
施工費とは?建設業の費用内訳と原価管理の進め方
公開日:2025.02.21
建設業では、プロジェクトを計画どおりに完成させるために多様なコストがかかります。その中でも「施工費」は、実際の工事を行ううえで最も大きな割合を占める費用です。しかし、「施工費って具体的に何を含むのか?」や「原価管理をどう進めればいいのか?」といった疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
本記事では、施工費とは何かを明らかにし、建設業の原価管理の基本的な考え方、そしてコストの中心を担う人件費・労務費の取り扱い方まで、わかりやすく解説します。実務において建設業見積書を作成したり、工事の採算を検討する際にも役立つ情報をまとめました。

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参考記事:現場管理費・一般管理費・労務管理費の違いとは?意味の違いについて解説。
参考記事(外部サイト):建設業で使われる人工代とは?計算・請求方法、自社での取り扱いについて
1. 施工費とは
1-1. 施工費の定義
施工費とは、工事を行うために直接かかる費用の総称です。資材や重機の使用料から作業員の人件費、下請け工事費まで、実際に工事を進行させるうえで不可欠な要素を含みます。建築一式工事や電気工事、土木工事など、工種ごとに施工費の内訳は異なるものの、どの分野でも欠かせない基本費用と言えます。
1-2. 施工費を大きく分ける2種類の費用
- 直接工事費
実際の工事作業に使用される材料費・労務費・外注工事費など。 - 諸経費(間接工事費)
仮設工事や現場管理費、安全衛生費といった、工事全体を運営・管理するための費用。
施工費という言葉は、特に「直接工事費」に焦点が当たる場合が多いですが、施工の実態を管理するには、諸経費も含めて考慮するのが適切です。
2. 建設業の原価管理の基本
2-1. 原価管理の重要性
建設業で利益を確保するためには、受注段階で「建設業見積書」を作成すると同時に、工事全体のコストを把握し、実行予算をきちんと組むことが重要です。その後は、工事が進むにつれて予定外の追加費用やロスが発生しないよう、原価管理を徹底する必要があります。
- 原価管理のメリット
- 不要な支出を抑える
- 工期の遅れやトラブルを早期に発見
- 適切な利益率を確保できる
- 次回以降の工事見積り精度向上
2-2. 原価管理のプロセス
- 計画(見積・実行予算の設定)
建設業見積書と実行予算をもとに、どれだけのコストをかけるか目標を立てる。 - 実施(工事開始〜進捗管理)
資材の使用量や人件費の投入状況を日々管理し、逸脱があれば修正する。 - 評価・分析(工事完了後)
工事完了後に実績データをまとめ、見積との比較や問題点の洗い出しを行う。
**PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)**の視点で見ると、計画から評価・分析までの流れを継続することで、原価管理の精度を高めることができます。
3. 人件費・労務費の考え方
3-1. 人件費と労務費の違い
- 人件費:正社員やパートなど自社雇用の従業員に支払われる賃金や給与、社会保険料などを含む総合的な費用。
- 労務費:工事現場で働く作業員への支払(技能者や日雇い労働者など)が該当。労務費には社保完備でないケースもあり、業務委託的な形態の場合には下請け費用として計上する場合もある。
建設業では、職人や作業員を直接雇用するケースだけでなく、協力会社のスタッフを活用することも多いので、誰にどの形態で報酬を支払っているかを区分して管理する必要があります。
3-2. 人件費・労務費管理のポイント
- 出面管理
作業員が何時間、何日働いたかを正確に把握する。現場で出勤簿(出面表)をつけ、日報と照合するのが基本。 - 技能レベル別の単価設定
大工や配管工など職種別、熟練度別に単価を設定し、人件費を算出。 - 残業・休日出勤のコントロール
工期遅れや追加工事によって、残業や休日出勤が増えると労務費が膨らみやすい。工程管理と連動して対策を講じる。 - 成果報酬やインセンティブ
