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歩掛(ぶがかり)とは?歩掛の積算根拠や計算方法について解説します

歩掛(ぶがかり)とは?歩掛の積算根拠や計算方法について解説します。

建設業界で工事を計画・実行する際、適正な見積もりを作成するために「歩掛(ぶがかり)」という基準が使われます。歩掛とは、ある単位作業量(たとえば1㎡や1m³など)を行うために必要な労働力、資材、機械などの量を示した数値のことです。

歩掛は工事計画を立てる際の基礎となるだけでなく、積算や見積もり、コスト管理の要としても重要な役割を果たします。本記事では、歩掛の定義、構成要素、計算方法、実際の活用例について詳しく解説します。


[1] 歩掛(ぶがかり)とは?

歩掛の定義

歩掛とは、一定の作業単位を実行するために必要な労働力(人工)、資材、機械の使用量を数値化したものです。具体的には、1m³のコンクリートを打設する、または1㎡の壁を塗装するために必要なリソースを定量的に表します。

たとえば、「1m³のコンクリート打設に対して、労働者3人の1日分(3人工)とコンクリート1トンの材料、機械稼働2時間分のコストが必要」というように、工事内容ごとに歩掛が決まっています。

歩掛が重要な理由

  1. 積算の基礎データとして活用
     歩掛は工事に必要なリソースを正確に算出するための指標です。適正なコスト算出や見積もりに欠かせません。
  2. 作業効率の標準化
     工事ごとの作業効率を歩掛で統一することで、リソースの最適化を図ることができます。
  3. 工事間の比較が可能
     異なる工事案件間で効率やコストを比較する際にも役立ちます。

[2] 歩掛の構成要素

歩掛は、以下の3つの主要要素で構成されています。

1. 労務費(人工)

労務費は、作業を行う労働者にかかる費用を指します。歩掛では、1人工(にんく:作業員1人が1日働いた単位)を基準に計算されます。

例:コンクリート工事の場合

  • 労働者数:3名
  • 作業日数:5日
  • 1人工単価:25,000円

労務費=3名×5日×25,000円=375,000円

2. 材料費

材料費は、作業に必要な資材の費用を指します。材料単価に使用量を掛け合わせて算出します。

例:コンクリートの材料費

  • コンクリートの単価:12,000円/m³
  • 使用量:10m³

材料費=12,000円×10m3=120,000円

3. 機械費

機械費は、工事で使用する機械や設備の運転費用を指します。時間単位または日単位で計算されます。

例:バックホー(油圧ショベル)の使用費用

  • 使用時間:20時間
  • 時間単価:15,000円

機械費=15,000円×20時間=300,000円


[3] 歩掛の積算根拠

歩掛の積算根拠は、以下のようなデータや基準を基に設定されます。

1. 国土交通省の積算基準

公共工事では、国土交通省が提供する積算基準を基に歩掛が設定されています。これにより、地域や工事の種類を問わず統一された基準での積算が可能です。

2. 実績データ

企業内で蓄積された同種の工事における過去データも歩掛設定の根拠となります。たとえば、ある工事で1人工あたりの作業量が5m³であった場合、次回の工事でもそのデータが参考にされます。

3. 地域特性

地域ごとの労務費や資材単価、機械費が異なるため、地域特性を考慮した歩掛が設定されます。


[4] 歩掛の計算方法

基本計算式

歩掛を用いて工事費を計算する基本式は以下の通りです。工事費=労務費+材料費+機械費工事費 = 労務費 + 材料費 + 機械費工事費=労務費+材料費+機械費

具体例:土工事の計算

  • 労務費:25,000円 × 4名 × 8日 = 800,000円
  • 材料費:10,000円/m³ × 30m³ = 300,000円
  • 機械費:12,000円 × 40時間 = 480,000円

工事費=800,000円+300,000円+480,000円=1,580,000円


[5] 歩掛の活用例

1. 見積書の作成

歩掛は見積書の作成において非常に重要です。労務費、材料費、機械費を基に正確な見積もりを作成することで、発注者に信頼される資料を提供できます。

2. 工事計画の立案

歩掛を用いて工事全体のコストを計算し、効率的な工事計画を立てることができます。たとえば、必要なリソースを調整することで、コスト削減や工期短縮を図ることが可能です。

