ネットワーク式工程表の作成方法とは?無料エクセルテンプレートの紹介。
公開日:2025.01.17
▼ 目次
施工管理において、プロジェクトのスムーズな進行を確保するためには、詳細かつ正確な工程表の作成が不可欠です。その中でも「ネットワーク式工程表」は、複雑なプロジェクトの工程を視覚的に整理し、効率的な管理を可能にする強力なツールです。本記事では、ネットワーク式工程表の基本的な作成方法、解き方の紹介を通じて、施工管理における効果的なスケジュール管理をサポートします。
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[1] ネットワーク式工程表とは?
ネットワーク式工程表は、プロジェクトの各工程の順序や依存関係を視覚的に表現した図表です。主にアロー型(矢印図)とノード型(ボックス図)の2種類が存在し、プロジェクト全体の流れを一目で把握することができます。この工程表を活用することで、クリティカルパスやトータルフロート、フリーフロートといったスケジュール管理の重要要素を明確に把握し、プロジェクトの進行を効果的に管理できます。
アロー型とノード型の違い
タイプ | 特徴 | 利点 | 適用例 |
---|---|---|---|
アロー型(矢印図) | 工程間の依存関係を矢印で表現 | 視覚的に分かりやすく、工程の流れが直感的に理解できる | 小〜中規模プロジェクト |
ノード型(ボックス図) | 工程をボックスで表し、依存関係を線で繋ぐ | 複雑なプロジェクトでも詳細な関係性を表現可能 | 大規模で複雑なプロジェクト |
[2] ネットワーク式工程表のメリット
視覚的な理解
ネットワーク式工程表は、各工程の関係性や順序を視覚的に表現するため、プロジェクト全体の流れを一目で把握することができます。これにより、関係者全員が同じ認識を持ちやすくなり、コミュニケーションの円滑化が図れます。
クリティカルパスの明確化
クリティカルパスとは、プロジェクト完了までに遅延が許されない重要な工程の連なりを指します。ネットワーク式工程表を用いることで、クリティカルパスを明確に特定でき、遅延リスクの高い工程に優先的にリソースを配分することが可能です。
柔軟な調整
工程間の依存関係が明確に示されているため、スケジュールの調整が容易になります。例えば、ある工程が遅延した場合でも、その影響を最小限に抑えるための調整がしやすくなります。
[3] ネットワーク式工程表の基本的な書き方
ネットワーク式工程表を作成する際には、以下のステップに従って進めることが一般的です。
1. 工程の洗い出し
プロジェクトに含まれるすべての工程をリストアップします。施工管理の場合、現場の準備、基礎工事、建築工事、仕上げ工事など、各段階の詳細な工程を明確にすることが重要です。
2. 工程間の依存関係の設定
各工程の前後関係を定義します。例えば、基礎工事が完了しないと建築工事を開始できないなど、工程間の連携を明確にします。
3. 工程図の作成
エクセルや専用ソフトを使用して、アロー型やノード型の工程図を作成します。エクセルでは、セルを活用して工程を図示し、矢印で依存関係を示します。以下に、エクセルを用いた簡単なアロー型工程図の例を示します。
工程 | 開始日 | 終了日 | 前工程 |
---|---|---|---|
現場準備 | 2024/01/01 | 2024/01/07 | – |
基礎工事 | 2024/01/08 | 2024/01/21 | 現場準備 |
建築工事 | 2024/01/22 | 2024/03/15 | 基礎工事 |
仕上げ工事 | 2024/03/16 | 2024/04/30 | 建築工事 |
4. クリティカルパスの特定
クリティカルパスを特定することで、プロジェクト完了までに遅延が許されない重要な工程の連なりを把握できます。以下は、クリティカルパスの特定手順の概要です。
- 各工程の所要時間を計算。
- 工程間の依存関係を考慮し、プロジェクト全体の所要時間を算出。
- 最も長い経路がクリティカルパスとなる。
5. トータルフロートとフリーフロートの計算
フロートの種類 | 定義 | 活用方法 |
---|---|---|
トータルフロート | クリティカルパスに影響を与えない範囲での工程の遅延許容量 | プロジェクト全体のスケジュール調整に活用 |
フリーフロート | 特定の工程が次の工程に影響を与えずに遅延できる範囲 | 各工程のスケジュール最適化に活用 |
これらを計算することで、各工程のスケジュール調整が可能になり、柔軟なプロジェクト管理が実現します。
[4] ネットワーク式工程表の解き方
ネットワーク式工程表を効果的に活用するためには、以下のステップでスケジュールを管理します。
1. 工程の順序確認
各工程の開始と終了の順序を確認します。これにより、プロジェクト全体の流れを理解しやすくなります。
2. クリティカルパスの確認
クリティカルパス上の工程に注力します。これらの工程が遅延すると、プロジェクト全体の完了が遅れる可能性が高いため、優先的に管理します。
3. 進捗の追跡
定期的に進捗を確認し、予定と実績のズレを調整します。これにより、遅延を早期に発見し、適切な対応を取ることができます。
4. フロートの活用
トータルフロートやフリーフロートを活用して、柔軟なスケジュール調整を行います。これにより、予期せぬ遅延に対するリスクを最小限に抑えることが可能です。
