. 原価管理（Cost）
原価管理とは、工事にかかるコストを管理し、予算内で工事を完了させるための業務です。
【原価管理の具体的な業務】
- 実行予算の作成
- 材料費・労務費・外注費の管理
- コスト実績の把握・分析
- 予算超過時の対策検討
- 最終原価の確定
予算オーバーは会社の利益に直結するため、常にコストを意識した管理が求められます。
5. 環境管理（Environment）
環境管理とは、工事が周辺環境や地域住民に与える影響を最小限に抑えるための業務です。
【環境管理の具体的な業務】
- 騒音・振動対策
- 粉じん対策
- 産業廃棄物の適正処理
- 近隣住民への配慮・説明
- 環境関連法規の遵守
近年は環境への配慮が重視されており、5大管理の一つとして環境管理が加わっています。
5大管理の一覧表
| 管理項目 | 目的 | 主な業務 |
|---|---|---|
| 品質管理 | 設計通りの品質を確保 | 検査、記録、出来形管理 |
| 工程管理 | 工期を守る | 工程表作成、進捗管理、手配 |
| 安全管理 | 事故を防ぐ | 安全教育、パトロール、KY活動 |
| 原価管理 | 予算内で完了 | 実行予算、コスト管理 |
| 環境管理 | 周辺環境への配慮 | 騒音対策、廃棄物処理 |
施工管理職の種類
施工管理職は、担当する工事の種類によっていくつかの分野に分かれます。
| 分野 | 工事内容 | 対応する資格 |
|---|---|---|
| 建築施工管理 | ビル、マンション、住宅などの建築工事 | 建築施工管理技士 |
| 土木施工管理 | 道路、橋、トンネル、ダムなどの土木工事 | 土木施工管理技士 |
| 電気工事施工管理 | 電気設備の工事 | 電気工事施工管理技士 |
| 管工事施工管理 | 空調・給排水・ガスなどの配管工事 | 管工事施工管理技士 |
| 電気通信工事施工管理 | 通信設備の工事 | 電気通信工事施工管理技士 |
| 造園施工管理 | 公園、緑地などの造園工事 | 造園施工管理技士 |
施工管理技士の資格
施工管理職として活躍するためには、「施工管理技士」の国家資格を取得することが重要です。
1級と2級の違い
施工管理技士には1級と2級があり、担当できる業務範囲が異なります。
| 項目 | 1級施工管理技士 | 2級施工管理技士 |
|---|---|---|
| 担当できる工事規模 | すべての規模の工事 | 中小規模の工事 |
| 配置できる技術者 | 監理技術者、主任技術者 | 主任技術者 |
| 特定建設業 | 専任技術者になれる | 専任技術者になれない |
1級施工管理技士は、監理技術者として大規模な工事を担当できるため、より責任が大きく、年収も高くなります。
資格取得のメリット
- 担当できる業務が広がる：監理技術者・主任技術者として活躍
- 年収アップ：資格手当や昇給が期待できる
- 転職に有利：資格保有者は需要が高い
- 社会的信用の向上：国家資格として評価される
施工管理職のキャリアパス
施工管理職としてのキャリアパスを紹介します。
一般的なキャリアステップ
【未経験〜キャリアアップの流れ】
- 施工管理アシスタント：現場での補助業務、先輩のサポート
- 2級施工管理技士取得：主任技術者として中小規模の現場を担当
- 現場担当者：一つの現場を任される
- 1級施工管理技士取得：監理技術者として大規模現場を担当
- 現場所長：複数の現場を統括、責任者として活躍
- 管理職：プロジェクトマネージャー、部長など
キャリアアップのポイント
1. 資格を取得する
2級から1級へのステップアップは、年収アップの大きなチャンスです。1級施工管理技士を取得することで、担当できる工事の規模が広がり、より高い責任を持つポジションに就くことができます。
2. 実務経験を積む
資格だけでなく、現場での実務経験も重要です。経験年数が多いほど、トラブルに対応できる能力が評価され、年収も上がる傾向にあります。
