112_危険予知活動_KY活動とは

危険予知活動(KY活動)とは?実施例・進め方・ポイントを解説

「KY活動の進め方がよくわからない」「毎日同じ内容になってしまいマンネリ化している」「形だけの活動になっていて効果が感じられない」。建設現場でKY活動(危険予知活動)に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

危険予知活動(KY活動)とは?実施例・進め方・ポイントを解説

KY活動は、作業前に現場に潜む危険を予測し、具体的な対策を立てて実践することで、労働災害を未然に防ぐための重要な安全管理活動です。正しい進め方を理解し、チーム全員で取り組むことで、安全な作業環境を実現できます。

この記事では、KY活動の基本から具体的な進め方、建設現場での実施例、効果を高めるポイントまで詳しく解説します。ぜひ現場の安全管理にお役立てください。

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目次

KY活動(危険予知活動)とは

KY活動(危険予知活動)とは、作業現場に潜む危険要因を事前に洗い出し、対策を立てて実践することで、事故やトラブルを未然に防ぐ取り組みのことです。「K」は危険(Kiken)、「Y」は予知(Yochi)の頭文字を取った略称で、KY活動やKYK(危険予知活動)とも呼ばれます。

KY活動は、建設業をはじめ製造業、運送業、医療業など危険を伴う業種で広く実施されており、日本で生まれた独自の安全管理手法として世界的にも注目されています。

KY活動の目的

KY活動の主な目的は以下の3つです。

  • 労働災害の未然防止:作業前に危険を特定し、事故が起きる前に対策を講じる
  • 安全意識の向上:作業員一人ひとりが危険に対する感受性を高める
  • チームワークの強化:全員参加の話し合いで、危険情報を共有し連携を深める

厚生労働省の分析によると、労働災害の原因の約8割はヒューマンエラー(不安全行動)が関係しています。KY活動は、このヒューマンエラーを防ぐための有効な手段として位置づけられています。

KY活動とKYT(危険予知訓練)の違い

KY活動と似た言葉に「KYT(危険予知訓練)」があります。両者の違いは以下の通りです。

項目KY活動KYT(危険予知訓練)
目的実際の作業における危険を予測し対策を立てる危険を予測する能力を高めるための訓練
実施タイミング作業開始前(毎日の朝礼など)事前の研修や教育の場
実施場所実際の作業現場研修室や事務所
内容当日の具体的な作業に基づく危険予測イラストシートなどを使った模擬訓練

KYTで身につけた危険予知能力を、実際の現場で発揮するのがKY活動です。両者を組み合わせることで、より効果的な安全管理が実現できます。

KY活動とヒヤリハットの違い

KY活動と混同されやすい「ヒヤリハット」との違いも理解しておきましょう。

  • KY活動:事故が起きる「前」に危険を予測する予防的活動
  • ヒヤリハット:実際に「ヒヤリ」「ハッと」した体験を報告し、再発防止に活かす事後的活動

KY活動は「これから起こりうる危険」を予測し、ヒヤリハットは「すでに起きかけた危険」を教訓にします。両方を組み合わせることで、安全意識をより高めることができます。

建設業でKY活動が重要な理由

建設業は他の業種と比較して労働災害のリスクが高く、KY活動の重要性は特に高いといえます。

建設業の労働災害発生状況

厚生労働省が公表した2024年(令和6年)の労働災害発生状況によると、建設業は全産業の中で最も死亡者数が多い業種となっています。

項目建設業の数値備考
死亡者数232人(2024年)全産業の約31%を占める
死傷者数(休業4日以上)約14,000人全産業の約10%
最多事故の型墜落・転落死亡災害の約33%

建設業の労働者数は全産業の約10%ですが、死亡災害に占める割合は約35%と非常に高い水準にあります。この数字からも、建設現場における安全管理の重要性がわかります。

建設現場で多い労働災害の種類

建設現場では、以下のような労働災害が多く発生しています。

災害の種類主な発生状況割合(死亡災害)
墜落・転落足場、屋根、脚立からの転落約33〜40%
崩壊・倒壊土砂、建物、構造物の崩壊約10%
はさまれ・巻き込まれ重機、建設機械との接触約8%
飛来・落下資材、工具の落下約7%
転倒足場の不備、つまずき約5%

