147_工事注文書の_作成・保存・管理方法

工事注文書の作成・保存・管理方法【無料テンプレートあり】

目次

工事注文書とは

工事注文書は、建設工事を発注する際に発注者が受注者に対して交付する書類です。工事の内容や金額、納期、支払い条件などを明確に記載することで、発注の意思を正式に伝えます。

この記事では、工事注文書の役割から具体的な作成方法、記載項目、保存期間、管理方法まで詳しく解説します。すぐに使える無料テンプレートもご用意していますので、ぜひご活用ください。

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工事注文書の役割と必要性

工事注文書は単なる発注のための書類ではなく、建設業において重要な役割を担っています。

発注の意思を明確にする

工事注文書の最も重要な役割は、発注者が受注者に対して正式に工事を依頼する意思を示すことです。口頭での約束だけでは、「言った」「言わない」のトラブルが発生しやすくなります。

書面で発注内容を明確にすることで、受注者は安心して工事を進めることができます。

工事内容の認識のズレを防ぐ

工事注文書には、工事名、施工場所、工期、金額、支払い条件などの詳細が記載されます。これにより、発注者と受注者の間で工事内容についての認識を一致させることができ、後々のトラブルやクレームを未然に防ぐことができます。

取引の証拠として機能する

工事注文書は、取引の証拠書類としても機能します。万が一、工事に関する紛争が発生した場合、工事注文書は重要な証拠資料となります。また、税務調査の際にも取引を証明する書類として必要になります。

工事注文書と他の書類との違い

工事注文書と混同されやすい書類がいくつかあります。それぞれの違いを理解しておきましょう。

工事注文書と発注書の違い

工事注文書と発注書は、法律上の違いはありません。呼び方が異なるだけで、基本的に同じ書類です。

ただし、企業によっては以下のように使い分けている場合があります。

  • 注文書:有形のもの(材料、商品など)の注文に使用
  • 発注書:無形のもの(サービス、工事など)の発注に使用

取引先や自社のルールを確認し、適切な書類名を使用しましょう。

工事注文書と注文請書の違い

工事注文書と注文請書は、対になる書類ですが、作成者と役割が異なります。

書類名作成者役割
工事注文書発注者(注文する側)発注の意思を示す
注文請書受注者(注文を受ける側)受注の意思を示す

工事注文書を発行し、受注者が注文請書を返送することで、契約が成立したとみなされます。両方の書類を交換することで、発注者と受注者の双方に契約を履行する義務が生じます。

工事注文書と工事請負契約書の違い

工事請負契約書は、建設業法第19条で作成が義務付けられている契約書です。契約に関する重要事項(全15項目)を記載し、当事者双方が署名または記名押印して交付する必要があります。

一方、工事注文書は単独では法的効力を持たないことが多く、あくまで「注文の意思表示」の書類です。ただし、以下の場合は工事注文書でも契約書として扱われます。

  • 基本契約書を締結している場合の個別注文書
  • 見積書に対する申し込みであることが明記されている場合
  • 双方の署名・押印がある場合

工事注文書に記載すべき項目

工事注文書には決まった書式はありませんが、契約後のトラブルを防ぐために、以下の項目を記載することが推奨されます。

基本情報

項目内容
文書タイトル「工事注文書」「発注書」など
注文番号管理用の通し番号
発行日注文書を作成・発行した日付
宛名受注者(施工業者)の会社名・担当者名

発注者情報

項目内容
会社名発注者の正式な会社名
住所発注者の所在地
電話番号・FAX連絡先
担当者名発注担当者の氏名
メールアドレス連絡用メールアドレス

工事内容

項目内容
工事名工事の正式名称
工事内容施工範囲、仕様などの詳細
施工場所工事を行う場所の住所
工期着工日・完成予定日

金額・支払い条件

項目内容
工事金額税抜金額
消費税額消費税の金額
合計金額税込の総額
支払い条件支払い方法、支払い期日など

その他

項目内容
納入場所材料等の納入先
備考特記事項、注意点など

記載時の注意点

工事内容の記載にあたっては、以下の点に注意しましょう。

  • 「工事一式」のような曖昧な表現は避ける:施工範囲や責任区分が不明確になり、トラブルの原因となります
  • 具体的かつ詳細に記載する:第三者が見ても内容を理解できるように記載します
  • 施工条件を明確にする:受注者の責任施工範囲や施工条件は、誤解がないよう具体的に記載します

工事注文書の作成方法

工事注文書を作成する方法は主に3つあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に合った方法を選びましょう。

工事注文書 作成方法

手書きで作成する

最もシンプルな方法です。市販の注文書用紙を購入するか、自社で用紙を作成して手書きで記入します。

メリット:

  • パソコンが苦手な方でも作成できる
  • 特別なソフトやスキルが不要

デメリット:

