「工程表って何のために作るの?」「工程表にはどんな種類があるの?」「どの工程表を選べばいいかわからない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、工程表の基礎知識から目的・役割、5種類の工程表の特徴まで、初心者にもわかりやすく徹底解説します。工程表の作成方法やポイント、無料で使えるエクセルテンプレートも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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工程表とは?基本概念を理解する
まず、工程表の基本概念を押さえましょう。
工程表の定義
工程表とは、工事の流れを「いつ・どの順番で・どれくらいの時間で」行うかをまとめた表のことです。着工から完成までの作業を見える化することで、職人や材料、機材の手配をスムーズに進めることができます。
建設業界において工程表は、原価管理や品質確保、発注管理にも活用される重要なものです。各現場では、施工管理者が工事の進行を管理するために工程表を使用します。
工程表と行程表の違い
「工程表」と「行程表」は読み方が同じ「こうていひょう」なので混同されがちですが、実は別物です。
- 工程表:作業や工事の予定や順序、進め方を具体的に示した表。建築現場や生産現場で使用
- 行程表:旅行や移動における目的地までの道順やスケジュール。ロードマップとも呼ばれる
工程表は作業内容を時系列で詳しく予定していて「今日はどこまで進めれば良いか」がわかります。対して行程表は、これから行われることに対しておおざっぱにスケジュールを決めており、ゴールに対して複数の選択肢がある漠然としたものです。
工程表がないとどうなる?
工程表がないと、全体の進捗状況が把握できず、現場の作業が順調に進みません。具体的には以下のような問題が発生します。
- 人員管理やスケジュール管理ができず、作業効率が悪化する
- 納期直前まで業務に追われ、無駄な残業が発生する
- 施主様と工程を共有できず、不信感を抱かれる
- 不測の事態が起きたときに適切な対処ができない
工程表は必ずしも作成しないといけない訳ではありませんが、作成することで得られるメリットが多く、損をすることはありません。
工程表を作成する5つの目的
工程表を作成する目的と役割には、主に5つのポイントがあります。
目的①:工期の厳守
建設工事において工期は契約で定められており、施工会社の都合による「工期割れ」は認められません。工期割れが起きると、施工会社の社会的信用は失われ、以降の請負工事の獲得にも多大な影響を及ぼします。
工程表は、実際の現場の工程が計画通りに進んでいるかをチェックするベースになります。「この工種で何日遅れたから、次の工種では遅れた分を取り戻す」というような調整が可能になり、納期を守ることができます。
目的②:作業効率の向上
工程表を作成し、その通りに工事を進めることで自然にスケジュールを守るための作業効率化が図れます。
また、工程表を活用することで、各タスクの重複を防ぎつつ、資源や担当者を目的に応じて適切に振り分けることができます。これにより、各担当者はスムーズに業務を遂行しやすくなり、作業全体が円滑に進行します。
目的③:人員・資材の適切な配分
工程表には各工程に必要な人員や資材を記載するため、リソースの最適配分が可能になります。
「どこでどの業者が作業しているか」を把握することで、危ない作業内容があれば警備員を配置したり区画をしたりと安全対策ができます。また、全業者の工事内容を工程表に書き込むことで作業の重なりを把握し、工事をずらすことで他業者との接触を未然に防ぐことができます。
目的④:トラブルへの適切な対処
工程表は、現場で発生した想定外のトラブルへの適切な対処にも有効です。
トラブル発生で遅れた工程を取り戻すため、本来予定していた人員や建設機械を前倒しで現場に投入する必要があるときも、工程表があれば容易に調整することができます。適切な工程表がなく、計画性のない現場では、右往左往するばかりで現場は回っていきません。
目的⑤:関係者との情報共有