[5] ネットワーク式工程表を作成する際のポイント
ネットワーク式工程表を効果的に作成・活用するためには、以下のポイントに注意することが重要です。
アロー型とノード型の選択
プロジェクトの規模や複雑さに応じて、アロー型とノード型のどちらを選択するかを検討します。
- アロー型(矢印図): 小〜中規模のプロジェクトに適しており、視覚的に分かりやすいため、関係者全員が理解しやすい。
- ノード型(ボックス図): 大規模で複雑なプロジェクトに適しており、詳細な依存関係を表現するのに向いている。
カレンダー工程表との併用
ネットワーク式工程表とカレンダー工程表は、それぞれ異なる目的に適しています。ネットワーク式工程表は工程間の関係性に焦点を当て、プロジェクト全体の流れを把握するのに適しています。一方、カレンダー工程表は日付を基に工程を管理し、日々の進捗管理に適しています。両者を併用することで、より効果的なスケジュール管理が可能です。
[6] トータルフロートとフリーフロートの活用方法
トータルフロート
トータルフロートは、プロジェクト全体の完了日には影響を与えない範囲での工程の遅延許容量を指します。具体的には、以下のように活用します。
- スケジュール調整: トータルフロートを活用することで、プロジェクト全体のスケジュールを柔軟に調整できます。
- リスク管理: トータルフロートを把握することで、予期せぬ遅延に対するリスクヘッジが可能です。
フリーフロート
フリーフロートは、特定の工程が次の工程に影響を与えずに遅延できる範囲を指します。具体的な活用方法は以下の通りです。
- 工程の最適化: フリーフロートを適切に管理することで、各工程のスケジュールを最適化し、全体の効率を向上させます。
- リソース配分: フリーフロートを利用して、リソースを効率的に配分し、無駄を減らすことができます。
フロートの計算例
以下の表は、トータルフロートとフリーフロートの計算例を示しています。
工程 | 所要時間 | 最早開始日 | 最遅開始日 | トータルフロート | フリーフロート |
---|---|---|---|---|---|
A | 5日 | 1日 | 1日 | 0日 | 0日 |
B | 3日 | 6日 | 6日 | 0日 | 0日 |
C | 4日 | 9日 | 9日 | 0日 | 0日 |
D | 2日 | 13日 | 13日 | 0日 | 0日 |
E | 3日 | 15日 | 15日 | 0日 | 0日 |
注: この例では、すべての工程がクリティカルパス上にあり、トータルフロートとフリーフロートが0日となっています。
[7] 実施工程表の作成と問題解決
実施工程表の作成
実施工程表は、実際の施工現場での進捗をリアルタイムで反映するためのツールです。ネットワーク式工程表と連携させることで、計画と実績のギャップを迅速に把握し、適切な対応を取ることができます。実施工程表を作成する際のポイントは以下の通りです。
- 定期的な更新: 実際の進捗に基づいて工程表を定期的に更新し、最新の状況を反映させます。
- 現場との連携: 現場の担当者と連携し、正確な進捗情報を収集します。
- 問題の早期発見: 実施工程表を活用して、遅延や問題を早期に発見し、迅速に対応します。
よくある問題とその対策
施工管理においては、さまざまな問題が発生する可能性があります。以下に、よくある問題とその対策を示します。
問題 | 対策 |
---|---|
工程の漏れ | 工程をリストアップする際にチェックリストを活用し、全ての工程を網羅する。 |
依存関係の誤設定 | プロジェクトの専門家と連携し、正確な依存関係を設定する。 |
進捗管理の遅れ | 定期的なミーティングや進捗報告の仕組みを導入し、進捗を常に把握する。 |
リソース不足 | リソースの配分を見直し、必要に応じて追加リソースを確保する。 |
外部要因の影響 | 天候やサプライチェーンの変動など、外部要因に対するリスク管理を徹底する。 |
[8] ネットワーク式工程表と他の工程表の違い
カレンダー工程表との違い
項目 | ネットワーク式工程表 | カレンダー工程表 |
---|---|---|
フォーカス | 工程間の関係性や依存関係 | 日付を基にした進捗管理 |
視覚化 | アロー型やノード型の図表 | カレンダー形式 |
用途 | プロジェクト全体の流れの把握 | 日々の進捗確認やタスク管理 |
併用 | 両者を併用することで、全体と詳細の管理が可能 | 他の工程表と併用して使用 |
ネットワーク式工程表は、プロジェクト全体の流れや工程間の関係性に焦点を当てており、カレンダー工程表は日々の進捗管理に適しています。両者を併用することで、全体と詳細の両方を効果的に管理することが可能です。
まとめ
ネットワーク式工程表は、施工管理におけるプロジェクトの効率的な進行をサポートする重要なツールです。エクセルを活用した無料テンプレートを利用することで、初めての方でも簡単に作成・管理が可能です。また、トータルフロートやフリーフロート、クリティカルパスの理解を深めることで、プロジェクトの遅延リスクを最小限に抑えることができます。さらに、専用のアプリケーションを活用することで、より高度なプロジェクト管理が可能となります。ネットワーク式工程表を効果的に活用し、プロジェクトの成功に向けて一歩前進しましょう。