065_仮設工事とは

仮設工事とは?共通仮設費と直接仮設工事の違い

「仮設工事って何?」「共通仮設費と直接仮設工事の違いがわからない」「見積書の仮設工事費が適正か判断できない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

仮設工事とは?共通仮設費と直接仮設工事の違い

仮設工事は工事完了後に撤去されるため、目に見える形で残らず説明が難しい項目です。しかし、安全かつ円滑に工事を進めるために欠かせない重要な工事です。

本記事では、仮設工事とは何かを基本から解説します。共通仮設費と直接仮設工事の違い、仮設工事の種類、積算方法まで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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仮設工事とは?

まず、仮設工事の基本を押さえましょう。

仮設工事の定義

仮設工事とは、建設工事を安全かつ円滑に進めるために設ける、一時的な施設や設備を設置する工事のことです。

英語では「Temporary works(一時的な作品)」と呼ばれ、工事完了後には全て撤去されます。建物本体を直接作る作業ではありませんが、どの現場においても欠かせない重要な工事です。

仮設工事の主な例

仮設工事には、以下のようなものが含まれます。

  • 仮設足場:高所作業を安全に行うための作業床
  • 仮囲い:工事現場の外周を囲う柵(防犯・安全対策)
  • 仮設電気:工事期間中に使用する電力設備
  • 仮設水道:工事用に設ける給排水設備
  • 仮設トイレ:作業員が使用するトイレ
  • 現場事務所:打合せや書類管理を行う仮設建物
  • 養生:仕上げ材や周辺環境を保護するシート等

仮設工事の重要性

仮設工事が重要な理由は以下の通りです。

理由1:作業員の安全確保

足場や仮設ネット、安全標識などにより、高所作業時の転落防止など労働災害を未然に防ぎます。

理由2:作業効率の向上

適切な足場や作業環境が整っていれば、職人がスムーズに作業を進めることができます。

理由3:近隣環境への配慮

仮囲いや防音シート、養生などにより、騒音・粉塵・景観への影響を最小限に抑えます。

理由4:防犯対策

仮囲いや警備により、工事現場への不法侵入や資材の盗難を防止します。

仮設工事の2つの分類

仮設工事は、「直接仮設工事」「共通仮設工事」の2種類に大別されます。

直接仮設工事と共通仮設工事の違い

項目直接仮設工事共通仮設工事
定義建物本体を建てるために直接必要な仮設工事工事全体を進めるために必要な仮設工事
工事との関係工事施工に直接関係する工事施工に間接的に関係する
主な項目足場、養生、墨出し、水盛・遣り方など現場事務所、仮囲い、仮設電気、仮設水道など
積算上の分類直接工事費に含まれる共通費(間接工事費)に含まれる
特徴特定の作業・工程に必要工事現場全体で共通して必要

簡単に言えば:

  • 直接仮設工事:「この作業をするために必要」な仮設
  • 共通仮設工事:「現場全体を運営するために必要」な仮設

直接仮設工事とは

直接仮設工事について詳しく解説します。

直接仮設工事の定義

直接仮設工事とは、建物本体を建てるために直接必要な足場や養生などの仮設物を設置・撤去する工事のことです。

作業や工程ごとに必要となる仮設で、直接工事費に含まれます。

直接仮設工事の主な項目

1. 水盛・遣り方(みずもり・やりかた)

建物の正確な位置や高さを決定するための作業です。基準となる地面の高さを決め、遣方杭を立てて板材でつなぎます。この作業が正確でないと、建物全体が傾く危険性があります。

2. 墨出し(すみだし)

床や壁、柱、天井などに工事中に必要な通り芯や高さの位置を線で記す作業です。大工道具の墨壺を使っていたことが名前の由来です。

3. 仮設足場

高所作業を安全に行うために設置する作業用の床や壁、階段です。労働安全衛生法で転落防止などの安全対策が義務付けられています。

4. 仮設ネット

足場の外側に設けるネットで、材料の転落防止や粉塵の飛散防止などの役割があります。

5. 養生(ようじょう)

