「工事完了報告書の書き方がわからない」「記載項目に漏れがないか不安」「記入例を参考にしたい」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、工事完了報告書の作成方法を詳しく解説します。必要な記載項目、具体的な記入例、提出時の注意点まで、工事完了報告書の作成に必要な情報を網羅しています。元請業者やお客様への報告に使える工事完了報告書の書き方をマスターしましょう。
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工事完了報告書とは?
工事完了報告書とは、工事が完了した際に、工事を請け負った業者が元請業者や発注者に提出する書類です。この書類を提出することで、契約通りに工事が完了したことを報告・確認することができます。
工事完了報告書には、施工内容や使用材料、工期、請負金額などを明確に記載します。発注者への引き渡しや請求手続きを円滑に進める役割があり、建設業界では欠かせない書類の一つです。
工事完了報告書が必要な理由
工事完了報告書が必要とされる主な理由は以下の通りです。
施工業者側の理由:
- 工事が問題なく完了したことを発注者に報告するため
- トラブル発生時に対応の経緯を示す証拠書類として活用するため
- 請求手続きの根拠資料とするため
発注者側の理由:
- 契約通りに工事が完了したかを確認するため
- 固定資産に計上するタイミングを判断する書類として活用するため
- 工事の品質や内容を記録として残すため
工事完了報告書の作成義務はある?
工事完了報告書の作成は、法律で義務付けられているわけではありません。しかし、工事後のトラブルを避けるために、元請業者や顧客から提出を求められた場合は作成するのが一般的です。
なお、官公庁から受注する場合は、あらかじめ提出が義務付けられていることが多いです。書式や提出時期が定められているケースが一般的なので、各自治体のホームページをよく確認しましょう。
作業完了報告書との違い
工事完了報告書とよく間違われやすい書類に「作業完了報告書」があります。
| 書類名 | 目的 | 提出先 |
|---|---|---|
| 工事完了報告書 | 工事の完了を発注者に報告 | 元請業者・発注者(社外) |
| 作業完了報告書 | 作業の完了を上司に報告 | 社内(上司など) |
どちらも完了を報告する書類ですが、提出先が異なります。混同しないように注意しましょう。
工事完了報告書の記載項目
工事完了報告書には様々な様式がありますが、記載する項目はほとんど同じです。ここでは、基本的な記載項目を解説します。
基本項目
| 項目 | 内容 | 記載のポイント |
|---|---|---|
| タイトル | 「工事完了報告書」と記載 | 書類の種類が明確にわかるように |
| 報告書番号 | 自社管理用の通し番号 | 年月日を頭につける方法も有効 |
| 作成日 | 報告書の作成日 | 取引の証明となる重要項目 |
| 宛名 | 請負元の業者名・発注者名 | 会社名は省略せず正式名称で記載 |
| 差出人 | 自社の正式名称 | 住所・電話番号・FAXも記載 |
| 押印 | 会社の角印 | 義務ではないが正式文書の証明に |
工事内容に関する項目
| 項目 | 内容 | 記載のポイント |
|---|---|---|
| 工事名 | 工事の名称 | 場所や業者名を入れ詳しく記載 |
| 工事場所 | 現場の住所・名称 | ビル名・店舗名なども記載 |
| 工事期間(工期) | 着工日〜完工日 | 複数日の場合は開始日と完了日を |
| 工事内容 | 具体的な施工内容 | どの部分をどのように工事したか |
| 請負金額 | 契約時の金額 | 消費税の内訳も明記 |
追加で必要になる項目
元請業者によっては、以下の項目も必要になる場合があります。
材料費明細:工事に使用した材料の費用明細です。購入時の納品書や領収書のコピーを添付することもあります。
経費明細:交通費やガソリン代、駐車場代などの経費です。※人件費ではない点に注意
工事完了写真:工事を行った証明となる写真です。特に修繕工事や改修工事の場合、工事前・工事後の写真が必要になります。
検査結果:検査を行った場合の結果を記載します。問題がなければ「合格」、問題があればその内容と対応状況を記載します。
特記事項:工期中の変更事項や追加対応などを記載します。
工事完了報告書の記入例
