法定福利費とは

法定福利費とは?【建設業】計算方法・見積書の書き方を解説

「法定福利費って何?」「見積書にどう書けばいいの?」「計算方法がわからない」とお悩みの建設業者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、法定福利費の基本から計算方法、見積書への書き方までを徹底解説します。2025年最新の保険料率や、労務費×約16%で簡単に概算できる方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

法定福利費とは?

法定福利費とは、法律によって企業が負担を義務付けられている福利厚生費用のことです。健康保険法や厚生年金保険法などの法律に基づき、従業員を雇用する企業は必ず支払わなければなりません。

具体的には、以下の6種類の保険料・拠出金が法定福利費に該当します。

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 介護保険料(40歳以上65歳未満が対象)
  • 雇用保険料
  • 労災保険料
  • 子ども・子育て拠出金

建設業では現場作業員のケガや事故のリスクが高いため、これらの社会保険への加入が特に重要視されています。

法定福利費と福利厚生費(法定外福利費)の違い

福利厚生費は「法定福利費」と「法定外福利費」の2種類に分けられます。

区分内容具体例
法定福利費法律で企業に負担が義務付けられている費用健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など
法定外福利費企業が任意で提供する費用通勤手当、住宅手当、社員旅行、慶弔見舞金など

法定福利費は支払わなければ法律違反となりますが、法定外福利費は企業の判断で自由に設定できます。見積書の諸経費として計上する際も、この区別を明確にしておくことが重要です。

建設業で法定福利費の見積書記載が必要な理由

建設業では、2013年(平成25年)から見積書に法定福利費を内訳として明示することが義務付けられています。この背景には、建設業界における社会保険未加入問題がありました。

従来、建設業界では「トン単価」「平米単価」といった総額での見積りが一般的で、法定福利費が含まれているかどうかが不明確でした。その結果、コスト削減のために社会保険に加入しない下請業者が多く存在し、労働者の保護が不十分な状態が続いていました。

国土交通省の調査によれば、2019年時点で建設業界の社会保険加入率は97%超まで改善しています。これは、法定福利費の見積書明示を義務付けたことで、未加入の業者は仕事を受注しにくくなったためです。

詳しい見積書の作成方法については「建設業の見積書を書く方法」もご参照ください。

法定福利費の対象となる6つの保険

法定福利費の対象となる保険について、それぞれの内容と2025年度の保険料率を解説します。

①健康保険料

健康保険は、業務外での病気やケガの治療費を補助する制度です。協会けんぽ(全国健康保険協会)や建設業の健康保険組合に加入します。

2025年度の保険料率:約10%(都道府県により異なる)
事業主負担分:約5%(労使折半)

②厚生年金保険料

厚生年金保険は、老齢・障害・死亡に対する給付を行う制度です。将来の年金受給額に直結する重要な保険です。

2025年度の保険料率:18.3%
事業主負担分:9.15%(労使折半)

③介護保険料

介護保険は、40歳以上65歳未満の方が対象で、介護サービスを受ける際に適用されます。

2025年度の保険料率:1.60%
事業主負担分:0.80%(労使折半)

④雇用保険料

雇用保険は、失業時の給付や育児・介護休業給付などを行う制度です。建設業は一般事業と比べて料率が高く設定されています。

2025年度の保険料率(建設業):1.85%
事業主負担分:1.10%

⑤労災保険料

労災保険は、業務中や通勤中のケガ・病気に対して給付を行う制度です。建設業では特に重要な保険で、保険料は全額事業主負担となります。

2025年度の保険料率:工種により0.25%〜6.2%(全額事業主負担)

※労災保険料は工種によって大きく異なるため、見積書作成時は含めないことが一般的です。

⑥子ども・子育て拠出金

子ども・子育て拠出金は、国や自治体の子育て支援サービスのために徴収される費用です。従業員に子どもがいるかどうかに関係なく、厚生年金加入者全員が対象となります。

2025年度の拠出金率:0.36%(全額事業主負担)

法定福利費の計算方法

法定福利費の計算方法は、大きく分けて「簡易計算(概算)」と「詳細計算」の2種類があります。

簡易計算:労務費×約16%でざっくり算出

建設業における法定福利費のざっくりとした計算式は以下の通りです。

法定福利費 = 労務費 × 16.5%

この16.5%は、以下の事業主負担分の合計から算出されています。

保険の種類事業主負担率
健康保険料約5.0%
厚生年金保険料約9.15%
介護保険料約0.80%
雇用保険料(建設業)約1.10%
子ども・子育て拠出金約0.36%
合計約16.4%