仕上げ材を傷や汚れから保護するために施すシートやボードなどです。工事中の建物に対する養生は直接仮設に分類されます。

6. 現寸作業

図面だけでは表現しにくい複雑なデザインのために、現寸大の型板や定規などを作成する作業です。

7. 整理清掃

作業中および完成後の屋内整理清掃です。安全かつ効率的に作業を進めるために欠かせません。

直接仮設費の内訳一覧

項目内容
水盛・遣り方費建物の位置・高さを出すための作業費
墨出し費通り芯や高さの位置を記す作業費
足場費外部足場・内部足場の設置・撤去費
仮設ネット費落下防止・飛散防止ネットの設置費
養生費仕上げ材保護のためのシート等の設置費
現寸作業費型板・定規等の作成費
整理清掃費屋内の整理清掃作業費
安全設備費転落防止柵、幅木等の設置費

共通仮設工事(共通仮設費)とは

共通仮設工事について詳しく解説します。

共通仮設費の定義

共通仮設費とは、工事施工そのものには直接関係しないが、工事全体を進めるために必要となる仮設物の設置費用のことです。

現場事務所や仮囲い、仮設電気・水道など、工事現場全体で共通して必要となる設備が該当します。積算上は「共通費」に含まれる間接工事費です。

共通仮設費の内訳(8項目)

公共建築工事共通費積算基準では、共通仮設費は以下の8項目に分類されています。

1. 準備費

工事着工前の準備にかかる費用です。敷地の調査・測量・整地、道路占有のための準備、現状復旧などが含まれます。

2. 仮設建物費

現場事務所、監理事務所、倉庫、下小屋、作業員施設(休憩所・更衣室など)の設置・撤去にかかる費用です。

3. 工事施設費

仮囲い、工事用道路、歩道構台、場内通信設備などの設置費用です。近隣への騒音対策としての防音パネルも含まれます。

4. 環境安全費

交通誘導員の配置、現場周辺の安全標識、近隣への案内看板などの費用です。周辺環境への配慮と安全確保のために必要です。

5. 動力用水光熱費

工事用電力・用水の基本料金および使用料、仮設電気・仮設水道の設備費用です。

6. 屋外整理清掃費

現場の屋外部分の整理整頓や清掃作業にかかる費用です。

7. 機械器具費

測量機器など、工事全体で共通して使用する機械器具の費用です。

8. その他

上記に分類されないその他の共通仮設費用です。

共通仮設費の内訳一覧

項目主な内容
準備費調査、測量、整地、道路占有準備、現状復旧など
仮設建物費現場事務所、監理事務所、倉庫、下小屋、休憩所など
工事施設費仮囲い、工事用道路、歩道構台、防音パネル、場内通信設備など
環境安全費交通誘導員、安全標識、案内看板、近隣対策など
動力用水光熱費工事用電力、工事用水、仮設電気・水道設備など
屋外整理清掃費屋外の整理整頓、清掃作業など
機械器具費測量機器など共通使用の機械器具
その他上記以外の共通仮設費用

共通仮設費率に含まれない費用

以下の費用は共通仮設費率の計算には含まれず、別途積み上げて算定する必要があります。

  • 揚重機械器具費:クレーン等の荷揚げ機械の費用
  • 仮囲い費:敷地外周の仮囲い設置費用
  • 仮設トイレ費:仮設トイレの設置・維持費用

共通費・共通仮設費・直接仮設費の関係

積算における費用の構成を整理しましょう。

工事費の構成

工事費
├── 直接工事費
│   ├── 本体工事費(材料費、労務費など)
│   └── 直接仮設費(足場、養生、墨出しなど)
│
├── 共通費(間接工事費)
│   ├── 共通仮設費(現場事務所、仮囲い、仮設電気など)
│   ├── 現場管理費(現場監督の人件費など)
│   └── 一般管理費(本社経費、利益など)
│
└── 消費税等相当額

