ネットワーク式工程表とは?他の工程表との違いや書き方について解説!
公開日:2025.01.17
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建設業で用いられる工程表には、さまざまな種類があります。その中でも、特にネットワーク式工程表は、作業間の依存関係を明確に示し、全体のスケジュール管理を最適化する手法として知られています。本記事では、ネットワーク工程表の基本や、他の工程表との違い、「アロー型」など具体的な表現方法、そしてトータルフロートやフリーフロートなど重要な概念の「解き方」を含めた書き方のポイントをわかりやすく解説します。
1. ネットワーク式工程表とは?
ネットワーク式工程表(ネットワーク工程表)とは、各作業(活動)をノード(点)や矢印で表し、作業間の先行・後続関係を明確に示す工程表の形式です。代表的な手法として**アロー・ダイアグラム法(ADM)やプレシデンス・ダイアグラム法(PDM)**があり、PERT(Program Evaluation and Review Technique)やCPM(Critical Path Method)といった解析手法でも広く用いられます。
従来のバー(ガント)チャートや単純な表形式の工程表では、工程間の相互依存関係を明確に示すことが難しい一方、ネットワーク式工程表は**「この作業が終わらないと次の作業に着手できない」**といった制約を直感的に把握できます。
2. 他の工程表との違い
一般的な工程表としては、バー(ガント)チャートや累積曲線式、表形式の工程表が知られています。しかし、ネットワーク式工程表は以下の点でこれらと異なります。
- 依存関係重視:
バーチャートは時間軸上にタスクを並べることで進捗を把握しやすい反面、タスク間の依存関係を直接示すことが困難です。一方、ネットワーク工程表は作業間の関係を矢印やノードで明確に表現します。 - クリティカルパスの明確化:
ネットワーク工程表を用いると、プロジェクト全体の工期を決定する「クリティカルパス」を特定できます。クリティカルパス上の作業は遅れると全体工期に直接影響するため、管理上とても重要です。 - フリーフロート・トータルフロートの解析:
バーチャートでは分かりにくい「どの程度作業開始が遅れても全体に影響しないか」という余裕時間(浮き)の概念を、ネットワーク式では明確に計算できます。
3. アロー型ネットワーク工程表とは?
アロー型ネットワーク工程表(ADM: Arrow Diagram Method)は、作業を「矢印」で表す方式です。ノード(丸印やイベント点)は、作業の開始点・完了点を示し、矢印が実際の作業を表します。ADMでは以下の特徴があります。
- 作業は矢印で表され、ノードは作業の結合点
- 開始イベントと完了イベントを結ぶ矢印が作業を意味するため、一目で作業順序を把握しやすい
- ダミー作業(実作業がなく、依存関係のみを表す矢印)を導入することがあり、これによって複雑な依存関係も表現可能
一方で、最近ではプレシデンス・ダイアグラム法(PDM: Precedence Diagram Method)という、作業をノードで表し、矢印で依存関係を示す方法も普及しています。PDMの方が柔軟性が高く、ソフトウェアツールでも多く採用されていますが、アロー型ネットワーク工程表は古くから用いられてきた伝統的な手法です。
4. トータルフロートとフリーフロートとは?