  • 修正時は書き直しが必要
  • 保管・検索に手間がかかる
  • 字が読みにくい場合がある

エクセルで作成する

エクセルのテンプレートを使用して作成する方法です。多くの企業で採用されています。

メリット:

  • 計算機能を活用して税額や合計金額を自動計算できる
  • 修正が容易
  • テンプレートを再利用できる
  • データとして保存・検索が可能

デメリット:

  • テンプレート作成に時間がかかる
  • ファイル管理が煩雑になりやすい

施工管理システム・業務効率化ツールで作成する

施工管理システムや業務効率化ツールを使用する方法です。帳票作成から管理まで一元化できます。

メリット:

  • 案件情報と連携して自動入力が可能
  • 承認フローの管理ができる
  • 保管・検索が容易
  • 他の帳票(見積書、請求書など)との連携が可能

デメリット:

  • 初期費用・ランニングコストが発生する
  • システム移行に時間がかかる場合がある

工事注文書の無料テンプレート

工事注文書をすぐに作成したい方のために、エクセル形式の無料テンプレートのリンクを2種類ご用意しました。以下の項目が含まれており、自社の業務に合わせてカスタマイズしてお使いいただけます。

  1. マネーフォワードクラウド請求書:工事注文書テンプレート
  2. テンプレートBANK:工事注文書テンプレート

テンプレートの記載項目

  • 注文番号・発行日
  • 発注者情報(会社名、住所、電話番号、担当者名)
  • 受注者情報(宛名)
  • 工事名・工事内容・施工場所
  • 工期(着工日・完成予定日)
  • 工事金額・消費税・合計金額(自動計算機能付き)
  • 支払い条件
  • 備考欄

テンプレート使用時の注意点

  • 自社の社名・住所・連絡先を正確に入力してください
  • 工事内容は「一式」などの曖昧な表現を避け、具体的に記載してください
  • 金額は消費税の区分を明確にしてください
  • 発行前に記載内容に誤りがないか確認してください

工事注文書の保存期間

工事注文書は、法人税法上の「帳簿書類」に該当するため、法令で定められた期間保存する義務があります。

法人の場合

法人の場合、工事注文書の保存期間は確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。

ただし、以下の場合は保存期間が延長されます。

条件保存期間
通常7年間
欠損金が生じた事業年度(2018年4月1日以後開始)10年間
欠損金が生じた事業年度(2018年4月1日前開始)9年間

また、会社法では会計帳簿と関連する重要書類を10年間保存することとされています。「会計関連の書類は10年保管」と統一すれば管理しやすくなります。

個人事業主の場合

個人事業主の場合、工事注文書の保存期間は確定申告書の提出期限の翌日から5年間です。

青色申告・白色申告にかかわらず、保存期間は同じです。ただし、帳簿や現金預金取引等関係書類については7年間の保存が必要です。

保存期間を守らないとどうなるか

保存期間内に書類を廃棄してしまうと、税務調査の際に取引を証明できず、経費として認められていた費用が否認される可能性があります。その結果、追加の税金を支払うことになるケースもあります。

また、青色申告の承認が取り消される可能性もあるため、注意が必要です。

工事注文書の保存方法

工事注文書の保存方法は、紙での保存と電子データでの保存の2つがあります。2024年1月以降は電子帳簿保存法の改正により、保存方法のルールが変更されていますので注意が必要です。

紙で保存する場合

紙で発行・受領した工事注文書は、従来どおり紙のまま保存することができます。保存方法に法律上の細かなルールはありませんが、以下の点に注意しましょう。

  • 時系列順に整理する:年月日順にファイリングし、検索しやすくする
  • 取引先別に分類する:取引先ごとにファイルを分けて管理する
  • 保管場所を確保する:7年分以上の書類を保管するスペースが必要

電子データで保存する場合

電子帳簿保存法に基づき、工事注文書を電子データで保存することも可能です。保存方法は以下の3つに分類されます。

①電子取引データの保存(義務)

メールやクラウドサービスで授受した工事注文書は、電子データのまま保存することが義務付けられています(2024年1月1日より完全義務化)。紙に印刷して保存することはできません。

②スキャナ保存(任意)

紙で受領した工事注文書をスキャナで読み取り、電子データとして保存することができます。スキャナ保存を行えば、紙の原本は破棄しても問題ありません。

ただし、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。

③電子帳簿等保存(任意)

パソコンで作成した工事注文書を、最初から電子データとして保存する方法です。

電子保存の要件

電子データで保存する場合は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 検索機能の確保:「日付」「金額」「取引先」で検索できるようにする
  • 真実性の確保:タイムスタンプの付与、または訂正・削除履歴が残るシステムの使用
  • 可視性の確保:ディスプレイ・プリンタ等で速やかに出力できること