共通費と共通仮設費の違い

言葉が似ているため混同しやすいですが、以下のように異なります。

用語内容
共通費「共通仮設費」「現場管理費」「一般管理費」の3つを含む間接工事費の総称
共通仮設費共通費の一部。工事現場全体で必要な仮設物の費用

共通仮設費は共通費の一部であり、共通費のほうが広い概念です。

仮設工事の費用相場

仮設工事費の一般的な相場を解説します。

工事費全体に対する割合

仮設工事費の目安は、全体工事費の3〜5%が一般的です。

ただし、工事の規模や現場条件によって大きく変動します。

工事の種類仮設工事費の目安
一般的な住宅新築工事全体の2〜3%(15〜20万円程度)
中規模建築工事全体の3〜5%
大規模建築工事全体の5〜10%
マンション大規模修繕全体の約20%

費用が増減する要因

費用が増加する要因:

  • 工期が長期にわたる
  • 足場の面積が大きい
  • 高層建築物である
  • 敷地条件が悪い(狭小地、傾斜地など)
  • 近隣への配慮が多く必要

費用を抑えるポイント:

  • 工期の短縮
  • 仮設材のレンタル活用
  • 仮設材の再利用
  • 早期の計画・見積り

共通仮設費率の計算方法

共通仮設費の積算方法を解説します。

2つの算定方法

共通仮設費の算定方法には、以下の2つがあります。

方法1:積み上げ方式

8項目それぞれの費用を個別に算出し、合計する方法です。シンプルで分かりやすいですが、手間がかかります。

方法2:共通仮設費率を用いる方式

直接工事費に対する比率(共通仮設費率)を用いて算出する方法です。公共工事ではこちらが一般的です。

共通仮設費率とは

共通仮設費率(Kr)とは、直接工事費に対する共通仮設費の割合を示す指標です。

共通仮設費率(%) = (共通仮設費 ÷ 直接工事費) × 100

共通仮設費の計算式

共通仮設費は以下の計算式で算出します。

共通仮設費 = 直接工事費 × 共通仮設費率 + 共通仮設費率に含まれない費用

※共通仮設費率に含まれない費用(揚重機械器具費、仮囲い費など)は別途積み上げて加算します。

工事種類別の共通仮設費率算定式

国土交通省「公共建築工事共通費積算基準」に基づく算定式は以下の通りです。

工事の種類算定式直接工事費(P)の範囲
新営建築工事Kr = Exp(3.346 – 0.282 × loge P + 0.625 × loge T)1,000万円〜50億円
改修建築工事Kr = Exp(3.861 – 0.287 × loge P + 0.513 × loge T)300万円〜10億円
新営電気設備工事Kr = Exp(2.427 – 0.186 × loge P + 0.654 × loge T)1,000万円〜10億円
改修電気設備工事Kr = Exp(3.219 – 0.260 × loge P + 0.486 × loge T)300万円〜10億円
新営機械設備工事Kr = Exp(2.615 – 0.206 × loge P + 0.655 × loge T)1,000万円〜10億円
改修機械設備工事Kr = Exp(2.879 – 0.213 × loge P + 0.517 × loge T)300万円〜10億円

※P:直接工事費(千円)、T:工期(月)、loge:自然対数、Exp:指数関数

計算例

【新営建築工事の共通仮設費計算例】

条件:
・直接工事費(P):1億7,363万円(173,632.309千円)
・工期(T):10.3ヶ月

Step1:共通仮設費率(Kr)の計算
Kr = Exp(3.346 – 0.282 × loge(173,632.309) + 0.625 × loge(10.3))
Kr ≒ 11.52%