これらの災害の多くは、事前の危険予知と適切な対策によって防ぐことができます。KY活動で危険をどれだけ予測できるかが、現場の安全性を左右するといえるでしょう。

KY活動の進め方【基礎4ラウンド法】

KY活動の最も基本的かつ標準的な進め方が「基礎4ラウンド法(4R法)」です。中央労働災害防止協会が開発した手法で、4つのステップで危険予知から対策の実行までを段階的に進めます。

第1ラウンド:現状把握(どんな危険がひそんでいるか)

作業現場や作業内容を観察し、「どんな危険が潜んでいるか」をチームで話し合います。

進め方のポイント:

  • 5〜6人程度のグループで実施
  • できるだけ多くの危険要因を挙げる(質より量を重視)
  • 「〜なので、〜して、〜になる」の形式で発言
  • 出た意見はすべて書き出す

発言例:

  • 「足場が濡れているので、滑って転落する」
  • 「資材を持って移動中に、つまずいて転倒する」
  • 「高所作業中にバランスを崩して墜落する」

第2ラウンド:本質追究(これが危険のポイントだ)

第1ラウンドで挙げた危険要因の中から、特に重要なもの(危険のポイント)を絞り込みます

進め方のポイント:

  • 挙げられた危険要因を全員で確認
  • 発生可能性や重大性が高いものを選出
  • 最も危険なものに◎印、次に危険なものに○印をつける
  • ◎印は通常1〜2項目に絞る

この段階で「これが今日の作業で最も注意すべき危険だ」という認識をチーム全員で共有します。

第3ラウンド:対策樹立(あなたならどうする)

絞り込んだ危険のポイントに対して、具体的な対策を検討します

進め方のポイント:

  • 「私たちはこうする」という形で具体的な行動を決める
  • 実行可能な対策を選ぶ
  • 複数の対策から効果的なものを絞り込む
  • 重点実施項目に※印をつける

対策例:

  • 「作業前に足場の状態を確認し、濡れている場合は拭き取る」
  • 「安全帯を必ず使用し、移動時は掛け替えを確実に行う」
  • 「重量物を運ぶときは必ず2人以上で行う」

第4ラウンド:目標設定(私たちはこうする)

対策の中から具体的な行動目標を設定し、全員で確認します

進め方のポイント:

  • 「〜を〜して〜しよう」という具体的な行動目標を設定
  • 全員で唱和して確認(指差し唱和)
  • 1日の目標として意識できる内容にする

目標設定例:

  • 「高所作業では安全帯を確実に使用しよう!ヨシ!」
  • 「足元注意!つまずき・転倒を防ごう!ヨシ!」
  • 「声かけ確認で重機災害ゼロ!ヨシ!」

建設現場でのKY活動実施例【作業別】

建設現場の作業内容別に、KY活動の具体的な実施例を紹介します。

建設現場でのKY活動実施例【作業別】

高所作業のKY活動例

高所作業は建設業で最も死傷者が多い作業であり、重点的なKY活動が必要です。

想定される危険:

  • 足場からバランスを崩して墜落する
  • 安全帯を使用せず、足を踏み外して転落する
  • 足場板の隙間から工具を落として、下の作業員に当たる
  • 強風でバランスを崩す
  • 脚立の天板に乗って作業し、転倒する

対策例:

  • フルハーネス型墜落制止用器具を必ず着用する
  • 作業開始前に足場の点検を実施する
  • 工具は腰袋に入れ、落下防止ストラップを使用する
  • 風速10m/s以上の場合は作業を中止する
  • 脚立の天板には絶対に乗らない

重機作業のKY活動例

重機(建設機械)を使用する作業では、接触や挟まれ事故に注意が必要です。

想定される危険:

  • バックホウの旋回範囲に入り、接触する
  • ダンプトラックの死角に入り、巻き込まれる
  • クレーン作業で吊り荷が落下する
  • 重機と構造物の間に挟まれる

対策例:

  • 重機の作業範囲を立入禁止区域に設定する
  • 誘導員を配置し、合図を確認してから操作する
  • 玉掛け作業は有資格者が行う
  • 重機と作業員の位置を常に確認する

電気工事のKY活動例

電気工事では感電事故のリスクがあり、慎重な作業が求められます。

想定される危険:

  • 活線に触れて感電する
  • 濡れた手で電気機器を操作し、感電する
  • 絶縁不良の工具を使用し、漏電する

対策例:

  • 作業前に検電器で通電状況を確認する
  • 絶縁用保護具を着用する
  • 電源を遮断し、「作業中」の表示を掲げる
  • 絶縁工具を使用し、定期的に点検する

指差し呼称の効果と実践方法

KY活動と併せて実施する「指差し呼称」は、確認作業の精度を高める効果的な手法です。

指差し呼称とは

指差し呼称とは、確認すべき対象を指差しながら「○○ヨシ!」と声に出して確認する方法です。旧国鉄(日本国有鉄道)で創始された日本独自の安全確認法で、100年以上の歴史があります。

指差し呼称の効果

鉄道総合技術研究所が実施した実験によると、指差し呼称を行った場合、何もしない場合と比べて誤り発生率が約6分の1以下に減少することが確認されています。

指差し呼称が効果的な理由は以下の通りです。

  • 意識レベルの向上:目で見て、腕を伸ばし、声を出すことで意識が覚醒する
  • 確認の確実化:漫然とした確認を防ぎ、対象をしっかり認識できる
  • 記憶の定着:声に出すことで確認したことが記憶に残りやすい

指差し呼称の正しいやり方

指差し呼称の基本動作は以下の通りです。

  • :確認すべき対象をしっかり見る
  • 腕・指:右腕を伸ばし、人差し指で対象を指差す
  • :「○○」と対象を呼称し、確認後「ヨシ!」と発声
  • 左手:腰にあてて姿勢を正す

呼称の例:

  • 「安全帯装着、ヨシ!」
  • 「足場固定、ヨシ!」
  • 「電源OFF、ヨシ!」
  • 「周囲確認、ヨシ!」

1人KYの進め方

チームでのKY活動だけでなく、個人で行う「1人KY」も重要です。

1人KYとは

1人KYとは、作業者が単独で作業に入る前に、自分自身で危険を予測・確認する取り組みです。グループでのKY活動で得た知識をベースに、自分の担当作業に潜む危険を自分で考え、対策を実行します。

1人KYの実施方法

1人KYは以下の手順で実施します。

  • 作業内容の確認:今から行う作業を確認する
  • 危険の予測:その作業で起こりうる危険を考える
  • 対策の決定:危険を回避するための行動を決める
  • 指差し呼称:行動目標を声に出して確認する

1人KYは数十秒で実施できる簡単な手法ですが、「自分の身は自分で守る」という意識を高める効果があります。

自問自答シートの活用

1人KYを効果的に行うために「自問自答シート」を活用する方法があります。自問自答シートには、作業場所で予測される危険要因があらかじめリストアップされており、シートの内容を確認しながら指差し呼称を行います。

新任の作業者でも危険要因を事前に把握でき、KY活動をスムーズに行えるメリットがあります。

KY活動を効果的に行うためのポイント

KY活動を形骸化させず、実効性のある活動にするためのポイントを紹介します。

ポイント1:具体的な作業状況を設定する

KY活動がマンネリ化する原因の一つは、「今日の作業」という大雑把な状況設定です。具体的な作業内容、場所、時間帯などを明確にすることで、より具体的な危険予測ができます。

改善例:

  • ×「外壁工事」→○「午後から2階部分の外壁塗装を脚立を使って行う」
  • ×「配管作業」→○「狭い天井裏でエアコン配管の接続作業を行う」

ポイント2:全員が発言できる環境を作る

KY活動は全員参加が原則です。経験の浅い作業員も含め、全員が発言できる雰囲気を作ることが大切です。ベテラン作業員の視点だけでなく、新人ならではの気づきが重要な危険発見につながることもあります。

