
建設業の見積書を書く方法:内訳と利益率を意識した作成ポイント
公開日:2025.02.21
▼ 目次
建設業における見積書は、工事の受注段階で発注者と合意を図るうえで非常に重要な書類です。正確な見積を提示できれば、依頼主の信頼を得て契約に結びつきやすくなります。一方で、曖昧な見積書を作ってしまうと、工事後の追加費用やトラブルの原因となる恐れがあります。
本記事では、見積書を作成する際の基本的な構成、内訳の書き方、そして利益率を意識しながら見積書を作成するためのポイントをわかりやすく解説します。適切な見積書を用意することで、受注確度の向上や顧客との良好な関係構築にもつながるはずです。

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参考記事:工事価格の計算方法とは?直接工事費の計算方法や構成を解説
参考記事(外部サイト):建設工事の見積書の書き方を解説!概要や内訳・必要な項目を紹介
見積書の基本構成
見積書に含めるべき要素
建設業の見積書は、工事の種類や規模によって書式がさまざまですが、一般的に以下の要素を盛り込む必要があります。
- 工事名・工事件名
どの現場・どの工事なのかを明確に記載します。 - 見積番号・日付
見積書を管理するために固有の番号や発行日を付与します。 - 発注者・見積提出先の情報
会社名や個人名、住所や担当者名など。 - 工事内容(概要)
該当工事の規模や目的、設計図書などを参照した概要を簡潔に示します。 - 内訳明細・数量・単価
次項で詳しく説明する「内訳」に相当します。 - 見積合計額・消費税
小計、諸経費、消費税額を含めた最終的な合計金額を明示します。 - 工期・納期・有効期限
いつからいつまでに施工するのか、また見積の有効期限も記載します。 - 支払い条件(支払い方法・タイミング)
分割払いか一括払いか、支払いの時期など。
書式やフォーマットの自由度
一般的に、見積書の書式は法的に厳密な規定があるわけではありません。ただし、公共工事や大手ゼネコンとの取引などでは、定型フォームを使用するケースもあります。自社独自の様式を使う場合は、発注者が見やすく理解しやすいレイアウトを心がけましょう。
見積書 内訳の書き方
1. 直接工事費の内訳
建設工事の見積では、まず「直接工事費」を細かく記載することが基本です。直接工事費は、実際に工事を行ううえで直接かかる費用を指し、以下のような項目に分けられます。
- 材料費
例:木材、鉄筋、コンクリート、仕上げ材、塗料など - 労務費(人件費)
例:大工・鉄筋工・左官・電気工など、それぞれの人数と作業時間、単価を分けて記載するとベター - 下請負費(専門工事費)
例:配管工事や電気配線工事など、自社で対応しない工種を外部に依頼する費用 - 機材・重機使用料
例:クレーン車やユンボのレンタル料、運搬費、燃料費など - 運搬費
資材を現場まで運ぶトラックの費用や処分場への運搬費など
2. 間接工事費(諸経費)の内訳
次に、工事全体を通じて必要となる共通仮設費や現場管理費など、間接的な費用を示します。
- 共通仮設費
例:仮設事務所の設置費、仮囲い、足場の設置など - 現場管理費
例:現場監督の人件費や施工管理ソフトの費用、保険料など - 安全衛生費
例:安全ネットやヘルメット、保護具など安全対策に要する費用 - 一般管理費(本社経費)
本社の間接部門(経理・総務など)のコストを工事ごとに按分する場合
3. 経費の算出方法
見積 書 内訳をわかりやすく示すために、数量と単価を掛け合わせる形式を採用するのが一般的です。
- 材料費:数量 × 単価
- 労務費:作業時間 × 時給 × 人数
- 諸経費:直接工事費に対して「○○%」を乗じて一括計上する場合もある
特に、下請負費などは一式表記になりやすいですが、可能な限り明細を記載し、合意形成のトラブルを防ぎましょう。
