126_建設業のDXとは

建設業のDXとは?デジタル化のメリットと導入事例

建設業界では深刻な人手不足や長時間労働、技術継承の困難といった課題が山積しています。これらの解決策として注目されているのが「建設DX」です。国土交通省も2024年に「i-Construction 2.0」を策定し、建設現場のオートメーション化を強力に推進しています。

建設DX

本記事では、建設DXの基本的な考え方から、導入によるメリット、具体的な成功事例、そして推進を成功させるためのポイントまで詳しく解説します。

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目次

建設DXとは?

建設DXとは、AI・IoT・ICTなどのデジタル技術を活用して、建設業界の業務プロセスや事業モデルを根本から変革し、生産性向上や新たな価値創造を実現する取り組みのことです。単なる個別業務のデジタル化(IT化)にとどまらず、設計から施工、維持管理までの建設プロジェクト全体を最適化し、ビジネスモデルそのものを変革することがDXの本質といえます。

経済産業省が2018年に公表した「DX推進ガイドライン」では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

デジタル化(IT化)とDXの違い

デジタル化は紙の書類をPDFにするなど、アナログ情報をデジタル形式に変換して処理や管理を効率化することを指します。一方、DXはデジタル技術を活用してビジネスモデルや企業文化そのものを変革し、新たな価値を創出することを意味します。建設DXでは、単にツールを導入するだけでなく、業務プロセス全体の改革を目指します。

建設業界の現状と課題

建設DXが急務とされる背景には、建設業界が抱える深刻な課題があります。

深刻な人手不足と高齢化

建設業の就業者数は1997年のピーク時685万人から減少を続け、2020年には492万人まで減少しました。特に深刻なのは高齢化で、建設技能者の約25%以上が60歳以上となっています。若年層(29歳以下)は約1割にとどまり、熟練技術者の退職に伴う技術継承が大きな課題となっています。

長時間労働と働き方改革への対応

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、いわゆる「2024年問題」への対応が求められています。従来のような長時間労働に依存した働き方からの脱却が急務であり、デジタル技術による業務効率化が不可欠です。

生産性の低さ

建設業は他産業と比較して生産性が低いとされています。受注生産方式で成果物が一品一様であること、現場での物理的な作業が多くアナログ手法が根強いこと、重層下請構造による情報共有の困難さなどが要因として挙げられます。

DX推進状況の遅れ

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2023」によると、建設業でDXの「言葉の意味を理解し、取り組んでいる」企業の割合はわずか11.4%と、全業種の中でも際立って低い数値となっています。約8割の企業がDXを実施しておらず、そのうち6割以上が「今後も予定なし」と回答しています。

国が推進する建設DX ~i-ConstructionからDXへ~

国土交通省は2016年から「i-Construction」を掲げ、建設現場へのICT導入による生産性向上を推進してきました。そして2024年4月、取り組みをさらに加速させた「i-Construction 2.0」を策定しました。

i-Construction 2.0の目標

i-Construction 2.0では、2040年度までに以下の目標を掲げています。

  • 省人化3割:少ない人数でも建設現場を維持できる体制の構築
  • 生産性1.5倍向上:デジタル技術の活用による効率化
  • 建設現場のオートメーション化:自動施工・遠隔操作の実現

i-Construction 2.0の3つの柱

i-Construction 2.0は、以下の3つの柱で構成されています。

(1)施工のオートメーション化
自動施工の環境整備、遠隔施工技術の普及促進、施工データプラットフォームの整備、ICT施工の原則化などを推進します。2025年からはICT施工を原則とし、施工データをより取得しやすい環境を整備します。

(2)データ連携のオートメーション化
BIM/CIMによる建設生産プロセス全体のデータ連携を促進します。3次元モデルの標準化と契約図書としての活用、デジタルツインの活用による現場作業の効率化を目指します。

