「人工代の見積もり方法がわからない」「労務費との違いは?」「適正な単価をどう設定すればいい?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、人工代の見積もり方法を徹底解説します。労務費との違い、適正な単価の設定方法、見積書への記載ポイント、利益を確保する人工代の算出方法まで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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人工代とは?
人工代(にんくだい)とは、作業員1人が1日(8時間)働いたときの人件費のことです。建設業界で広く使われる用語で、工事の見積もりや原価計算の基本となる重要な指標です。
人工(にんく)の基本
- 1人工(いちにんく) = 作業員1人 × 1日(8時間)の労働
- 0.5人工 = 作業員1人 × 半日(4時間)の労働
- 2人工 = 作業員2人 × 1日、または作業員1人 × 2日
「一人工」「1人区」とも呼ばれ、建設業、電気工事、塗装工事などさまざまな現場で用いられます。
人工代の特徴
- 日給ベースで算出(時間単位ではない)
- 1日8時間を標準とする(労働基準法の法定労働時間)
- 残業代や各種手当は含まないのが基本
- 技術力や経験年数によって金額が異なる
人工代と労務費の違い
人工代と労務費は似た言葉ですが、意味が異なります。違いを正しく理解しましょう。
人工代・労務費・人件費の違い
| 用語 | 意味 | 含まれるもの |
|---|---|---|
| 人工代 | 作業員1人が1日働いた時の賃金 | 基本日額のみ(残業代・手当・福利厚生費は含まない) |
| 労務費 | 工事施工に直接関わる職人の人件費 | 基本給、残業代、福利厚生費など |
| 人件費 | 従業員に支払う費用のすべて | 給与、賞与、各種手当、退職金、法定福利費など |
労務費の分類
労務費は直接労務費と間接労務費に分けられます。
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 直接労務費 | 工事施工に直接関わる職人への給料 | 大工、左官、電気工事士などの賃金 |
| 間接労務費 | 工事に間接的に関わる費用 | 現場監督の給料、事務員の給料など |
建設業の積算で「労務費」という場合、一般的には直接労務費を指します。人工代は、この直接労務費を計算するための基本単位です。
人工代の相場
人工代の相場は、職種や地域によって異なります。

公共工事設計労務単価(令和6年3月適用)
国土交通省が発表している「公共工事設計労務単価」が参考になります。
参考:国土交通省「令和7年度 公共工事設計労務単価」
| 職種 | 全国平均 | 東京都 | 北海道 |
|---|---|---|---|
| 普通作業員 | 21,818円 | 25,400円 | 20,000円 |
| 大工 | 27,721円 | − | − |
| 鉄筋工 | 28,352円 | − | − |
| 電工 | − | 30,100円 | 25,300円 |
| 塗装工 | − | 32,700円 | 27,800円 |
| 全職種平均 | 23,600円 | − | − |
※令和6年度は前年比+5.9%の上昇。平成25年度以降、12年連続で上昇しています。
人工代の一般的な相場
民間工事では、公共工事の労務単価を参考にしつつ、独自に設定するのが一般的です。
| 職種・レベル | 人工代の目安 |
|---|---|
| 普通作業員 | 15,000〜22,000円 |
| 見習い職人 | 12,000〜18,000円 |
| 一般職人 | 18,000〜25,000円 |
| 熟練職人 | 25,000〜35,000円 |
| 専門技術者 | 30,000〜40,000円 |
人工代が変動する要因
- 職種:専門性が高いほど高単価
- 経験年数:熟練工と見習いで差がある
- 地域:都市部は高く、地方は低い傾向
- 資格の有無:資格保有者は高単価
- 作業の難易度:危険作業・特殊作業は高単価
- 繁忙期・閑散期:繁忙期は高くなる傾向
人工代の計算方法
人工代の基本的な計算方法を解説します。
基本の計算式
人工代 = 人工単価 × 人数 × 日数
計算例①:基本パターン
- 人工単価:25,000円
- 作業人数:2人
- 作業日数:3日
人工代 = 25,000円 × 2人 × 3日 = 150,000円(6人工)
計算例②:半日作業
- 人工単価:25,000円
- 作業人数:1人
- 作業時間:4時間(半日)
人工代 = 25,000円 × 0.5人工 = 12,500円
計算例③:複数職種
| 職種 | 単価 | 人数 | 日数 | 人工 | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 大工 | 28,000円 | 2人 | 5日 | 10 | 280,000円 |
| 電気工 | 30,000円 | 1人 | 3日 | 3 | 90,000円 |
| 普通作業員 | 20,000円 | 1人 | 5日 | 5 | 100,000円 |
| 合計 | 18 | 470,000円 |
歩掛を使った計算
歩掛(ぶがかり)とは、作業ごとにかかる手間を数値化したものです。
計算式:
労務費 = 数量 × 歩掛 × 人工単価
計算例:
- 作業内容:壁クロス貼り
- 数量:100m²
- 歩掛:0.05人工/m²
- 人工単価:25,000円
労務費 = 100m² × 0.05人工/m² × 25,000円 = 125,000円(5人工)
人工代の見積書への記載方法
人工代を見積書に記載する際のポイントを解説します。
記載すべき項目
- 作業内容:どんな作業か
- 職種:大工、電気工など
- 単価:1人工あたりの金額
- 数量(人工):人数 × 日数