3. 複数の資格を取得する
施工管理技士に加えて、関連する資格（建築士、電気工事士など）を取得することで、市場価値が高まり、年収アップにつながります。
4. より大きな会社へ転職する
規模の大きな会社の方が基本給も役職手当も高い傾向にあります。資格を取得したら、より大きな会社への転職も選択肢の一つです。
施工管理職の年収
施工管理職の年収について解説します。
平均年収
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、建築施工管理技士の平均年収は約620万円です。建設業全体の平均給与（約460万円）と比べると高い水準にあります。
| 資格 | 平均年収 |
|---|---|
| 1級施工管理技士 | 460万〜550万円（大卒で750万円程度も） |
| 2級施工管理技士 | 350万〜450万円 |
| 無資格 | 300万〜400万円 |
1級と2級では、最大で200万円程度の差があることがわかります。
年収に影響する要素
- 資格の有無・等級：1級の方が高年収
- 経験年数：経験が多いほど年収が上がる
- 会社の規模：大手ゼネコンは年収が高い
- 勤務地域：都市部は年収が高い傾向
- 役職：現場所長・管理職になると大幅アップ
年収1,000万円は可能？
施工管理職で年収1,000万円を達成することは可能です。大手ゼネコン（スーパーゼネコン）では、1級施工管理技士として経験を積み、現場所長や管理職に就くことで、年収1,000万円を超えるケースもあります。
施工管理職のやりがいと大変さ
施工管理職のやりがい
- 形に残る仕事：自分が携わった建物・構造物が完成する達成感
- 社会貢献：インフラ整備を通じて社会に貢献できる
- スキルアップ：専門知識・技術が身につく
- 安定した需要：建設業界は常に需要がある
- チームワーク：多くの人と協力して一つのものを作り上げる
施工管理職の大変さ
- 責任の重さ：工事全体の責任を負う
- 長時間労働：工期によっては残業が多い
- 早朝出勤：朝礼に合わせて早い時間からの出勤
- 天候の影響：雨天時の対応など臨機応変な対応が必要
- 人間関係：多くの関係者との調整が必要
ただし、近年は働き方改革が進んでおり、労働環境の改善が図られています。2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、週休二日制の導入も進んでいます。
施工管理職に向いている人
施工管理職に向いている人の特徴を紹介します。
- コミュニケーション能力が高い人：多くの関係者との調整が必要
- リーダーシップがある人：現場をまとめる力が求められる
- 計画性がある人：工程管理・スケジュール管理が重要
- 臨機応変に対応できる人：予期せぬ事態への対応力
- 責任感がある人：工事全体の責任を持つ
- ものづくりが好きな人：建物・構造物の完成を見届ける喜び
まとめ
施工管理職は、建設工事現場の指揮・監督をして、安全かつ効率的に工事を進めるために工事全体を管理する職業です。
5大管理の内容：
- 品質管理：設計通りの品質を確保
- 工程管理：工期を守る
- 安全管理：事故を防ぐ
- 原価管理：予算内で完了
- 環境管理：周辺環境への配慮
キャリアパスのポイント：
- 資格取得：2級→1級施工管理技士でキャリアアップ
- 実務経験：現場での経験を積む
- 複数資格：関連資格の取得で市場価値向上
年収の目安：
- 平均年収：約600万円
- 1級施工管理技士：460万〜550万円
- 大手ゼネコン・管理職：1,000万円以上も可能
施工管理職は、責任は重いですが、形に残るやりがいがある仕事です。安定した需要と将来性がある専門職として、ぜひ施工管理という選択肢を検討してみてください。
サービス資料ダウンロード
施工管理の業務効率化を検討している事業者様向けに、Anymore施工管理の概要について紹介しています。
コメントを残す