(3)施工管理のオートメーション化
遠隔臨場による工事検査の原則適用、ロボットによる遠隔設備点検、高速ネットワークの整備などを推進します。2024年度からは完了検査も遠隔臨場での実施が可能となりました。

建設DXで活用される主なデジタル技術

建設DXを支えるデジタル技術には、さまざまな種類があります。

BIM/CIM(ビム/シム)

BIM(Building Information Modeling)およびCIM(Construction Information Modeling)は、建設DXの基盤となる最も重要な技術です。コンピューター上に建築物や構造物の3次元モデルを構築し、資材の仕様、コスト、工程、維持管理情報などの属性情報を紐づけて一元管理します。

2023年度からは直轄土木業務・工事においてBIM/CIMの原則適用が開始されています。国土交通省の調査によると、建設業界の約48%がBIMを導入しており、導入効果を「大きい」と評価する企業は41%に達しています。

ドローン(UAV)

ドローンによるレーザー3D測量は、建設現場を上空から立体スキャンし、短時間で高精度の測量データを取得できます。人が立ち入れない危険な場所や高所の点検・調査にも活用され、作業の安全性向上とコスト削減に貢献します。

ICT建機

ICT建機とは、GPS・GNSSなどの衛星測位技術とICTを活用し、自動制御や遠隔操作が可能な建設機械です。オペレーターの経験値に依存しない高精度な作業が可能となり、作業効率と安全性が大幅に向上します。住友建機の実験では、ICT建機の活用により施工時間を約43%短縮、オペレーター人員を67%削減することに成功しています。

AI(人工知能)

AIは建設業界でさまざまな用途に活用されています。画像解析による建築物の劣化診断、危険予知活動の支援、ベテラン職人の技術の映像解析と継承サポート、図面解析の自動化などが代表的な例です。

IoT(モノのインターネット)

建設現場の機器やセンサーからリアルタイムでデータを収集し、作業の進捗状況や設備の状態をモニタリングします。建設機械の稼働管理、作業員の安全管理、資材の在庫管理などに活用されています。

クラウドサービス・施工管理アプリ

クラウドベースの施工管理アプリは、図面・工程表・写真・日報などをリアルタイムで共有できるシステムです。現場と事務所間の連携強化、ペーパーレス化、情報の一元管理を実現します。中小企業でも導入しやすく、建設DXの第一歩として多くの企業で採用されています。

建設DXのメリット

建設DXを推進することで、以下のようなメリットが期待できます。

1. 業務効率化・生産性向上

デジタル技術の活用により、従来手作業だった業務や紙ベースの作業をデジタル化し、大幅な効率化が可能になります。BIM/CIMを活用すれば設計から施工までの情報を一元管理でき、手戻り作業や確認ミスを大幅に削減できます。RPAによる見積書作成や請求書処理の自動化も効果的です。

2. 人手不足の解消・省人化

ドローンや自動化建機、ロボットの導入により、少ない人員でも高効率な作業が実現します。現場の労働力依存度を減らしながら、生産性を維持・向上させることが可能です。

3. 安全性の向上

危険な高所作業や重機操作をドローンやロボットで代替することで、事故のリスクを大幅に減らせます。IoTセンサーやAIによるデータ分析で現場の状況をリアルタイムに監視し、危険を予測して未然に防ぐことも可能です。

4. 技術継承の促進

ベテラン職人の技術やノウハウをデジタルデータとして数値化・映像化することで、組織の資産として蓄積できます。若手への技術継承がスムーズになり、人材育成の効率化にもつながります。

5. コスト削減

資材の無駄や作業の重複を減らし、データに基づく適切な作業員・資材の調達により、コスト最適化が実現します。ペーパーレス化による印刷・保管コストの削減も期待できます。