ここでは、工事完了報告書の具体的な記入例を紹介します。実際に作成する際の参考にしてください。
記入例①:リフォーム工事の場合
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工事完了報告書
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報告書番号:2025-0078
作成日:令和7年11月28日
株式会社○○建設 御中
下記の工事が完了しましたので、ご報告申し上げます。
【工事概要】
工事名称:△△邸 キッチンリフォーム工事
工事場所:東京都○○区△△町1-2-3
工事期間:令和7年11月15日 ~ 令和7年11月25日
【工事内容】
・システムキッチン撤去・新規設置
・キッチンパネル張替え
・床フローリング張替え(6㎡)
・給排水管接続工事
・電気配線工事(コンセント増設2箇所)
【請負金額】
合計金額:1,650,000円(税込)
内訳:本体工事費 1,200,000円
材料費 300,000円
消費税 150,000円
【完了状況】
工期内に全工程が完了しました。
発注者様立ち会いのもと、動作確認・品質検査を実施し、
問題なく完了しております。
株式会社□□工務店
〒000-0000
東京都□□区○○町0-0-0
TEL:03-0000-0000
担当:山田 太郎 ㊞
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記入例②:耐震補強工事の場合
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工事完了報告書
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報告書番号:KC-2025-0156
作成日:令和7年11月28日
○○株式会社 御中
下記の工事が完了しましたので、ご報告申し上げます。
【工事概要】
工事名称:○○ビル 耐震補強工事
工事場所:大阪府○○市△△1丁目2番3号
工事期間:令和7年10月1日 ~ 令和7年11月20日
【工事内容】
本工事は、○○ビルの耐震性能を向上させるための補強工事です。
RC壁の設置および耐震ボルトの増設を行いました。
施工詳細:
・耐震補強壁設置(1階:3箇所、2階:2箇所)
・鉄骨ブレース設置(1階~3階)
・基礎補強工事
・仕上げ復旧工事
【請負金額】
当初契約金額:18,500,000円(税抜)
変更後金額:19,200,000円(税抜)
最終金額:21,120,000円(税込)
※変更理由:発注者からの追加指示により、
耐震壁の一部を設計変更(承認済み)
【検査結果】
耐震性能は設計基準を満たしており、安全性が確認されました。
令和7年11月18日、発注者立ち会いのもと最終検査を完了しています。
【特記事項】
・工期中に発注者からの追加指示により、耐震壁の一部を
設計変更しましたが、全て計画内で対応済みです。
・完了写真を別途添付いたします。
株式会社△△建設
〒000-0000
大阪府○○市□□町0-0-0
TEL:06-0000-0000
FAX:06-0000-0001
現場代理人:佐藤 一郎 ㊞
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記入例③:設備工事の場合(経費明細付き)
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工事完了報告書
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報告書番号:2025-SE-0089
作成日:令和7年11月28日
○○電気工業株式会社 御中
【工事概要】
工事名称:□□店舗 空調設備設置工事
工事場所:愛知県○○市△△町1-1-1 ○○ビル2F
工事期間:令和7年11月20日 ~ 令和7年11月26日
【工事内容】
・業務用エアコン撤去(既存機2台)
・業務用エアコン新規設置(天井カセット型4方向 3台)
・冷媒配管工事
・ドレン配管工事
・電気配線工事
・試運転調整
【請負金額】
本体工事費:850,000円
【材料費明細】
品名 数量 単価 金額
─────────────────────────────────
業務用エアコン本体 3台 150,000円 450,000円