工事注文書の管理方法

工事注文書を適切に管理するためのポイントを紹介します。

工事注文書の管理方法

管理番号を付与する

各注文書に通し番号(注文番号)を付与することで、検索・管理が容易になります。番号体系の例としては以下のようなものがあります。

  • 年月+連番:202511-001、202511-002…
  • 取引先コード+連番:ABC-001、ABC-002…

台帳を作成する

発行した注文書の一覧を管理する台帳を作成しておくと便利です。台帳には以下の情報を記録しておきましょう。

  • 注文番号
  • 発行日
  • 取引先名
  • 工事名
  • 金額
  • 注文請書の受領日
  • 備考

ファイリング方法を統一する

社内でファイリング方法を統一することで、誰でも必要な書類をすぐに見つけられるようになります。以下のような方法があります。

  • 年度別+取引先別:年度ごとにフォルダを分け、その中で取引先別に整理
  • 工事案件別:工事ごとに関連書類をまとめて保管
  • 日付順:発行日順に時系列で保管

保存期限を管理する

保存期限が過ぎた書類は、適切に廃棄する必要があります。廃棄時期を管理するために、ファイルに保存期限のラベルを貼るなどの工夫をしましょう。

廃棄する際は、個人情報や取引情報が含まれているため、シュレッダー処理や溶解処理を行い、情報が読み取れない状態にしてから廃棄してください。

工事注文書作成時の注意点

工事注文書を作成する際に注意すべきポイントをまとめます。

記載ミスがあった場合の対応

工事注文書に記載ミスがあった場合は、原則として注文書を再発行します。

再発行が難しい場合は、以下の方法で訂正することも可能です。

  • 間違った箇所に二重線を引く
  • 正しい内容を記載する
  • 訂正印を押印する(注文書に押印した印鑑と同じものを使用)

ただし、取引先によっては訂正方法にルールがある場合がありますので、訂正前に確認しましょう。

収入印紙の要否

工事注文書は原則として収入印紙は不要です。工事注文書は「発注の意思表示」であり、それ単体では契約が成立しないためです。

ただし、以下の場合は課税文書に該当し、収入印紙が必要となります。

  • 基本契約書に基づく申し込みであることが記載されている場合
  • 見積書に対する申し込みであることが明記されている場合
  • 双方の署名・押印がある場合
  • 注文請書を兼ねている場合

なお、電子契約(PDF・メール等)で発行する場合は、収入印紙は不要です。印紙税法は紙の文書を課税対象としているためです。

本文は簡潔に

工事注文書の本文は必要最低限の文章で問題ありません。「下記の通り注文申し上げます。」程度の簡潔な表現で十分です。

文章が長くなると受注者がわかりにくくなるため、詳細な工事内容は明細欄に記載しましょう。

基本契約書との関係

継続的に取引がある場合は、あらかじめ基本契約書(取引基本契約書)を締結しておくことをおすすめします。

基本契約書で共通事項を取り決めておけば、個別の工事注文書では工事固有の事項(工事名、金額、工期など)のみを記載すればよくなり、書類作成の手間を軽減できます。

工事注文書に関するよくある質問

Q. 工事注文書は必ず作成しなければなりませんか?

工事注文書の発行自体は法律で義務付けられているわけではありません。ただし、トラブル防止のために作成することを強くおすすめします。なお、建設業法では工事請負契約書の作成が義務付けられていますので、注文書と請書の交換、または請負契約書の締結が必要です。

Q. 注文請書がなくても契約は成立しますか?

基本契約書で「注文書のみで契約成立」と定めている場合は、注文請書がなくても契約が成立します。ただし、トラブル防止のため、注文請書を受領することをおすすめします。

Q. 電子データで受け取った注文書を紙で保存してもよいですか?

2024年1月以降、電子取引で授受した書類は電子データのまま保存することが義務化されています。メールやクラウドサービスで受領した工事注文書を紙に印刷して保存することはできません。

Q. 工事注文書の保存期間を過ぎたら廃棄してもよいですか?

法定の保存期間を過ぎた書類は廃棄しても問題ありません。ただし、廃棄の際はシュレッダー処理や溶解処理を行い、情報が読み取れないようにしてから廃棄してください。

まとめ

この記事では、工事注文書の作成・保存・管理方法について解説しました。要点をまとめると以下のとおりです。

  • 工事注文書は発注者が受注者に対して発注の意思を示す書類
  • 記載項目は工事名、施工場所、工期、金額、支払い条件など具体的に記載
  • 保存期間は法人7年間、個人事業主5年間(確定申告書の提出期限の翌日から)
  • 電子取引の注文書は電子データのまま保存が義務(2024年1月~)
  • 収入印紙は原則不要だが、契約成立を示す場合は必要
  • 記載ミスは原則再発行、やむを得ない場合は二重線+訂正印で訂正

工事注文書は、発注内容を明確にし、トラブルを防止するための重要な書類です。正しい作成方法と管理方法を理解し、適切に運用しましょう。

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