Step2:共通仮設費の計算
共通仮設費 = 173,632,309円 × 11.52%
         ≒ 20,002,442円

Step3:共通仮設費率に含まれない費用を加算
共通仮設費 = 20,002,442円 + 揚重機械器具費 + 仮囲い費 等

見積書への仮設工事の記載ポイント

見積書に仮設工事を記載する際のポイントを解説します。

記載方法のパターン

仮設工事費の記載方法は会社によって異なりますが、主に以下のパターンがあります。

記載方法特徴
一式仮設工事を一括で計上。シンプルだが内訳が不明確
㎡単価足場面積などで計算。面積に応じた費用が分かりやすい
人工人件費ベースで計算。作業量が分かりやすい
項目別各項目を詳細に記載。内訳が明確で比較しやすい

見積書記載例(項目別)

【直接仮設工事】

項目数量単位単価金額
水盛・遣り方150,00050,000
墨出し180,00080,000
外部足場3001,200360,000
足場養生ネット30030090,000
内部養生1100,000100,000
整理清掃1120,000120,000
直接仮設工事 計800,000

【共通仮設工事】

項目数量単位単価金額
仮設電気180,00080,000
仮設水道160,00060,000
仮設トイレ3ヶ月30,00090,000
仮囲い50m3,000150,000
現場事務所3ヶ月50,000150,000
近隣対策費150,00050,000
共通仮設工事 計580,000

見積書チェックのポイント

ポイント1:本体価格に含まれているか確認

ハウスメーカーによっては、仮設工事費を本体価格とは別扱いにしている場合があります。坪単価を安く見せるためのテクニックなので、見積り比較の際は注意が必要です。

ポイント2:全体工事費との割合をチェック

仮設工事費が全体の3〜5%程度に収まっているか確認しましょう。極端に高い・低い場合は内訳を確認することをおすすめします。

ポイント3:内訳の妥当性を確認

足場面積や工期に対して、各項目の金額が妥当かどうかをチェックします。

仮設工事の手順

仮設工事の一般的な手順を紹介します。

仮設工事の流れ

作業内容備考
打合せ・計画安全対策、予算の確認
現地調査敷地面積、周辺環境、交通状況の確認
見積り作成施工計画、工程、費用の算出
近隣挨拶工事案内の配布
整地地面を整え、石や草木を除去
仮設トイレ設置最初に設置
仮設電気・水道申請が必要(1ヶ月程度かかる場合あり)
地縄張り建物の位置を確認
水盛・遣り方建物の正確な位置・高さを出す
仮囲い設置敷地外周を囲う
現場事務所設置打合せ・書類管理の場所
足場設置本体工事の開始に合わせて

仮設工事の注意点

仮設工事を行う際の注意点を解説します。

注意点1:許可申請を忘れない

仮設電気・水道の引込みには申請が必要で、使用できるまでに1ヶ月程度かかる場合があります。余裕を持って手続きを進めましょう。

注意点2:安全対策を最優先に

仮設足場の組み方は、安全性や作業効率に大きく影響します。労働安全衛生法に基づく安全対策を徹底しましょう。

注意点3:近隣への配慮を忘れない

工事前の近隣挨拶、騒音・振動対策、工事車両の駐車など、周辺環境への配慮が重要です。

注意点4:廃材処理は法令遵守

建設現場から出る廃材は産業廃棄物として、廃棄物処理法に基づき適正に処分する必要があります。不正処理には厳しい罰則があります。

まとめ

仮設工事について、共通仮設費と直接仮設工事の違いを解説しました。

本記事のポイント:

  • 仮設工事:工事を安全・円滑に進めるための一時的な施設・設備を設置する工事
  • 直接仮設工事:建物本体を建てるために直接必要な仮設(足場、養生など)
  • 共通仮設工事:工事現場全体で必要な仮設(現場事務所、仮囲いなど)
  • 直接仮設費は直接工事費に、共通仮設費は共通費に含まれる
  • 仮設工事費の相場は全体工事費の3〜5%程度
  • 共通仮設費率は直接工事費と工期から算定式で計算

仮設工事は目に見える形で残らないため軽視されがちですが、安全で効率的な工事を支える重要な工事です。本記事を参考に、仮設工事への理解を深めてください。

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