冷媒配管材 一式 35,000円 35,000円
ドレン配管材 一式 15,000円 15,000円
電気配線材 一式 20,000円 20,000円
その他消耗品 一式 10,000円 10,000円
─────────────────────────────────
材料費合計 530,000円
【経費明細】
項目 金額
─────────────────────────────────
交通費 8,000円
駐車場代 3,500円
廃棄物処理費 25,000円
─────────────────────────────────
経費合計 36,500円
【合計金額】
本体工事費 + 材料費 + 経費 = 1,416,500円
消費税(10%) = 141,650円
─────────────────────────────────
総合計 = 1,558,150円
有限会社○○設備
〒000-0000
愛知県○○市□□0-0-0
TEL:052-000-0000
担当:鈴木 健一 ㊞
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工事完了報告書の作成方法
工事完了報告書の作成方法には、主に以下の3つがあります。
方法①:元請業者の専用書式を使用する
元請業者が専用のフォーマットを用意している場合があります。工事を請け負う際に、事前に書式が渡されることが多いです。この場合は、指定の書式に必要事項を記入して提出します。
メリット:フォーマットが決まっているため、記載項目の漏れを防げる
デメリット:自社のフォーマットと異なるため、記入に慣れが必要
方法②:エクセルテンプレートを活用する
エクセルを使った工事完了報告書は、カスタマイズ性が高く、計算式も利用できるため、最も一般的な作成方法です。インターネット上で無料のテンプレートをダウンロードできます。
メリット:
- 無料で利用可能
- 自社の業務に合わせてカスタマイズできる
- 計算式を利用でき、金額の自動計算が可能
- レイアウトを自由に調整できる
デメリット:
- ファイル数が増えると管理が煩雑になる
- リアルタイムでの情報共有が難しい
- セキュリティ管理が個人に委ねられる
方法③:施工管理アプリを活用する
施工管理アプリの中には、工事完了報告書の作成機能が搭載されているものがあります。現場ごとに報告書を作成しやすく、クラウドを通じてデータ共有も可能です。
メリット:
- テンプレートが標準装備されており作成時間を短縮
- スマホ・タブレットから現場で作成可能
- 写真の添付が簡単
- 関係者との共有がスムーズ
- データの一元管理が可能
デメリット:
- 導入・運用コストがかかる
- 操作に慣れるまで時間がかかる場合がある
工事完了報告書の作成手順
工事完了報告書を作成する基本的な手順を解説します。
手順①:必要な情報・資料を準備する
報告書作成前に、必要な情報と資料を準備しましょう。
- 工事請負契約書
- 設計図書・仕様書
- 工事完了写真
- 材料の納品書・領収書
- 検査記録(検査を行った場合)
- 変更があった場合は変更内容の記録
手順②:基本情報を記入する
工事名、工事場所、発注者、請負者などの基本情報を正確に記入します。これらの情報は報告書を識別する上で非常に重要です。誤字脱字がないよう十分に注意しましょう。
手順③:工事内容・金額を記入する
工事期間には着工日と竣工日を正確に記入します。契約金額は工事契約書に記載されている金額を記入します。
工事内容は、設計図書に基づき具体的な作業内容を詳細に記述します。曖昧な表現は避け、具体的な数値や単位を用いて記述することが重要です。
変更があった場合は、「当初」「変更」「最終」というように、変わった部分を明確に記入するのがおすすめです。
手順④:検査結果・完了状況を記入する
検査結果には、検査記録に基づき問題なく完了したことを明確に記載します。問題があった場合は、その内容と対応状況を具体的に記述します。
手順⑤:確認・押印する
記載内容に誤りがないか確認し、担当者氏名、署名、捺印を行います。押印は義務ではありませんが、角印を押印することで正式な文書であることの証明につながります。
工事完了報告書作成時の注意点

工事完了報告書を作成する際の注意点を解説します。トラブルに発展しないよう、事前に確認しておきましょう。
注意点①:費用欄は人件費ではない
