「人手が足りなくて工期に間に合わない」「施工管理者の負担が大きすぎる」「若手が定着しない」。建設業界では深刻な人手不足が続いており、多くの企業が頭を悩ませています。

建設業の就業者数はピーク時の685万人から477万人まで減少し、有効求人倍率は5倍を超える異常な水準です。この人手不足問題は、単なる一時的な労働力不足ではなく、業界の持続可能性に関わる構造的課題となっています。
この記事では、建設業界の人手不足を解決するための具体的な方法を解説します。特に施工管理と現場監督の役割見直しに焦点を当て、DX推進や働き方改革のポイントを紹介します。
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建設業界の人手不足の現状
まず、建設業界の人手不足がどれほど深刻かを確認しましょう。
就業者数の推移
建設業の就業者数は、1997年の685万人をピークに減少し続けています。2025年現在は477万人まで減少し、ピーク時から約200万人も減少しました。
一方で、インフラの老朽化対応や災害復旧など、建設業の需要は今後さらに高まると予想されています。需要と供給のギャップは広がる一方です。
有効求人倍率の異常な高さ
建設業の有効求人倍率は5.04倍という極めて高い水準で推移しています。これは、1人の求職者に対して5件以上の求人があることを意味し、人材の獲得競争が激化しています。
高齢化の進行
建設業界では高齢化が急速に進行しています。
- 1997年:29歳以下が約22%、55歳以上が約24%
- 2025年現在:29歳以下が約11%、55歳以上が約34%
ベテランの大量退職が進む中、若手の入職が追いつかない状況が続いています。
人手不足が起こる3つの原因
建設業界で人手不足が深刻化している原因を3つ解説します。
原因1:労働環境と業界イメージの問題
建設業は「3K(きつい・きたない・危険)」というイメージが根強く残っています。若い世代は合理的な考え方をする人が多いため、こうしたイメージが敬遠される要因となっています。
また、長時間労働が慢性化しており、建設業の年間総実労働時間は全産業平均より約300時間以上も多い状況です。週休二日制の導入も他産業に比べて遅れています。
原因2:施工管理者の業務負担の大きさ
施工管理者(現場監督)の業務負担が過大であることも大きな問題です。施工管理者は以下のような多岐にわたる業務を担当しています。
- 工程管理:スケジュール調整、進捗管理
- 品質管理:検査、写真撮影、記録作成
- 安全管理:安全パトロール、安全書類作成
- 原価管理:予算管理、発注管理
- 書類作成:日報、報告書、各種申請書
- 協力会社との調整:打ち合わせ、指示出し
これらの業務をこなすために、現場作業後に事務所で書類作成を行い、長時間労働になるケースが多く見られます。
原因3:人材育成・定着の仕組み不足
キャリアアップの仕組みや資格取得のサポートなど、継続的な人材確保策が不足しています。また、熟練技術の継承に時間がかかることも、若手の定着を妨げる要因となっています。
人手不足を解決する5つの方法
建設業界の人手不足を解決するための具体的な方法を5つ紹介します。
解決策1:施工管理の役割見直しと業務効率化
人手不足解決の鍵は、施工管理者の業務を見直し、負担を軽減することです。施工管理者が本来注力すべき業務と、効率化・自動化できる業務を明確に分けましょう。
【施工管理者が注力すべき業務】
- 現場での安全管理・品質管理
- 協力会社との重要な調整
- 問題発生時の判断・対応
- 若手の指導・育成
【効率化・自動化できる業務】
- 日報・報告書の作成
- 工事写真の整理・台帳作成
- 工程表の共有・更新
- 勤怠管理・出面管理
- 定型的な書類作成
施工管理アプリやクラウドシステムを導入することで、後者の業務を大幅に効率化できます。
解決策2:DX推進による業務効率化
建設DXの推進は、人手不足解決の最も効果的な方法のひとつです。デジタル技術を活用することで、限られた人材でも高い生産性を実現できます。
【建設DXで効率化できる業務】
| 業務 | 従来の方法 | DX後 |
|---|---|---|
| 日報作成 | 事務所で手書き・PC入力 | 現場でスマホ入力、自動集計 |
| 工事写真管理 | デジカメ撮影→PC整理→台帳作成 | アプリで撮影→自動整理→台帳自動作成 |
| 工程管理 | エクセルで作成→メール共有 | クラウドでリアルタイム共有 |
| 情報共有 | 電話・FAX・対面 | チャット・クラウド共有 |
| 勤怠管理 | タイムカード・手書き | スマホで打刻、自動集計 |
国土交通省が推進する「i-Construction」では、2025年度までに建設現場の生産性を2割程度向上させることを目標としています。
解決策3:働き方改革の実践
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。働き方改革を実践し、労働環境を改善することが人材確保につながります。
【時間外労働の上限規制】
- 原則:月45時間、年360時間
- 特別な事情がある場合でも:年720時間以内
- 単月100時間未満(休日労働を含む)
- 2〜6ヶ月平均で80時間以内(休日労働を含む)
【働き方改革の具体策】
- 週休二日制の導入:4週8休を目標に
- 適正な工期設定:無理のない工程計画
- 直行直帰の推進:現場から事務所に戻る手間を削減
- 有給休暇の取得促進:計画的な休暇取得
解決策4:人材育成・教育体制の強化
人材の定着と成長を図るためには、体系的な教育研修制度の構築が必要です。
【人材育成のポイント】
- 段階別研修プログラム:入社時、3ヶ月後、1年後などの節目で研修
- 実務OJT:現場での実践的な指導とフィードバック
- 資格取得支援:施工管理技士等の資格取得に向けた支援制度
- キャリアパスの明確化:将来の成長イメージを共有
また、熟練技術の継承にはデジタル技術の活用が有効です。AIやIoTを使って作業データを収集・分析し、技術の見える化・標準化を図ることで、熟練者でなくても同等の質を担保した作業ができるようになります。
解決策5:多様な人材の活用
従来の採用・雇用の枠にとらわれず、多様な人材を活用することも重要です。
【多様な人材活用の方法】
- 女性の活躍推進:女性が働きやすい環境整備
- シニア人材の活用:定年制度の見直し、経験を活かせる役割
- 外国人材の活用:技能実習生、特定技能制度の活用
- 異業種からの転職者:未経験者でも育成できる体制
施工管理の業務を効率化するツール
施工管理の業務効率化に役立つツールを紹介します。
施工管理アプリ
施工管理アプリを導入することで、以下の業務を効率化できます。
| 機能 | 効率化できる内容 |
|---|---|
| 案件管理 | 複数現場の情報を一元管理 |
| 工程管理 | 工程表の作成・共有・更新 |
| 工事写真管理 | 撮影・整理・台帳作成を効率化 |
| 日報・報告 | 現場からスマホで報告、自動集計 |
| 図面共有 | 最新図面をクラウドで共有 |
| チャット | 関係者間のコミュニケーション |
施工管理アプリを導入した企業では、書類作成時間の大幅削減や現場と事務所の往復削減といった効果が報告されています。
クラウド型管理システム