※労災保険料は工種により異なるため、見積段階では含めないのが一般的です。

例えば、労務費が100万円の場合:
法定福利費 = 100万円 × 16.5% = 16.5万円

なお、従業員の年齢構成によって介護保険料の加入率が変わるため、40歳以上の従業員が多い場合は18%程度になることもあります。

詳細計算:各保険料率を使って正確に算出

正確な法定福利費を算出する場合は、以下の手順で計算します。

ステップ①:労務費を算出する

労務費は「人工数 × 平均日額賃金」で計算します。

計算例:
平均日額賃金:20,000円
必要人工数:50人工
労務費 = 20,000円 × 50人工 = 1,000,000円

労務費の詳しい計算方法は「労務費の計算方法」をご覧ください。

ステップ②:各保険料を計算する

労務費100万円の場合の計算例(2025年度の料率を使用):

保険の種類事業主負担率金額
健康保険料5.0%50,000円
厚生年金保険料9.15%91,500円
介護保険料0.80%8,000円
雇用保険料1.10%11,000円
子ども・子育て拠出金0.36%3,600円
法定福利費 合計16.41%164,100円

人工代の詳しい計算方法については「人工代の見積もり方法」も参考にしてください。

法定福利費を明示した見積書の書き方

法定福利費を内訳明示した見積書の書き方について、具体例とともに解説します。

見積書への記載ポイント

法定福利費を見積書に記載する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 工事費と法定福利費は別々に記載する:「工事請負料」として一括で記載するのはNG
  • 事業主負担分のみを記載する:労働者負担分は含めない
  • 労務費率・保険料率を明記する:概算で計算した場合は率を記載
  • 法定福利費も消費税の対象となる:税込金額の計算に含める

見積書の記載例

以下は、内装工事を例にした見積書の内訳記載例です。

項目金額
【A工事費】
 材料費500,000円
 労務費800,000円
 経費200,000円
 工事費計1,500,000円
【B法定福利費】
 健康保険料(5.0%)40,000円
 厚生年金保険料(9.15%)73,200円
 雇用保険料(1.10%)8,800円
 介護保険料(0.80%)6,400円
 子ども・子育て拠出金(0.36%)2,880円
 法定福利費計131,280円
見積金額(税抜)1,631,280円
消費税(10%)163,128円
見積金額(税込)1,794,408円

※労務費800,000円に対して各保険料率を乗じて法定福利費を算出しています。

法定福利費に関する注意点

注意点①:保険料率は毎年変わる

健康保険料率や雇用保険料率は年度ごとに改定されます。特に雇用保険料率は近年引き上げ傾向にあり、2023年度から2025年度にかけて事業主負担分が0.85%から1.10%に引き上げられました。

見積書作成時は、必ず最新の保険料率を確認してください。

注意点②:法定福利費の値引きはNG

国土交通省のガイドラインでは、法定福利費を値引き交渉の対象とすることは不適切な行為とされています。法定福利費の削減は建設業法違反となるリスクがあるため、元請・下請双方で注意が必要です。

注意点③:一人親方・小規模事業者の取り扱い

常時使用する労働者が5人未満の個人事業所や一人親方は、健康保険・厚生年金保険の「適用除外」となる場合があります。この場合、該当する保険の法定福利費は見積書から除外する必要があります。

ただし、見積段階では適用除外者を把握することが難しいため、全員加入を前提として算出し、契約時に調整するのが一般的です。

まとめ

本記事では、建設業における法定福利費の基本から計算方法、見積書の書き方までを解説しました。

法定福利費のポイント(まとめ):

  • 法定福利費とは:法律で義務付けられた社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)の事業主負担分
  • 簡易計算:労務費 × 約16.5%で概算可能
  • 見積書の記載:工事費とは別に内訳を明示する(2013年から義務化)
  • 注意点:保険料率は毎年変わる、値引き交渉はNG

法定福利費を適切に計上することは、従業員の福利厚生確保と企業の信用向上の両面で重要です。見積書作成の際は、最新の保険料率を確認し、正確な金額を算出しましょう。


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