早期完工や高品質施工などのインセンティブ制度を設けることで、生産性を高め、結果として原価低減に寄与することもある。
4. 施工費の主な内訳
4-1. 材料費
コンクリート、鉄筋、木材、断熱材、仕上げ材など、工事で使う資材の費用。大量発注やシーズンオフの購入による割引交渉、代替品の検討などによりコストダウンが図れます。
4-2. 労務費(人件費)
先ほど触れたように、職人や作業員への報酬。労務単価×人数×稼働日数で算出するのが一般的です。
4-3. 下請け工事費
専門工種(電気・設備・配管など)を下請け会社に依頼する費用。外注先との契約内容や工事範囲を明確にし、追加工事が生じないよう事前に仕様を固めておくことが大切です。
4-4. 重機・機材使用料
クレーン、ユンボ(バックホー)、生コンポンプ車などをレンタルするときにかかる使用料。工期の延長や作業効率の悪化によって台数や使用日数が増えれば、すぐに費用が膨らむので注意が必要です。
4-5. 諸経費(仮設費・現場管理費など)
現場全体で必要となる仮設事務所、仮設トイレ、足場設置、敷地周りの仮囲いなど。現場監督や警備員の人件費、各種保険料、安全衛生費も含まれる場合があります。
5. 原価管理の進め方
5-1. 見積書と実行予算の作成
- 建設業見積書の作成
発注者との契約前に提出する見積書では、施工費(直接工事費+諸経費)を明示し、工期や支払い条件などを示す。 - 実行予算の策定
工事が決まったら、見積書よりも詳細な「実行予算」を作成し、より正確にコストを見積もる。ここで材料や労務の単価、数量を細部まで検討することで、計画的に原価管理を行える。
5-2. 工事進捗とコストのリアルタイム把握
- 日次・週次の会議
作業員の出面や使用材料、進捗状況を報告し、予定と実績の差を確認。 - ソフトウェア活用
原価管理ツールやクラウド型の工事管理アプリを使うことで、現場と本社間の情報共有をスムーズにし、リアルタイムでコスト把握が可能。
5-3. 異常値の早期発見と対策
計画よりも大幅に人件費が増えている、材料ロスが多いなどの異常値を早期に察知できれば、工程調整や追加発注コストの見直しなど柔軟に対処ができる。定期的にデータを可視化し、原因を分析して改善策を講じることが重要です。
6. 施工費削減のポイント
6-1. 工程管理の徹底
- クリティカルパスの把握
工期に直結する作業(クリティカルパス)を中心にスケジュール管理を強化し、無駄な残業や待ち時間を減らす。 - 工期短縮による間接費削減
仮設事務所や足場のリース費用は日数に比例して増加するため、工期を短縮できれば諸経費を抑えられる。
6-2. 資材調達の工夫
- 一括購入や代理店ルートの活用
まとめ買いにより単価を下げたり、取引先を集約して価格交渉力を高める。 - 仕様変更・代替品の検討
高機能な資材を別のメーカー品に切り替えることでコストダウンが可能な場合もある。品質とのバランスを考慮しながら検討する。
6-3. 職人の育成・効率化
- 多能工の活用
ひとりの職人が複数の工程を担当できるよう育成すれば、移動時間や待機時間を減らして効率化できる。 - チームワーク向上
現場監督と作業員が密にコミュニケーションを取り、予定外の手戻りや追加作業を少なくする。
7. まとめ
施工費とは、工事を実際に行うために必要な直接工事費と諸経費(間接工事費)を合わせた大枠の費用を指し、建設業におけるコスト管理の中心的な存在です。
- 建設業 原価管理では、計画段階(見積書・実行予算)から、工事進行、完了後の評価まで一貫してコストの動きを把握することが重要。
- 人件費・労務費は施工費の中でも大きな割合を占めるため、出面管理やスキル別単価設定などを徹底し、無駄な稼働や残業を抑える工夫が必要。
- 工程管理の徹底、資材調達の見直し、職人の育成など、複合的な手段を講じることで施工費を最適化し、品質と利益を両立させられる。
最終的に、プロジェクト全体の成功は、施工費と品質・工期のバランスをどれだけうまく取れるかにかかっています。ぜひ本記事で紹介した原価管理のポイントや人件費・労務費の考え方を参考に、工事のコストをしっかり掌握しながら、スムーズな施工を実現してみてください。