クラウド型管理システムを導入することで、以下の効果が期待できます。
- 業務時間短縮:書類作成・データ入力作業の自動化
- 情報共有の効率化:関係者間でのリアルタイム情報共有
- 品質向上:ヒューマンエラーの削減と標準化
- コスト削減:間接業務の効率化による人件費削減
- 働き方改革:場所を選ばない柔軟な勤務体制の実現
導入時のポイント
ツールを導入する際は、以下のポイントを意識しましょう。
- 操作が簡単なものを選ぶ:現場で使うため、ITに不慣れな人でも使えること
- 段階的に導入する:一度にすべてを変えず、少しずつ定着させる
- 現場の声を聞く:実際に使う人の意見を取り入れる
- サポート体制を確認する:導入後のサポートが充実しているか
人手不足解決に成功した事例
人手不足解決に成功した企業の事例を紹介します。
事例1:DX導入で残業時間を削減
ある建設会社では、施工管理アプリを導入し、日報や工事写真の管理をデジタル化しました。
【導入前の課題】
- 現場作業後に事務所で日報作成、残業が常態化
- 工事写真の整理に多くの時間を費やしていた
- 施工管理者の負担が大きく、離職率が高かった
【導入後の効果】
- 日報作成時間が大幅に短縮
- 写真整理の手間がなくなり、残業時間が削減
- 施工管理者の負担が軽減し、離職率が改善
事例2:働き方改革で若手定着率が向上
ある工務店では、働き方改革を推進し、週休二日制の導入と定年制度の見直しを行いました。
【取り組み内容】
- 週休二日制(4週8休)の導入
- 定年制度の廃止
- 介護フレックスタイムの導入
- ワークルールの明文化
【効果】
- 若手の定着率が向上
- 65歳を超える社員のモチベーションアップ
- 介護を理由とした離職を防止
今すぐ始められる人手不足対策チェックリスト
人手不足対策として、今すぐ始められる取り組みをチェックリストにまとめました。
【業務効率化】
- □ 施工管理者の業務内容を棚卸しする
- □ 効率化できる業務を特定する
- □ 施工管理アプリの導入を検討する
- □ 紙の書類をデジタル化する
【働き方改革】
- □ 残業時間を把握する
- □ 週休二日制の導入を検討する
- □ 直行直帰を推進する
- □ 有給休暇の取得状況を確認する
【人材育成】
- □ 教育研修制度を整備する
- □ 資格取得支援制度を設ける
- □ キャリアパスを明確にする
- □ メンター制度を導入する
まとめ
建設業界の人手不足は、単なる一時的な問題ではなく、業界全体の構造的課題です。しかし、この危機的状況は同時に業界変革の好機でもあります。
人手不足解決の5つのポイント:
- 施工管理の役割見直し:本来注力すべき業務と効率化できる業務を分ける
- DX推進:施工管理アプリやクラウドシステムで業務効率化
- 働き方改革:週休二日制、残業削減、直行直帰の推進
- 人材育成:体系的な教育研修制度、資格取得支援
- 多様な人材活用:女性、シニア、外国人材、異業種転職者
特に重要なのは、施工管理者の業務負担を軽減することです。施工管理アプリを導入して書類作成や写真管理を効率化することで、施工管理者が本来注力すべき業務に集中できるようになります。
人手不足の解決は一朝一夕にはいきませんが、今できることから始めていきましょう。

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