「建設業許可を取得したいが、何から始めればいいかわからない」「許可の要件を満たしているか不安」「申請手続きが複雑でよくわからない」。建設業許可の取得を検討している方の中には、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

建設業許可は、一定規模以上の建設工事を請け負うために必要な許可です。許可を取得することで、500万円以上の工事を受注できるだけでなく、取引先からの信頼向上にもつながります。
この記事では、建設業許可の要件と申請方法を完全ガイドとして解説します。許可の種類、必要な要件、申請の流れ、必要書類まで詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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建設業許可とは
建設業許可とは、建設業を営む事業者が取得する必要がある許可のことです。建設業法第3条で定められており、一定規模以上の建設工事を請け負う場合に必要となります。
建設業許可が必要な工事
以下の「軽微な建設工事」を超える工事を請け負う場合、建設業許可が必要です。
| 工事の種類 | 許可不要の範囲(軽微な工事) |
|---|---|
| 建築一式工事 | 1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事 |
| その他の工事 | 500万円未満 |
つまり、500万円以上(建築一式は1,500万円以上)の工事を請け負うには、建設業許可が必要です。
※請負代金には、注文者が提供した材料費や運送費も含まれます。また、契約を分割しても、実体として一つの工事とみなされる場合は合計額で判断されます。
建設業許可を取得するメリット
- 500万円以上の工事を受注できる
- 取引先からの信頼が向上する
- 公共工事の入札に参加できる(経営事項審査を受けた上で)
- 元請業者からの発注条件をクリアできる(下請の場合)
- 金融機関からの融資を受けやすくなる
建設業許可の種類
建設業許可には、いくつかの区分があります。自社に該当する許可を正しく把握しましょう。
知事許可と大臣許可
建設業許可は、営業所の所在地によって「知事許可」と「大臣許可」に分かれます。
| 許可の種類 | 条件 | 申請先 |
|---|---|---|
| 知事許可 | 1つの都道府県内にのみ営業所がある場合 | 都道府県知事 |
| 大臣許可 | 2つ以上の都道府県に営業所がある場合 | 国土交通大臣 |
※営業所とは、常時建設工事の請負契約を行う事務所のことです。工事現場の事務所や資材置き場は含まれません。
※知事許可でも、営業所のない他県での工事は可能です。
一般建設業と特定建設業
建設業許可は、下請契約の規模によって「一般建設業」と「特定建設業」に分かれます。
| 許可の種類 | 条件 |
|---|---|
| 一般建設業 | 下請に出す場合、下請代金の合計が4,500万円未満(建築一式は7,000万円未満) |
| 特定建設業 | 発注者から直接請け負った工事で、下請代金の合計が4,500万円以上(建築一式は7,000万円以上) |
特定建設業は、主に元請として大規模な工事を行う場合に必要です。要件も一般建設業より厳しくなっています。
29業種の区分
建設業許可は29業種に分類されており、請け負う工事の種類ごとに許可を取得する必要があります。
【一式工事(2業種)】
- 土木一式工事
- 建築一式工事
【専門工事(27業種)】
- 大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事、解体工事
※一式工事の許可を持っていても、専門工事を単独で請け負う場合は、その専門工事の許可が別途必要です。
建設業許可の要件【6つの要件】
建設業許可を取得するためには、以下の6つの要件をすべて満たす必要があります。
要件1:経営業務の管理責任者がいること
経営業務の管理責任者(経管)とは、建設業の経営経験を持つ人のことです。主たる営業所に常勤していることが必要です。
【経営業務管理責任者の要件】
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
- 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって、経営業務を補佐した経験を有する者