工程表は、プロジェクトメンバーや関係者間の情報共有に役立ちます。
プロジェクトの全体像を共有し、課題の早期発見と解決につなげることができます。元請け、下請け、協力会社、施主など、プロジェクトに関わる全員が「どの作業がいつ行われるか」を理解しやすくなり、調整コストが下がります。
工程表の種類(期間別)
工程表には期間によっていくつかの種類があり、現場の規模や目的によって使い分けます。
総合(全体)工程表
総合工程表は、プロジェクト全体の流れを把握するための工程表です。着工から竣工までの全工程を一覧で確認でき、マイルストーン(重要な節目)の管理に適しています。大規模工事や長期プロジェクトで使用されることが多いです。
細部工程表
細部工程表は、特定の工種や作業を詳細に管理するための工程表です。総合工程表では把握しきれない細かい作業内容や手順を記載します。重要な作業内容がある場合に、その部分だけを別に作成することもあります。
月間工程表
月間工程表は、1ヶ月単位で作業を管理するための工程表です。月ごとの作業計画と進捗を確認でき、中期的なスケジュール管理に適しています。定例会議での報告資料としても活用されます。
週間工程表
週間工程表は、1週間単位で作業を管理するための工程表です。日々の作業内容を細かく把握でき、短期的な進捗管理に最適です。現場での朝礼や打ち合わせで使用されることが多いです。
工程表の種類(形式別)5選
工程表には形式によって5種類があり、それぞれ特徴が異なります。目的に合わせて適切な種類を選びましょう。
①バーチャート工程表
バーチャート工程表は、縦軸に作業項目、横軸に日付を配置し、各作業の開始日と終了日を横棒(バー)で示す工程表です。建設現場で最も一般的に使われています。
メリット:
- 作成が簡単で、誰でも直感的に理解できる
- 全体的なスケジュールの流れを視覚的に把握できる
- 修正が容易で、計画変更にも対応しやすい
- 施主様など建設現場に詳しくない人への説明も容易
デメリット:
- 作業間の依存関係が表現しにくい
- クリティカルパスの把握ができない
- 複雑な工程が絡み合う大規模工事には不向き
適した現場:小〜中規模の工事、作業間の依存関係が少ない現場
②ガントチャート工程表
ガントチャート工程表は、縦軸に作業項目、横軸に進捗率を配置し、各作業の進行状況をバーで示す工程表です。バーチャートと似ていますが、進捗管理に特化している点が異なります。
メリット:
- 作業の進捗状況を視覚的に確認できる
- 複数の作業を同時並行で管理しやすい
- 遅れが発生している作業を一目で把握できる
- 作成が比較的簡単
デメリット:
- 「いつ始まっていつ終わるか」が把握しにくい
- 作業間の依存関係の表現が限定的
- 工数を記載する項目がないため、作業日数の把握が難しい
適した現場:複数の作業が同時並行で進む現場、進捗管理を重視する場合
③グラフ式工程表(斜線式工程表)
グラフ式工程表は、縦軸に出来高(進捗)、横軸に日時を設定し、斜線で進捗を表現する工程表です。バーチャートとガントチャートを組み合わせたような形式で、計画と実績を同時に把握できます。
メリット:
- 計画と実績の差を視覚的に把握しやすい
- 日程と進捗の両方を管理できる
- 遅延の程度が一目でわかる
デメリット:
- 作成がやや複雑
- すぐに全体像を把握しづらい
- 無料で使えるテンプレートが少ない
適した現場:計画と実績の比較を重視する現場
④工程管理曲線(バナナ曲線)
工程管理曲線は、縦軸に出来高累計、横軸に時間経過を設定し、施工量の時間的変化を曲線で表す工程表です。2本の曲線(上方・下方許容限界線)の間に実績が収まっているかどうかで進捗を管理します。
メリット:
- 施工速度の管理ができる
- 許容範囲内かどうかが一目でわかる
- 全体の進捗傾向を把握しやすい
デメリット:
- 作成に専門知識が必要
- 個別の作業内容が把握しにくい
- 一から自作することが前提となる
適した現場:大規模工事、公共工事など出来高管理が重要な現場
⑤ネットワーク工程表
ネットワーク工程表は、円(イベント)と矢印(アクティビティ)を用いて、作業の順序と依存関係を表現する工程表です。PERT図やアローダイアグラムとも呼ばれます。