3. コスト管理

工事中にも歩掛を利用して、実際の進捗とコストを比較し、予算内で収めるための管理を行います。

[6] 歩掛の具体例:ケーススタディで学ぶ

歩掛を実際のケースに当てはめて具体例を見てみましょう。ここでは「コンクリート舗装工事」を例に、歩掛を用いて工事費を算出する方法を解説します。

コンクリート舗装工事の概要

  • 作業内容:コンクリート舗装(50㎡)
  • 必要作業:整地、型枠設置、コンクリート打設
  • 使用機械:バックホー、コンクリートミキサー

歩掛の設定

項目数量単価計算式費用
労務費5名 × 8日25,000円/人工5 × 8 × 25,0001,000,000円
材料費30m³12,000円/m³30 × 12,000360,000円
機械費(バックホー)50時間15,000円/時間50 × 15,000750,000円
機械費(ミキサー)40時間10,000円/時間40 × 10,000400,000円

工事費の合計

工事費=1,000,000円+360,000円+750,000円+400,000円=2,510,000円

このように、歩掛を用いることで工事全体の費用を構成要素ごとに明確化し、適正な見積もりを作成することが可能です。


[7] 歩掛の設定時に注意すべきポイント

歩掛を適切に設定するためには、いくつかの注意点があります。

1. 最新の単価データを使用する

材料費や労務費、機械費は市場の変動や地域特性によって異なるため、積算時には最新の単価データを使用する必要があります。国土交通省が公表する労務単価や市場データを参考にしましょう。

2. 現場条件を考慮する

現場条件によって作業効率や使用機械が変わるため、実際の工事現場に合わせた歩掛設定が重要です。

  • :都市部と地方では交通事情により材料の搬入時間が異なる。

3. 予備費を考慮する

工事中には予測不能な事態が発生する可能性があります。歩掛の計算に予備費を含めることで、リスクヘッジが可能です。


[8] 歩掛を活用した工事計画の実践例

1. 小規模工事の例:駐車場の舗装

  • 作業内容:アスファルト舗装
  • 面積:200㎡
  • 工期:2日間

必要リソース

  • 労務費:10人工 × 25,000円 = 250,000円
  • 材料費:15トン × 10,000円 = 150,000円
  • 機械費:ローラー8時間 × 12,000円 = 96,000円

合計工事費250,000円+150,000円+96,000円=496,000円

2. 大規模工事の例:道路建設

  • 作業内容:路盤整備と舗装
  • 路盤面積:5,000㎡
  • 工期:3か月

必要リソース

  • 労務費:300人工 × 25,000円 = 7,500,000円
  • 材料費:コンクリート500m³ × 12,000円 = 6,000,000円
  • 機械費:バックホー500時間 × 15,000円 = 7,500,000円

合計工事費7,500,000円+6,000,000円+7,500,000円=21,000,000円


[9] 歩掛の地域差と調整方法

地域ごとに歩掛が異なる要因として、以下の点が挙げられます。

  1. 労務費の差
     都市部の労務費は地方より高い傾向があります。
  2. 材料費の差
     資材の輸送距離や供給量が地域によって異なります。
  3. 天候の影響
     寒冷地では作業効率が低下しやすく、必要なリソースが増える場合があります。

地域差を反映させた積算のポイント

  1. 各地域の労務単価を確認する。
  2. 材料費は現地調達が可能かを検討する。
  3. 天候や地形条件を考慮して、予備費を加える。

[10] まとめ

歩掛は、建設業界における積算と工事計画の基礎となる重要な概念です。労務費、材料費、機械費を正確に算出し、適切な積算根拠を用いることで、効率的な工事運営が可能になります。

また、最新の単価データや地域特性を考慮し、現場に即した歩掛を設定することで、コスト削減と品質向上の両立が期待できます。本記事を参考に、歩掛の知識を実務に役立ててください。

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