- 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって、経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者
※法人の場合は常勤の役員、個人事業主の場合は事業主本人が該当します。
要件2:専任技術者がいること
専任技術者とは、建設工事に関する専門的な知識・経験を持つ人のことです。営業所ごとに常勤で配置する必要があります。
【一般建設業の専任技術者の要件】
以下のいずれかに該当する者
- 許可を受けようとする業種に関する国家資格を有する者
- 許可を受けようとする業種に関する所定学科を卒業し、高卒で5年以上、大卒で3年以上の実務経験を有する者
- 許可を受けようとする業種に関する10年以上の実務経験を有する者
【特定建設業の専任技術者の要件】
特定建設業の場合は、より厳しい要件が求められます。
- 1級の国家資格を有する者
- 一般建設業の専任技術者の要件を満たし、かつ4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的な実務経験を有する者
要件3:財産的基礎があること
建設工事を請け負うためには、一定の財産的基礎または金銭的信用が必要です。
【一般建設業の財産的基礎の要件】
以下のいずれかに該当すること
- 自己資本が500万円以上ある
- 500万円以上の資金調達能力がある(金融機関の残高証明書等)
- 許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある
【特定建設業の財産的基礎の要件】
以下のすべてに該当すること
- 欠損の額が資本金の20%を超えていない
- 流動比率が75%以上
- 資本金が2,000万円以上
- 自己資本が4,000万円以上
要件4:営業所があること
独立した営業所があることが必要です。営業所とは、常時建設工事の請負契約を行う事務所のことです。
【営業所の要件】
- 契約締結等ができる事務所であること
- 電話・机・各種帳簿等があること
- 専任技術者が常勤していること
要件5:誠実性があること
請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者ではないことが必要です。
具体的には、法律に違反するような不正な行為や、請負契約に違反するような不誠実な行為がないことが求められます。
要件6:欠格要件に該当しないこと
欠格要件に該当する場合、他の要件を満たしていても許可を取得できません。
【主な欠格要件】
- 破産者で復権を得ていない者
- 建設業許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 建設業法、建築基準法、労働基準法等の規定に違反し、罰金刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
建設業許可取得の流れ【7ステップ】

建設業許可を取得するまでの流れを7つのステップで解説します。
ステップ1:取得する許可の種類を決める
まず、自社にとって取得すべき許可の種類を明確にします。
- 知事許可か大臣許可か:営業所の所在地で判断
- 一般建設業か特定建設業か:下請契約の規模で判断
- どの業種で取得するか:実際に行う工事の種類で判断
ステップ2:許可要件を満たしているか確認する
次に、6つの許可要件を満たしているか確認します。
- 経営業務管理責任者の要件を満たす人がいるか
- 専任技術者の要件を満たす人がいるか
- 財産的基礎の要件を満たしているか
- 営業所の要件を満たしているか
- 誠実性があるか
- 欠格要件に該当していないか
要件を満たしていない場合は、要件を満たす人を雇用するなどの対応が必要です。
ステップ3:申請書類の手引きを入手する
申請先の行政庁(都道府県または地方整備局)のホームページから「許可申請書の手引き」をダウンロードします。
都道府県によって独自の記載方法や書式がある場合があるため、必ず申請先のものを入手しましょう。
ステップ4:必要書類を収集・作成する
必要書類の収集・作成を行います。新規許可申請は作成すべき書類が多く、最も時間と労力がかかる作業です。
書類には有効期限があるものもあるため、スケジュールを把握して準備しましょう。
- 残高証明書:1ヶ月以内
- 登記簿謄本:3ヶ月以内
- 登記されていないことの証明書:3ヶ月以内
ステップ5:申請書類を提出する
書類が揃ったら、許可行政庁に申請書類を提出します。