メリット:
- 作業間の依存関係を明確に把握できる
- クリティカルパス(最重要経路)を特定できる
- フロート(余裕時間)を計算できる
- 工期短縮の糸口を見つけやすい
デメリット:
- 作成・理解に専門知識が必要
- 複雑な構造になりやすい
- 各作業の進捗がわかりにくい
- 専用ソフトの導入が必要な場合がある
適した現場:複数の工種がある大規模現場、依存関係が複雑なプロジェクト
工程表の種類の選び方
どの工程表を選ぶべきかは、工事の規模や目的によって異なります。以下のポイントを参考に選びましょう。
工事の規模で選ぶ
- 小規模工事:バーチャート工程表、ガントチャート工程表
- 中規模工事:バーチャート工程表+細部工程表の組み合わせ
- 大規模工事:ネットワーク工程表、工程管理曲線
管理の目的で選ぶ
- スケジュール管理重視:バーチャート工程表
- 進捗管理重視:ガントチャート工程表
- 作業間の関連性重視:ネットワーク工程表
- 出来高管理重視:工程管理曲線
作成のしやすさで選ぶ
- 初心者向け:バーチャート工程表、ガントチャート工程表
- 経験者向け:グラフ式工程表、工程管理曲線、ネットワーク工程表
工程表の作成手順
工程表を作成する基本的な手順を5つのステップで解説します。
ステップ1:作業内容の洗い出し
まず、プロジェクトに必要なすべての作業を洗い出します。作業単位で細かく設定し、具体的に書き出すことが重要です。作業内容があいまいだと、工程表が分かりにくくなります。
各作業に必要な資材や機械設備も同時に書き出しておきましょう。
ステップ2:作業手順の決定
次に、各作業の順序と依存関係を整理します。どの作業が先行し、どの作業が後続するかを明確にしましょう。
- どの作業が終わらないと次に進めないか
- どの作業は同時並行で進められるか
- どの作業が独立しているか
ステップ3:施工期間の設定
各作業に必要な期間を見積もります。工事内容や人員を考慮して、適切な施工期間を見極めることが重要です。
顧客の希望納期だけで設定すると、事故やミスの原因となるため注意が必要です。天候不良や従業員の欠員などによって工事の進捗が遅れるケースがあるため、余裕を持って期間を設定することが大切です。
ステップ4:工程表の種類を選択
工事の規模や目的に応じて、適切な工程表の種類を選択します。一般的に用いられることが多いのはバーチャート・ガントチャートの工程表です。
ステップ5:作成方法の決定・作成
工程表の種類を決めたあとは、具体的にどのような方法で作成するかを決めます。工程表は、手書き、Excel、専用ツールを用いて作成が可能です。
作成後は関係者と共有し、全員が同じ情報を持てるようにしましょう。
見やすい工程表を作るポイント

工程表は関係者全員が見るため、見やすさが重要です。以下のポイントを意識しましょう。
専門用語を避ける
工程表は現場作業者だけでなく、発注者や他部署の方が見ることもあります。専門用語ばかりが目立つ工程表ではわかりにくいため、誰もが理解できるわかりやすい用語や表現を使いましょう。
情報を詰め込みすぎない
工程表は情報を詰め込み過ぎず、知りたいポイントがすぐにわかることが重要です。過度に細かくすると管理が煩雑になりますが、ざっくりしすぎても現場では役に立ちません。
色分けを活用する
工種ごとや重要度ごとに色分けすることで、視覚的にわかりやすくなります。ただし、色を使いすぎると逆にわかりにくくなるため、3〜5色程度に抑えましょう。
余裕日を設定する
天候や資材遅延、人員都合などでスケジュールがズレる可能性があるため、工程ごとに1〜2日の余裕日を設けておくと安心です。予備日としての空白期間も意識しておきましょう。
工程表の作成方法
工程表を作成する方法には、主に以下の4つがあります。
手書き
紙とペンがあれば作成できる、最もシンプルでコストのかからない方法です。自由にデザインでき、工事の工程が頭に入りやすくなります。少人数での工事の場合は手書きでも十分です。
ただし、修正や共有が難しいというデメリットがあります。
エクセル
エクセルは工程表作成の定番ツールです。多くのパソコンに備わっているため導入コストがかからず、テンプレートを使えば簡単に作成できます。