6. 働き方改革の実現

遠隔臨場や遠隔施工管理により、現場への移動時間を削減できます。業務効率化によって労働時間を短縮し、週休2日制や週休3日制の導入も可能になります。

建設DXの導入事例

実際に建設DXに取り組み、成果を上げている企業の事例を紹介します。

【大手ゼネコン】清水建設:BIMを核としたDXプラットフォーム

清水建設は「Shimz One BIM」を核としたDXプラットフォームを構築し、全社的な生産性向上と働き方改革を実現しています。BIMを中核とした情報共有基盤により、リモート施工管理が可能となり、現場作業の効率化に成功しています。また、AIを活用した配筋検査の自動化など、独自のDXソリューションを次々と開発しています。

【大手ゼネコン】鹿島建設:A4CSELによる自動化施工

鹿島建設は「A4CSEL(クワッドアクセル)」と呼ばれる建機自動制御システムを開発し、自動施工による生産性向上と環境負荷軽減を実現しました。「DX銘柄2020」にも選定され、経営幹部を含めたグループ全体のデジタルリテラシー向上に取り組んでいます。

【大手ゼネコン】大成建設:遠隔巡視システムによる安全性向上

大成建設は遠隔巡視システム「T-iRemote Inspection」を開発しました。機動力に優れたロボットにカメラと双方向コミュニケーション機能を搭載し、時間や場所にとらわれない巡視業務を実現しています。作業員のウェアラブル端末と組み合わせることで、健康状態のモニタリングも可能です。ソフトバンクとの協力で5G通信による建設機械の無人化施工実験も実施しています。

【中小企業】平山建設:クラウド活用による業務効率化

茨城県の平山建設(従業員約76名)は、中小企業ならではのアプローチでDXを推進しています。Google Workspaceを活用したDX教育と推進、クラウドベースのコミュニケーションツールによる電話・移動・手戻りの削減、施工管理アプリ「ANDPAD」の導入など、身近なところからデータ活用を進め、労働生産性を向上させています。DXにより現場従事者の勤務形態をシフト制に移行し、働き方改革も実現しました。

【中小企業】施工管理アプリ導入事例

ある電気工事会社では、施工管理アプリの導入により、デジカメや黒板が不要になり、現場に持っていく荷物がiPad一台に集約されました。クラウドで情報の一元化が実現し、確認や報告のための移動が不要に。常に担当者全員で最新の図面を共有できるようになりました。

建設DXを成功させるためのステップ

建設DXを効果的に進めるためには、段階的なアプローチと戦略的な計画が必要です。

ステップ1:現状把握と課題の明確化

まず、現場と事務所の業務プロセスを細かく洗い出し、どこに非効率や無駄が生じているかを分析します。業務フロー、使用システム、紙書類の量、通信環境、スキル分布などを調査し、「時間がかかる」「ミスが多い」「重複している」工程を特定します。経営課題(利益率・受注単価・労働時間など)との因果関係も可視化し、DXの投資根拠を明確にしましょう。

ステップ2:目的・ビジョンの設定

「DX推進後の理想の自社の姿」を明確に設定します。3〜5年後に「どの業務をどう変えるか」を言語化し、コスト削減率・工期短縮日数などの定量目標を設定します。目標が曖昧なままでは現場の納得が得られません。「デジタルツールの導入」自体を目標にするのではなく、会社の未来像から逆算してDXに取り組むことが重要です。

ステップ3:DX推進体制の構築

経営層のリーダーシップのもと、DX推進チームを編成します。各部門から人材を集め、現場の声を反映しながら全社的な視点でDX戦略を策定・推進する体制を整えましょう。DXを推進できる人材の確保・育成も並行して進める必要があります。

ステップ4:スモールスタートで段階的に導入

いきなり大規模な投資をするのではなく、まずは1つの事業所や特定の業務から段階的に着手します。施工管理アプリやクラウドサービスなど、導入ハードルの低いツールから始めるのがおすすめです。小さな成功体験を積み重ねることで、社内の理解と協力を得やすくなります。