ポイント3:ヒヤリハット事例を活用する

過去に発生したヒヤリハット事例を活用することで、KY活動のネタ切れを防げます。実際に起きかけた危険を教材として使うことで、より実践的な危険予測ができるようになります。

ポイント4:記録を残し振り返りを行う

KY活動の内容をKY活動表に記録し、定期的に振り返りを行いましょう。記録を蓄積することで、危険のパターンが見えてきます。また、上司からのフィードバックにも活用できます。

ポイント5:マンネリ化を防ぐ工夫をする

KY活動は毎日行うため、マンネリ化しやすい傾向があります。以下のような工夫で活動を活性化しましょう。

  • リーダーの交代:日替わりでリーダーを担当
  • 視点の変更:天候、時間帯、疲労度など異なる視点で危険を考える
  • 事故事例の共有:他現場や他社で起きた事故を教材に活用
  • デジタルツールの活用:アプリやタブレットを使って記録・共有を効率化

KY活動表の書き方【記入例付き】

KY活動表(危険予知活動記録表)は、KY活動の内容を記録するためのシートです。

KY活動表の主な記入項目

KY活動表には以下の項目を記入します。

項目記入内容
日付KY活動を実施した日
現場名・会社名作業を行う現場と会社
作業グループ参加メンバーの氏名
作業内容当日行う作業の具体的な内容
危険のポイント予測される危険要因
対策(私たちはこうする)危険を回避するための具体的な行動
本日の安全目標全員で確認する行動目標
参加者サイン内容を確認した証として全員が署名

記入時のポイント

  • 具体的に書く:誰が読んでも理解できるよう、具体的な表現で記入
  • 簡潔に書く:要点を絞って簡潔にまとめる
  • 実行可能な対策を書く:実際にできる対策を記入する
  • 全員で確認する:記入内容は全員で共有し、認識を合わせる

よくある質問

Q1:KY活動は法律で義務化されていますか?

KY活動自体は法律で義務化されていません。ただし、労働安全衛生法では事業者に対し「労働者の安全と健康を確保する措置を講じる義務」が定められています。KY活動は、この義務を果たすための有効な手段として、厚生労働省や国土交通省も推奨しています。多くの建設現場では安全管理の一環として実施されています。

Q2:KY活動はどのくらいの時間で行えばよいですか?

基礎4ラウンド法を使ったグループKY活動は、通常10〜15分程度で実施します。朝礼時に行う短時間KYであれば5分程度、1人KYは数十秒〜1分程度で実施できます。重要なのは時間の長さではなく、全員が危険を認識し、対策を共有できているかどうかです。

Q3:KY活動のネタ切れを防ぐにはどうすればよいですか?

ネタ切れを防ぐには、作業状況をより具体的に設定することが効果的です。同じ作業でも、天候、時間帯、疲労度、使用機材など視点を変えれば新たな危険が見えてきます。また、ヒヤリハット事例の活用、他現場の事故事例の共有、リスクアセスメントの結果を活用するなどの方法も有効です。

まとめ

KY活動(危険予知活動)は、建設現場の安全を守るために不可欠な取り組みです。作業前に危険を予測し、具体的な対策を立てて実践することで、労働災害を未然に防ぐことができます。

KY活動のポイント:

  • 基礎4ラウンド法を活用:現状把握→本質追究→対策樹立→目標設定の4段階で進める
  • 全員参加で実施:経験の浅い作業員も含め、全員で危険を洗い出す
  • 指差し呼称で確認:対象を指差し、声に出して確認することで精度を高める
  • 1人KYも実施:グループKYだけでなく、個人でも危険予知を行う
  • マンネリ化を防ぐ:具体的な状況設定、視点の変更、事例活用で活性化

建設業で多い労働災害:

  • 墜落・転落(死亡災害の約33〜40%)
  • 崩壊・倒壊
  • はさまれ・巻き込まれ
  • 飛来・落下
  • 転倒

KY活動は毎日継続することで効果を発揮します。形だけの活動にならないよう、一人ひとりが「自分の身は自分で守る」という意識を持ち、安全な作業環境づくりに取り組みましょう。

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