- 金額:単価 × 数量
見積書の記載例①:シンプルな記載
| No. | 項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 大工工事(人工) | 10 | 人工 | 28,000 | 280,000 |
| 2 | 電気工事(人工) | 3 | 人工 | 30,000 | 90,000 |
| 3 | 普通作業員(人工) | 5 | 人工 | 20,000 | 100,000 |
| 人工代 計 | 18 | 470,000 |
見積書の記載例②:詳細な記載
| No. | 項目 | 摘要 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 大工工事 | 2人×5日 | 10 | 人工 | 28,000 | 280,000 |
| 2 | 電気工事 | 1人×3日 | 3 | 人工 | 30,000 | 90,000 |
| 3 | 運搬・清掃 | 1人×5日 | 5 | 人工 | 20,000 | 100,000 |
| 人工代 計 | 18 | 470,000 |
見積書の記載例③:材料費と一緒に記載
| No. | 項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 【木工事】 | |||||
| 1 | 構造材 | 1 | 式 | − | 500,000 |
| 2 | 造作材 | 1 | 式 | − | 200,000 |
| 3 | 大工手間(人工) | 10 | 人工 | 28,000 | 280,000 |
| 木工事 計 | 980,000 | ||||
適正な人工単価の設定方法
利益を確保するための適正な人工単価の設定方法を解説します。
人工単価の構成要素
人工単価には、以下の要素を考慮して設定します。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 基本日額 | 職人に支払う1日の賃金 |
| 法定福利費 | 社会保険料の事業主負担分(約15〜16%) |
| 諸経費 | 交通費、工具費、消耗品費など |
| 利益 | 会社の利益 |
人工単価の算出例
計算例:
- 職人への支払い日額:20,000円
- 法定福利費(16%):3,200円
- 諸経費(10%):2,000円
- 利益(15%):3,000円
人工単価 = 20,000 + 3,200 + 2,000 + 3,000 = 28,200円
単価設定のポイント
- 公共工事設計労務単価を参考にする:最低限の目安として
- 地域の相場を把握する:同業他社の単価を調査
- 職種・経験年数で差をつける:熟練工と見習いは別単価
- 法定福利費を忘れずに:社会保険料の事業主負担を考慮
- 利益を確保する:適正な利益を上乗せ
人工代を見積もる際の注意点
人工代を見積もる際に注意すべきポイントを解説します。
注意点①:残業・休日出勤は別途計上
人工代は1日8時間の基本労働を前提としています。残業や休日出勤が発生する場合は、割増賃金を別途計上しましょう。
- 時間外労働:25%以上の割増
- 休日労働:35%以上の割増
- 深夜労働:25%以上の割増
注意点②:交通費の取り扱い
交通費は人工代に含める場合と別途計上する場合があります。事前にどちらの方式か明確にしておきましょう。
総人工代 = 人工代 + 交通費 + 消費税
注意点③:外注費か給与かの判断
人工代の支払いは、一般的に外注費として処理しますが、以下の場合は給与として扱う必要があります。
給与とみなされるケース:
- 雇用契約を締結している場合
- 自社の指揮監督のもとで作業している場合
- 作業時間や場所を指定している場合
「外注費」で支払うべきところを「給与」として処理していなかった場合、追加徴税が発生する恐れがあります。判断が難しい場合は税務署や税理士に相談しましょう。
注意点④:消費税の記載
人工代は消費税10%の対象です(軽減税率の対象外)。見積書には税抜き価格と税込み価格を明記しましょう。
注意点⑤:インボイス制度への対応
インボイス制度に対応した見積書・請求書には、以下の記載が必要です。
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 税率ごとに区分した消費税額
利益を確保する人工代の算出のコツ
適正な利益を確保するためのコツを紹介します。
コツ①:作業日数を正確に見積もる
作業日数を甘く見積もると、赤字工事になる原因となります。過去の実績を参考に、余裕を持った日数を設定しましょう。
コツ②:歩掛を活用する
自社の過去実績から歩掛データを蓄積しておくと、精度の高い見積もりができます。
コツ③:職種・スキルで単価を分ける
すべての作業員を同じ単価で計算するのではなく、職種や経験年数で単価を分けることで、より正確な見積もりができます。
コツ④:予備日を設定する
天候不良や予期せぬトラブルに備えて、予備日(バッファ)を設定しておきましょう。
コツ⑤:定期的に単価を見直す
人工代の相場は年々上昇しています。定期的に単価を見直し、適正な価格で見積もりましょう。
まとめ
人工代は、作業員1人が1日(8時間)働いたときの人件費を指す建設業界の基本用語です。適正な人工単価を設定し、正確に見積もることで、利益を確保できます。
本記事のポイント:
- 人工代は日給ベース(8時間)で算出、残業代・手当は含まない
- 労務費は人件費の一部、人工代はその基本単位
- 相場は職種・地域・経験により異なる(全職種平均約23,600円)
- 計算式:人工代 = 人工単価 × 人数 × 日数
- 見積書には作業内容・職種・単価・数量・金額を明記
- 法定福利費・諸経費・利益を考慮して単価を設定
人工代の見積もりを正確に行い、適正な利益を確保しましょう。
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