「ネットワーク工程表の作り方がわからない」「クリティカルパスって何?どう計算するの?」「エクセルで作成できるテンプレートが欲しい」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ネットワーク式工程表の基本から、作成手順、クリティカルパスの計算方法までをわかりやすく解説します。無料で使えるエクセルテンプレートも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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ネットワーク式工程表とは?
ネットワーク式工程表とは、作業の順序や相互関係を矢印(→)と丸印(○)で表現した工程表です。建築工事・土木工事・管工事・電気工事など、建設工事全般で広く利用されています。
バーチャート工程表やガントチャート工程表との最大の違いは、作業間の依存関係(前後関係)を明確に表現できる点です。「A作業が終わらないとB作業に着手できない」といった制約条件を視覚的に把握できます。
ネットワーク式工程表の特徴
- 作業の順序・相互関係が明確:どの作業が終わらないと次に進めないかが一目でわかる
- クリティカルパスの特定が可能:工期を左右する最重要経路を把握できる
- 工期短縮の検討に有効:どの作業を短縮すれば全体工期が縮まるか判断できる
- 遅延の影響を把握しやすい:ある作業が遅れた場合の影響範囲が明確になる
アロー形とサークル形
ネットワーク工程表には、アロー形(アローダイアグラム)とサークル形の2種類があります。一般的に作成・使用されているのはアロー形です。
- アロー形:矢線(→)で作業を表し、丸印(○)で作業の開始・終了点を表す
- サークル形:丸印(○)で作業を表す
本記事では、一般的に使用されるアロー形ネットワーク工程表について解説します。
ネットワーク工程表の専門用語
ネットワーク工程表を作成・理解するには、いくつかの専門用語を押さえておく必要があります。施工管理技士の試験にも頻出する重要な用語ですので、しっかり覚えておきましょう。
基本用語
①イベント(結合点)
イベントとは、作業の開始点や終了点を表す丸印(○)のことです。丸印の中には番号(イベント番号)を記入します。作業が進むほど番号は大きくなります。
②アクティビティ(作業)
アクティビティとは、作業を表す矢線(→)のことです。矢線の上には作業名(アルファベットや数字)、下には作業日数を記入します。矢線の長さは作業日数とは関係ありません。
③ダミー(擬似作業)
ダミーとは、作業の前後関係だけを示す点線の矢印(- – →)のことです。実際の作業はなく、所要日数は0日です。作業の依存関係を正しく表現するために使用します。
時間に関する用語
④最早開始時刻(EST:Earliest Start Time)
最早開始時刻とは、ある作業を最も早く開始できる時刻のことです。先行する作業がすべて完了した時点で決まります。先行する作業が複数ある場合は、最も時間がかかる作業が終わった時点が最早開始時刻になります。
⑤最遅完了時刻(LFT:Latest Finish Time)
最遅完了時刻とは、全体の工期を遅らせないために、その作業を終わらせておかなければならない最も遅い時刻のことです。後続する作業が複数ある場合は、最も早い時刻を採用します。
余裕に関する用語
⑥フロート(余裕時間)
フロートとは、作業に許される余裕時間のことです。フロートには以下の2種類があります。
- トータルフロート(TF):工期に影響を与えない範囲での最大余裕時間
- フリーフロート(FF):次の作業に影響を与えない範囲での余裕時間
⑦クリティカルパス
クリティカルパスとは、開始点から終了点までのすべての経路の中で、最も日数がかかる経路のことです。トータルフロートが0のアクティビティをつないだ経路でもあります。
クリティカルパス上の作業が遅れると、そのまま全体の工期が遅れるため、最も重点的に管理する必要があります。なお、クリティカルパスは1ルートとは限らず、複数存在する場合もあります。
ネットワーク工程表の作成ルール
ネットワーク工程表を作成する際には、いくつかのルールを守る必要があります。
基本ルール
- 作業番号は矢線(→)の上に記入する
- 作業日数は矢線(→)の下に記入する
- 矢線は作業の進行方向(左から右、上から下)へ向ける
- イベント番号は作業が進むほど大きくする
- 矢線の長さは作業日数とは関係ない(長い作業だから矢線を長くするわけではない)
禁止事項
- ループ(閉回路)を作ってはいけない:作業が循環する形はNG