利益率を意識した見積のコツ
適正利益率の考え方
建設業における利益率は、工事売上高に対する純利益の割合を指します。適正な利益率を確保するには、過剰な値引きや不正確な原価計算を避け、どの程度のマージンを得るべきかを戦略的に設定することが大切です。
- 例:工事受注金額が1,000万円、純利益が80万円の場合、利益率は8%
利益率を高める要素
- 原価管理の徹底
材料や労務費を日々モニタリングし、ロスや無駄な残業を削減する。 - 工程管理の効率化
工期が延びれば人件費や仮設費が増加するため、適切なスケジュール管理を行う。 - リスク対策
追加工事や仕様変更が発生しそうな場合、あらかじめ条件を見積書に盛り込んでおく。 - 付加価値の提案
単純な価格競争に陥らないよう、耐久性やデザイン性など付加価値を提示して、適正価格で受注できる体制を整える。
安易な低価格競争の弊害
利益率を下げれば受注率は上がるかもしれませんが、過度な低価格受注を続けると、最終的には赤字リスクや品質低下、従業員の待遇悪化などの問題を招きます。適正な利益率を確保し、安定的に経営を回すためには、コスト削減と付加価値提供のバランスを取ることが不可欠です。
見積書作成時に押さえておきたいポイント
1. 工事内容の明確化
見積書を作成する前に、設計図や仕様書をよく確認し、工事範囲や材料、仕上げレベルを明確にしておきます。不明点があるまま見積を進めると、後から追加工事が多発しやすくなり、発注者とのトラブルの原因となります。
2. 下請け・材料業者との打ち合わせ
自社でカバーできない工種や専門工事は、下請けに依頼するケースが多いです。見積金額を確定するには、下請け業者や材料業者との打ち合わせを十分に行い、正確な価格を反映させましょう。
3. 工期・人員計画との連動
見積書は単に金額を提示するだけでなく、どのくらいの人員と時間で工事を完了させるのかという工程計画とも連動しています。労務費の算出には、現場管理や工程表の作成が欠かせません。
4. 見積の有効期限を設定
建設資材の価格は市場動向や季節要因などで変動することがあるため、見積書に有効期限を設定するのが一般的です。1か月、3か月など、適切な期限を明記することで、値上げリスクや追加交渉を防ぎやすくなります。
5. 消費税の明示
見積金額には、消費税を含む場合と含まない場合があります。トラブルを避けるため、見積書には小計額(税抜き)、消費税額、税込み合計額を明確に分けて記載しましょう。
実際の見積書作成フロー
- 情報収集・下調べ
設計図・仕様書・現地調査をもとに、数量や工法を把握。 - 下請け・材料費の見積依頼
複数の業者から見積を取り寄せ、価格交渉や品質比較を行う。 - 内訳の作成
直接工事費(材料費・労務費・下請負費など)と諸経費を区分。 - 利益率の設定
過去の実績や経営目標を踏まえ、利益を確保できる金額を算出。 - 見積書の体裁整備
工事名や工期、支払い条件などを盛り込み、体裁を整える。 - 社内チェック・提出
見積ミスを防ぐためにダブルチェックを行い、発注者へ提出。
まとめ
建設業の見積書の作成は、工事の受注や信頼関係を築くための重要なプロセスです。内訳を明確に示しながら、利益率を十分に意識することで、適正な価格での受注と安定した経営が可能となります。
- 見積書の基本構成を押さえて、発注者が理解しやすい形で提示
- 見積書内訳として材料費・労務費・下請負費などを詳細に記載
- 工事全体を円滑に進めるための諸経費をわかりやすく示す
- 適正利益率を確保し、過度な価格競争を避ける
- 設計図や仕様書の確認、下請けとの連携など、事前の準備をしっかり行う
正しい見積書を作成することは、顧客満足度の向上だけでなく、工事後のトラブル防止にも直結します。ぜひ本記事を参考に、見積書の品質と信頼性を高め、建設業での受注機会を着実に広げていきましょう。