工事完了報告書における「費用欄」は、工事の際に発生する人件費を書く欄ではありません。交通費やガソリン代、駐車場代などの経費を記載する欄です。
人件費は請負金額に含まれるため、費用欄に記載する必要はありません。この点を誤解しているとトラブルの原因になるため、注意しましょう。
注意点②:金額の認識を事前に確認する
「金額」の部分で双方に食い違いが生じると、トラブルに発展しかねません。どこまでが請負金額に該当するのか、材料費を含めるのかなど、事前に確認しておくことが重要です。
特に注意すべき点:
- 消費税の記載方法(税込み・税抜き)
- 材料費の内訳が必要かどうか
- 変更があった場合の金額の記載方法
注意点③:工事写真の必要性を事前に確認する
元請業者によっては、工事完了写真の添付を求めるところがあります。この写真は工事を行った証明となるため、後々不備が見つかったときなどに活用されます。
特に修繕工事や改修工事の場合、工事前・工事後の写真を用意しなければなりません。工事写真が必要かどうかは、工事が始まる前の段階で確認しておきましょう。
注意点④:会社名は省略しない
宛名や差出人の会社名は、省略せずに正式名称で記載しましょう。「株式会社」を「(株)」と略したり、省略したりするのは避けます。正式な書類として認識されるためにも、正確な名称を使用することが重要です。
注意点⑤:提出期限を守る
工事完了報告書には提出期限が設けられていることが多いです。工事の規模が大きいほど作成に時間を要するため、余裕を持って作成しましょう。
提出期限がわからない場合は、元請業者にあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
工事完了報告書の提出方法と保管
提出方法
工事完了後、工事完了報告書を作成して元請業者に渡すのが一般的な提出方法です。
官公庁や大手建設業者の場合、それぞれが定める制定書式での提出を求められることがあるため注意しましょう。書式が決まっている場合は、各自治体や元請業者のホームページを確認してください。
また、工事完了報告書と一緒に以下の書類の提出を求められることもあります。
- 建物引渡に関する書類
- 建物完成状況に関する書類
- 工事完了写真
- 材料の納品書・領収書のコピー
保管期間
提出した工事完了報告書は、後で自分(自社)でも確認できるように控えを用意しておくとよいでしょう。
控えの保存期間に明確な定めはありませんが、建設業法施行規則第28条には「建設業者は営業所ごとに帳簿を備えつけて5年間保存しなければならない」という規定があります。5年間をひとつの目安とするとよいでしょう。
書類を破棄してしまうと、法令違反や工事の証明ができなくなるため注意が必要です。
工事完了報告書の活用方法
工事完了報告書は、工事の完了を報告するだけでなく、様々な場面で活用できます。
活用①:請求手続きの根拠資料として
工事完了報告書を用いて工事内容を発注者に説明することで、透明性を確保します。請負金額の請求根拠としても活用できます。
活用②:トラブル対応の証拠資料として
万が一、工事後にトラブルが発生した場合、工事完了報告書が証拠書類として活用できます。資材の不正使用やその他の不正が発覚し、裁判に発展した場合にも、証拠物として認められる場合があります。
活用③:メンテナンス・補修の参考資料として
完成後のデータを保存し、将来的なメンテナンスやトラブル対応時の参考資料として利用できます。工事内容や使用材料が記録されているため、補修工事の際にも役立ちます。
活用④:固定資産計上のタイミング判断として
発注者にとって工事完了報告書は、固定資産に計上するタイミングを判断する書類になります。オフィスや店舗を建てた場合、工事完了報告書の作成日をもとに、固定資産・減価償却へと計上していきます。
まとめ
工事完了報告書は、工事の成果を正確に伝えるための重要な書類です。基本的な記載項目を押さえ、具体的な数値や写真を活用することで、わかりやすい報告書を作成できます。
本記事のポイント:
- 工事完了報告書は契約通りの工事完了を報告する書類
- 法的義務はないが、官公庁工事では提出が必須の場合が多い
- 工事名・工期・請負金額・工事内容が基本記載項目
- 費用欄は人件費ではなく交通費などの経費を記載
- 工事写真の必要性は事前に確認する
- 控えは5年間を目安に保管する
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