- 同じイベント間に複数の矢線を引いてはいけない:並行作業はダミーを使って表現
- 矢線を逆向きに引いてはいけない:常に左から右、上から下へ進む
ネットワーク工程表の作成手順
ネットワーク工程表を作成する基本的な手順を解説します。
ステップ1:作業の洗い出し
まず、プロジェクトに必要な作業をすべて洗い出します。
フェーズごとの工事の詳細を把握し、どのタスクが必要なのかを明確にしましょう。複数の協力会社や専門工事が関与する場合は、作業をカテゴリーごとに分類しながらタスクを拾い出すと、漏れを防げます。
この段階での抜け漏れは、後々の工程全体のズレやトラブルにつながるため、入念に確認することが重要です。
ステップ2:作業の順序・依存関係を決定
次に、各作業の順序と依存関係を決定します。
- どの作業を先に行う必要があるか
- どの作業が終わらないと次に進めないか
- 同時並行で進められる作業はどれか
たとえば、「基礎工事が終わらないと躯体工事に着手できない」「電気工事と設備工事は並行して進められる」といった関係性を整理します。
ステップ3:各作業の所要日数を見積もる
各作業に必要な日数を見積もります。
過去の実績や経験をもとに、現実的な所要日数を設定しましょう。天候や資材の納期なども考慮し、ある程度の余裕を持たせることも重要です。
ステップ4:ネットワーク図を作成
ここまでの情報をもとに、ネットワーク図を作成します。
- 開始点(イベント0)を左端に描く
- 最初に着手できる作業を矢線で描く
- 依存関係に従って、順次作業を追加していく
- 並行作業がある場合はダミーを使って関係性を表現
- すべての作業を終了点に集約する
ステップ5:クリティカルパスを計算
ネットワーク図が完成したら、クリティカルパスを計算します(詳細は次章で解説)。
ステップ6:工程表を確認・調整
最後に、全体を確認し、必要に応じて調整します。
クリティカルパス上の作業が適切か、フロートが極端に少ない作業はないか、全体の工期は目標に収まっているかをチェックします。
クリティカルパスの計算方法
クリティカルパスを求めるには、前進計算(フォワードパス)と後退計算(バックワードパス)を行います。
前進計算:最早開始時刻を求める
前進計算では、開始点から終了点に向かって、各イベントの最早開始時刻を計算します。
計算方法:
- 開始点の最早開始時刻は0
- 各イベントの最早開始時刻 = 前のイベントの最早開始時刻 + 作業日数
- 複数の作業が集まるイベントでは、最も大きい値を採用
例:
イベント①に向かう作業Aが5日、イベント②に向かう作業Bが3日の場合
- イベント①の最早開始時刻 = 0 + 5 = 5日
- イベント②の最早開始時刻 = 0 + 3 = 3日
イベント③に作業A経由(5日)と作業B経由(3日)が集まる場合、最早開始時刻は大きい方の5日を採用します。
後退計算:最遅完了時刻を求める
後退計算では、終了点から開始点に向かって、各イベントの最遅完了時刻を計算します。
計算方法:
- 終了点の最遅完了時刻 = 最早開始時刻と同じ
- 各イベントの最遅完了時刻 = 後のイベントの最遅完了時刻 − 作業日数
- 複数の作業に分岐するイベントでは、最も小さい値を採用
トータルフロートとクリティカルパスの特定
最早開始時刻と最遅完了時刻が求まったら、トータルフロートを計算します。
トータルフロートの計算式:
トータルフロート = 後のイベントの最遅完了時刻 − 前のイベントの最早開始時刻 − 作業日数
トータルフロートが0の作業をつないだ経路がクリティカルパスです。
【簡単な方法】最長経路を計算する
施工管理技士の試験などでは、開始点から終了点までの各経路の合計日数を計算し、最も長い経路を見つける方法が効率的です。
手順:
- 開始点から終了点までのすべての経路を洗い出す
- 各経路の作業日数を合計する
- 最も日数が大きい経路がクリティカルパス
この方法なら、複雑な計算をしなくてもクリティカルパスを特定できます。
ネットワーク工程表のメリット・デメリット

ネットワーク工程表のメリットとデメリットを整理しておきましょう。
メリット
①作業の依存関係が明確になる
どの作業が終わらないと次に進めないかが視覚的に把握できます。設計者、施工管理者、下請け業者など、プロジェクトに関わる全員が「どの作業が先行していないと困るか」を理解しやすくなります。
②クリティカルパスによる重点管理が可能
工期に直結するクリティカルパスを特定できるため、重点的に管理すべき作業が明確になります。
③工期短縮の検討がしやすい
クリティカルパス上の作業を短縮すれば、全体の工期を縮められます。人員増員や作業順序の最適化など、具体的な対策を検討できます。