- 知事許可:都道府県庁の建設業課等
- 大臣許可:主たる営業所の所在地を管轄する地方整備局
原則として正本1部と副本(写し)1部を提出します(行政庁により副本2部が必要な場合もあります)。
ステップ6:手数料を納付する
申請時に手数料を納付します。
| 申請区分 | 知事許可 | 大臣許可 |
|---|---|---|
| 新規申請 | 9万円 | 15万円 |
| 業種追加・更新 | 5万円 | 5万円 |
※知事許可は収入証紙、大臣許可は収入印紙で納付します。
ステップ7:審査・許可通知
申請後、審査が行われます。審査期間の目安は以下の通りです。
- 知事許可:約30日〜45日
- 大臣許可:約90日〜120日
許可が下りると、「許可通知書」がA4の紙で届きます。許可通知書は再発行されないため、大切に保管してください。
※いわゆる「金看板」は許可後に各自で準備する必要があります。
建設業許可申請に必要な書類
建設業許可申請に必要な主な書類を紹介します。
申請書類(自分で作成するもの)
- 建設業許可申請書
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 使用人数
- 誓約書
- 経営業務の管理責任者証明書
- 専任技術者証明書
- 実務経験証明書(実務経験で証明する場合)
- 財務諸表
- 営業の沿革
- 所属建設業者団体
- 健康保険等の加入状況
- 主要取引金融機関名
添付書類(公的機関等から取得するもの)
- 登記簿謄本(法人の場合)
- 定款(法人の場合)
- 身分証明書(役員・本人)
- 登記されていないことの証明書(役員・本人)
- 残高証明書または確定申告書
- 納税証明書
- 資格証明書(国家資格で専任技術者を証明する場合)
- 卒業証明書(学歴で専任技術者を証明する場合)
確認資料(自社で準備するもの)
- 確定申告書の写し
- 請負契約書、注文書、請求書等の写し(実務経験の証明用)
- 健康保険証の写し(常勤性の証明用)
- 営業所の写真
許可取得後に必要な手続き
建設業許可を取得した後も、以下の手続きが必要です。
更新手続き(5年ごと)
建設業許可の有効期間は5年間です。引き続き建設業を営む場合は、有効期限満了の30日前までに更新申請が必要です。
期限を過ぎると許可が失効し、新規で取り直しになるため、余裕をもって準備しましょう。
決算変更届(毎年)
毎事業年度終了後、4ヶ月以内に決算変更届(事業年度終了届)を提出する必要があります。
各種変更届
以下の事項に変更があった場合、届出が必要です。
- 商号・名称の変更
- 営業所の所在地の変更
- 役員の就任・退任
- 経営業務管理責任者の変更
- 専任技術者の変更
- 資本金の変更
建設業許可に関するよくある質問
Q1:個人事業主でも建設業許可は取得できますか?
A:はい、個人事業主(一人親方)でも建設業許可を取得できます。法人に比べて必要書類は少なくなりますが、要件を満たす必要があります。
Q2:許可取得までどのくらい時間がかかりますか?
A:書類の準備から許可取得まで、一般的に2〜4ヶ月程度かかります。書類の準備に1〜2ヶ月、審査に1〜3ヶ月が目安です。
Q3:行政書士に依頼した方がいいですか?
A:自分で申請することも可能ですが、書類作成が複雑で時間がかかるため、建設業専門の行政書士に依頼するのがおすすめです。法改正への対応やアドバイスも受けられます。
Q4:許可を取得した後、業種を追加できますか?
A:はい、業種追加申請を行うことで、新たな業種の許可を追加できます。追加する業種について、専任技術者の要件等を満たす必要があります。
まとめ
建設業許可は、500万円以上の工事を請け負うために必要な許可です。取得には6つの要件を満たし、所定の手続きを行う必要があります。
建設業許可の6つの要件:
- 経営業務の管理責任者がいること
- 専任技術者がいること
- 財産的基礎があること
- 営業所があること
- 誠実性があること
- 欠格要件に該当しないこと
許可取得の流れ:
- 取得する許可の種類を決める
- 許可要件を満たしているか確認する
- 申請書類の手引きを入手する
- 必要書類を収集・作成する
- 申請書類を提出する
- 手数料を納付する
- 審査・許可通知
許可取得後も、5年ごとの更新や毎年の決算変更届など、継続的な手続きが必要です。計画的に準備を進め、建設業許可を取得しましょう。

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