ステップ5:効果測定と継続的改善

定期的にKPIの達成度をデータに基づいて評価します。ツールの利用率、削減できた残業時間、手戻りの件数などを測定し、目標が達成できていない場合は原因を分析して改善策を実行します。PDCAサイクルを回しながら継続的に改善を進めることが重要です。

建設DX成功のポイント

建設DXを成功させるために押さえておきたいポイントを解説します。

1. 経営層のコミットメント

DXは経営戦略そのものです。経営層がDX推進の重要性を理解し、リーダーシップを発揮することが不可欠です。現場任せにせず、トップダウンで推進する姿勢が求められます。

2. 現場目線での課題解決

DXは現場の課題を解決するための手段です。現場の声をしっかり聞き、実際に使う人が「便利になった」と実感できるツールや仕組みを導入することが重要です。

3. 人材育成・教育の充実

デジタル技術を導入しても、使いこなせる人材がいなければ効果は発揮されません。社内研修や教育プログラムを充実させ、特に高齢の作業員にも丁寧なフォローを行いましょう。

4. 協力会社との連携

建設業は重層下請構造であるため、自社だけでなく協力会社も含めてDXを進める必要があります。協力会社に負担をかけないツール選定や、共同での導入支援が効果的です。

5. 補助金・支援制度の活用

建設DXの推進には初期投資が必要ですが、IT導入補助金やものづくり補助金など、政府・自治体の支援制度を活用することで資金負担を軽減できます。IT導入補助金では最大350万円、ものづくり補助金では最大3,000万円の補助が受けられる場合があります。

よくある質問

Q. 建設DXは大企業だけのものですか?

A. いいえ。クラウド型の施工管理アプリなど、導入コストが低く、ネット環境があれば始められるツールも多くあります。中小企業でもスモールスタートでDXを進めることが可能です。実際に、従業員数十名規模の建設会社でもDXに成功している事例が多数報告されています。

Q. DX人材がいない場合はどうすればいいですか?

A. 外部のDXコンサルタントや専門ベンダーを活用する方法があります。また、既存社員へのリスキリング(再教育)も効果的です。国土交通省の地方整備局ではDX人材育成センターを設置し、研修や講習を行っています。

Q. 建設DXで最初に取り組むべきことは何ですか?

A. まずは施工管理アプリやクラウドサービスの導入がおすすめです。導入ハードルが低く、図面・工程表・写真の共有や日報作成の効率化など、すぐに効果を実感しやすい領域です。小さな成功を積み重ねてから、BIM/CIMやICT建機など、より高度な技術に取り組むのが効果的です。

Q. 建設DXの市場規模はどのくらいですか?

A. 矢野経済研究所の調査によると、2024年度の建設現場DX市場(自動化・遠隔操作・遠隔臨場・ドローン活用・建設用3Dプリンターの5分野計)は586億円と推計され、2030年度には1,250億円に達する見込みです。

まとめ

建設DXは、人手不足や長時間労働、生産性の低さといった建設業界の課題を解決するための重要な取り組みです。国土交通省も「i-Construction 2.0」を策定し、2040年度までに省人化3割・生産性1.5倍向上を目指して強力に推進しています。

建設DXのポイント

  • DXは単なるデジタル化ではなく、ビジネスモデル・業務プロセス全体の変革
  • BIM/CIM、ドローン、ICT建機、AI、クラウドサービスなど多様な技術を活用
  • 生産性向上、人手不足解消、安全性向上、技術継承、コスト削減など多くのメリット
  • 大企業だけでなく中小企業でもスモールスタートで取り組み可能
  • 経営層のコミットメント、現場目線での課題解決、人材育成が成功のカギ

建設DXは「ツールを入れる=完了」ではありません。自社の課題を洗い出し、段階的に変革を積み重ねることで初めて成果が定着します。まずは施工管理アプリの導入など、取り組みやすいところから第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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