④遅延の影響範囲が把握しやすい
ある作業が遅れた場合、後続するどの作業に影響するかが明確にわかります。
デメリット
①作成に手間と専門知識が必要
バーチャート工程表に比べて作成が複雑で、専門用語やルールを理解する必要があります。「作成できる人が限られる」という課題が残りやすいです。
②進捗状況の把握が困難
各作業が今どれくらい進んでいるかを表現しにくく、進捗管理にはバーチャート工程表との併用が必要になることがあります。
③短期工事や単純工事には不向き
作成に労力がかかるため、作業が少ない短期工事や単純な工事には向いていません。
エクセルでの作成方法
ネットワーク工程表をエクセルで作成する方法を紹介します。
エクセルで作成する場合の注意点
ネットワーク工程表は、バーチャート工程表と異なり、エクセルの基本知識だけでは作成が難しいのが実情です。矢線や丸印を使った図形を描画する必要があるため、以下のいずれかの方法を検討しましょう。
- 図形描画機能を使って手動で作成:エクセルの「挿入」→「図形」から矢印や円を使って描画
- VBA・マクロ付きのテンプレートを活用:自動作成機能付きのテンプレートを利用
- 専用ソフトを使用:ネットワーク工程表に対応した工程管理ソフトを利用
手動で作成する手順
エクセルの図形描画機能を使って作成する場合の手順は以下の通りです。
- 「挿入」→「図形」から円(楕円)を選択し、イベント(結合点)を描画
- 「挿入」→「図形」から矢印を選択し、アクティビティ(作業)を描画
- テキストボックスを追加し、作業名や日数を記入
- 点線の矢印でダミーを表現(矢印の書式設定で「破線」に変更)
- 位置を調整し、見やすいレイアウトに整える
ただし、手動での作成は時間がかかるため、テンプレートや専用ソフトの活用をおすすめします。
無料で使えるテンプレート・ソフトの紹介
ネットワーク工程表の作成を効率化できる無料テンプレートやソフトを紹介します。
①ネットワーク工程表自動作成(エクセルマクロ)
エクセル上で動作するマクロで、建設工事におけるネットワーク工程表を自動作成できるフリーソフトです。建築物の規模や構造種別を入力し、休日設定を行うと、「公共建築物の工期算定標準」に基づき適正工期を算出し、ネットワーク工程表を自動作成します。出来高曲線も描画可能です。
提供元:ADA / Vectorからもダウンロード可能
②Excel Work Plan
エクセルの簡単な操作でネットワーク工程表を作成できる人気のフリーソフトです。セルを選択してボタンを押すだけで、既存の工程表に短時間で工程表を作成できるアドイン形式のソフトです。
③手書き感覚ネットワーク工程表
手書き感覚でネットワーク工程表が作成できるエクセルテンプレートです。2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月用の5種類の入力フォームがあらかじめ用意されています。開始日は任意の日付に設定でき、日曜祝日・振替休日の網掛けにも対応しています。
④マネーフォワード クラウド
マネーフォワードが提供するネットワーク工程表のエクセルテンプレートを無料でダウンロードできます。シンプルな構成で、カスタマイズしやすいのが特徴です。
⑤工作2プラス(有料)
有料(¥86,400〜)ですが、ネットワーク式工程表にも対応した本格的な工程表作成・管理ツールです。各工程ごとの実行予算登録や原価管理にも対応しており、出来高累計曲線工程表も作成可能です。
テンプレート選びの注意点
無料テンプレートを選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
- エクセルのバージョン:古いバージョンでは動作しない場合がある
- マクロの有効化:セキュリティ設定でマクロを有効にする必要がある
- Mac対応:Windows専用のものが多いため注意
- カスタマイズ性:自社の運用に合わせて調整できるか
まとめ
ネットワーク式工程表は、作業の順序・依存関係を明確にし、クリティカルパスを特定できる優れた工程管理ツールです。大規模工事や複雑な工事で特に効果を発揮します。
作成には専門用語やルールの理解が必要ですが、無料のエクセルテンプレートやマクロを活用すれば、効率的に作成できます。クリティカルパスを把握することで、重点管理すべき作業が明確になり、工期短縮や遅延防止に役立ちます。
まずは無料テンプレートを試してみて、自社の工程管理に活用してみてはいかがでしょうか。
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