関数を使うことで修正や変更がしやすい工程表を作成できます。ただし、あまりに複雑なファイルにしてしまうと、作成者以外がメンテナンスできなくなるため注意が必要です。
ワード
ワードでも表機能を使って工程表を作成できます。工程表と補足説明書を一つの文書にまとめたい場合に適しています。
ただし、表の管理機能が限定的で、大量のデータや複雑なスケジュールには対応しにくいデメリットがあります。
施工管理アプリ・専用ツール
施工管理アプリや専用ツールは、工程表の作成・共有・更新を効率化できます。クラウド上でリアルタイムに情報を共有でき、スマホやタブレットからもアクセス可能です。
導入コストはかかりますが、複数現場の管理や関係者との情報共有を重視する場合には非常に有効です。
無料エクセルテンプレートの紹介
工程表のテンプレートを活用することで、誰でも簡単に工程表を作成することができます。ここでは、無料で使えるおすすめのエクセルテンプレートを紹介します。
①アイピア 工程表エクセルテンプレート集
建築業向け管理システムアイピアが提供している、建築業界で使用しやすい工程表のエクセルテンプレートです。一般的なフォーマットから豊富な種類のテンプレートを無料ですぐに利用できます。
建築業界向けのエクセルテンプレートだからこそ、使いやすく見やすいのが特徴です。
ダウンロード先:https://aippearcloud.com/schedule/
②ビズ研 工程表・工程管理表テンプレート集
ビズ研が提供している、エクセルとPDF形式で公開されているテンプレート集です。カスタマイズしやすいシンプルな書式が特徴で、幅広い業種で活用できます。
ダウンロード先:https://biztemplatelab.com/template/koutei_kanri/
③bizocean 工程表・工程管理表テンプレート
bizoceanが提供している、豊富な種類の工程表テンプレートです。作業の順番や工数を把握するための様々なフォーマットが用意されています。会員登録が必要ですが、無料でダウンロードできます。
ダウンロード先:https://www.bizocean.jp/doc/category/284/
④テンプレートBANK スケジュール・工程管理テンプレート
テンプレートBANKが提供している、建設業向けバーチャート式工程表などのテンプレートです。1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月など様々な期間に対応したフォーマットが用意されています。
ダウンロード先:https://www.templatebank.com/category/schedule-management
テンプレート使用時の注意点
無料テンプレートを使う場合は、以下の点に注意しましょう。
- エクセルやパソコンのバージョンによって使用できない場合がある
- MacやタブレットPCでは使用できないテンプレートもある
- 自社の業務に合わせてカスタマイズが必要な場合がある
まとめ
工程表は、建設業において工事を円滑に進めるために欠かせない重要なツールです。
本記事のポイント:
- 工程表とは、工事の流れを「いつ・どの順番で・どれくらいの時間で」行うかをまとめた表
- 工程表を作成する目的は、工期の厳守、作業効率の向上、人員・資材の適切な配分、トラブルへの対処、情報共有の5つ
- 工程表には期間別(総合・細部・月間・週間)と形式別(バーチャート・ガントチャート・グラフ式・工程管理曲線・ネットワーク)の種類がある
- 工事の規模や目的に応じて適切な工程表を選ぶことが重要
- 見やすい工程表を作るには、専門用語を避け、情報を詰め込みすぎず、色分けを活用する
- 無料のエクセルテンプレートを活用すれば、簡単に工程表を作成できる
工程表は作成することがゴールではなく、工程表を元に工程を管理することが目的です。工事の規模や目的に合った工程表を選び、効率的なプロジェクト運営を実現しましょう。
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