ネットワーク工程表で重要な概念が、作業ごとの余裕時間である**トータルフロート(Total Float)とフリーフロート(Free Float)**です。
- トータルフロート(TF):
特定の作業が開始・終了時期をどれだけ遅らせても、プロジェクト全体の工期に影響を与えないで済む最大の遅延可能時間。トータルフロートが0の作業は、クリティカルパス上にあり、一切の遅れが許されません。 - フリーフロート(FF):
次の作業に影響を及ぼさずに、その作業自体をどれだけ遅らせられるかを示す値。要するに、後続作業開始に影響を与えない範囲での余裕時間です。
フリーフロートは、トータルフロートより限定的な観点で、直接続く後続作業にだけ着目した浮き時間を示します。
これらの浮き時間を把握することで、現場管理者やプロジェクトマネージャーはどの作業に注力すべきか、どこに余裕があり、どこに遅延が発生しても問題ないかを戦略的に判断できるようになります。
5. ネットワーク工程表の書き方のポイント
ネットワーク工程表を作成する際には、以下のステップとコツを押さえておくとスムーズです。
ステップ1:作業の洗い出しと依存関係の明確化
まずはプロジェクトを構成する全てのタスク(作業)をリストアップし、それらの前後関係を整理します。
- 「この作業はどの作業が終わったら着手できるのか?」
- 「同時並行で進められる作業はあるか?」
これらの関係を明確にすることで、ネットワーク工程表の土台ができます。
ステップ2:図式化
アロー型の場合、開始イベントから終了イベントへと作業(矢印)を配置し、依存関係が途切れないように注意します。ダミー作業を導入することもありますが、必要最小限にとどめて、図をシンプルに保つことが重要です。
ステップ3:所要期間の設定
各作業に必要な所要日数(または時間)を割り当て、開始・終了時点を想定します。この際、過去実績や見積もり精度に注意し、現実的な期間設定を行います。
ステップ4:トータルフロート・フリーフロートの計算
ネットワーク工程表を完成させたら、前進計算(Forward Pass)・後進計算(Backward Pass)を行い、クリティカルパスやフロート値を求めます。計算手順は以下の通りです。
- 前進計算(Forward Pass):
開始ノードから順に、早最も早く開始できる時期(ES: Earliest Start)と早最も早く完了できる時期(EF: Earliest Finish)を求めます。 - 後進計算(Backward Pass):
終了ノードから逆向きに、最も遅く開始できる時期(LS: Latest Start)と最も遅く完了できる時期(LF: Latest Finish)を求めます。 - トータルフロート(TF)の算出:
TF = LS – ES (または LF – EF)
この値が0の作業群がクリティカルパスです。 - フリーフロート(FF)の算出:
後続作業のESに対して余裕がどれほどあるかを計算します。
FF = 後続作業のES – 現行作業のEF
計算結果をもとに、どの作業が本当に遅延に厳しいかを判断できます。
ステップ5:見やすいレイアウト・定期的な更新
ネットワーク式工程表は、複雑なプロジェクトになるほどノード・アローが増え、見づらくなりがちです。
- 無駄なダミー作業を削減
- 適度な余白や補足説明を入れる
- 適宜更新や再計算を行い、変化に対応
これらの工夫によって常に「使える」工程表として機能させましょう。
6. 問題に対する「解き方」の例
ネットワーク工程表に関する問題として、「クリティカルパスを求めよ」「トータルフロートを計算せよ」「フリーフロートを求め、どの作業が余裕があるか説明せよ」といった問いがよくあります。
解き方のポイント:
- 全作業のES/EF、LS/LFを算出する
- トータルフロートが0の作業列がクリティカルパス
- FFの値を求めて、各作業の余裕を判断する
この手順をきちんと踏めば、どんな問題でも本質は同じです。
7. ツールの活用
現在では、ネットワーク工程表を手作業で描く代わりに、プロジェクト管理ソフトウェアを活用することが一般的です無料・有料問わず多数のWebツールが存在します。
- 自動でクリティカルパス解析
- グラフィカルなGUIで作業の追加・削除が容易
- 計画変更時も自動再計算
これらのツールを活用することで、ネットワーク式工程表の作成・更新が容易になり、プロジェクト進行管理がスムーズになります。
8. まとめ
ネットワーク工程表は、プロジェクトの複雑な作業関係を明確にし、トータルフロートやフリーフロートの「解き方」を通じて、どの工程が重要で、どこに余裕があるかを直感的に把握できる強力なツールです。アロー型ネットワーク工程表をはじめ、さまざまな手法が存在するため、プロジェクトの性質やチームの経験値に合わせて選択してください。
本記事のポイント:
- ネットワーク式工程表は、作業間依存関係を明確化し、クリティカルパスを特定可能
- バーチャートなど他の工程表にはない、フリーフロート・トータルフロートなどの余裕時間分析ができる
- アロー型(ADM)やPDMなど表現方法は複数あり、ツール活用で効率化可能
ネットワーク工程表をマスターすれば、複雑なプロジェクトでも的確な判断と効率的なスケジュール管理が実現できます。ぜひ、今回紹介した方法や概念を参考に、あなたのプロジェクト管理に役立ててみてください。
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