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歩掛(ぶがかり)とは?歩掛の積算根拠や計算方法について解説します。
公開日:2024.12.15
▼ 目次
建設業界で工事を計画・実行する際、適正な見積もりを作成するために「歩掛(ぶがかり)」という基準が使われます。歩掛とは、ある単位作業量(たとえば1㎡や1m³など)を行うために必要な労働力、資材、機械などの量を示した数値のことです。
歩掛は工事計画を立てる際の基礎となるだけでなく、積算や見積もり、コスト管理の要としても重要な役割を果たします。本記事では、歩掛の定義、構成要素、計算方法、実際の活用例について詳しく解説します。
[1] 歩掛(ぶがかり)とは?
歩掛の定義
歩掛とは、一定の作業単位を実行するために必要な労働力(人工)、資材、機械の使用量を数値化したものです。具体的には、1m³のコンクリートを打設する、または1㎡の壁を塗装するために必要なリソースを定量的に表します。
たとえば、「1m³のコンクリート打設に対して、労働者3人の1日分(3人工)とコンクリート1トンの材料、機械稼働2時間分のコストが必要」というように、工事内容ごとに歩掛が決まっています。
歩掛が重要な理由
- 積算の基礎データとして活用
歩掛は工事に必要なリソースを正確に算出するための指標です。適正なコスト算出や見積もりに欠かせません。 - 作業効率の標準化
工事ごとの作業効率を歩掛で統一することで、リソースの最適化を図ることができます。 - 工事間の比較が可能
異なる工事案件間で効率やコストを比較する際にも役立ちます。
[2] 歩掛の構成要素
歩掛は、以下の3つの主要要素で構成されています。
1. 労務費(人工)
労務費は、作業を行う労働者にかかる費用を指します。歩掛では、1人工(にんく:作業員1人が1日働いた単位)を基準に計算されます。
例:コンクリート工事の場合
- 労働者数:3名
- 作業日数:5日
- 1人工単価:25,000円
労務費=3名×5日×25,000円=375,000円
2. 材料費
材料費は、作業に必要な資材の費用を指します。材料単価に使用量を掛け合わせて算出します。
例:コンクリートの材料費
- コンクリートの単価:12,000円/m³
- 使用量:10m³
材料費=12,000円×10m3=120,000円
3. 機械費
機械費は、工事で使用する機械や設備の運転費用を指します。時間単位または日単位で計算されます。
例:バックホー(油圧ショベル)の使用費用
- 使用時間:20時間
- 時間単価:15,000円
機械費=15,000円×20時間=300,000円
[3] 歩掛の積算根拠
歩掛の積算根拠は、以下のようなデータや基準を基に設定されます。
1. 国土交通省の積算基準
公共工事では、国土交通省が提供する積算基準を基に歩掛が設定されています。これにより、地域や工事の種類を問わず統一された基準での積算が可能です。
2. 実績データ
企業内で蓄積された同種の工事における過去データも歩掛設定の根拠となります。たとえば、ある工事で1人工あたりの作業量が5m³であった場合、次回の工事でもそのデータが参考にされます。
3. 地域特性
地域ごとの労務費や資材単価、機械費が異なるため、地域特性を考慮した歩掛が設定されます。
[4] 歩掛の計算方法
基本計算式
歩掛を用いて工事費を計算する基本式は以下の通りです。工事費=労務費+材料費+機械費工事費 = 労務費 + 材料費 + 機械費工事費=労務費+材料費+機械費
具体例:土工事の計算
- 労務費:25,000円 × 4名 × 8日 = 800,000円
- 材料費:10,000円/m³ × 30m³ = 300,000円
- 機械費:12,000円 × 40時間 = 480,000円
工事費=800,000円+300,000円+480,000円=1,580,000円
[5] 歩掛の活用例
1. 見積書の作成
歩掛は見積書の作成において非常に重要です。労務費、材料費、機械費を基に正確な見積もりを作成することで、発注者に信頼される資料を提供できます。
2. 工事計画の立案
歩掛を用いて工事全体のコストを計算し、効率的な工事計画を立てることができます。たとえば、必要なリソースを調整することで、コスト削減や工期短縮を図ることが可能です。
3. コスト管理
工事中にも歩掛を利用して、実際の進捗とコストを比較し、予算内で収めるための管理を行います。
[6] 歩掛の具体例:ケーススタディで学ぶ
歩掛を実際のケースに当てはめて具体例を見てみましょう。ここでは「コンクリート舗装工事」を例に、歩掛を用いて工事費を算出する方法を解説します。
コンクリート舗装工事の概要
- 作業内容:コンクリート舗装(50㎡)
- 必要作業:整地、型枠設置、コンクリート打設
- 使用機械:バックホー、コンクリートミキサー
歩掛の設定
項目 | 数量 | 単価 | 計算式 | 費用 |
---|---|---|---|---|
労務費 | 5名 × 8日 | 25,000円/人工 | 5 × 8 × 25,000 | 1,000,000円 |
材料費 | 30m³ | 12,000円/m³ | 30 × 12,000 | 360,000円 |
機械費(バックホー) | 50時間 | 15,000円/時間 | 50 × 15,000 | 750,000円 |
機械費(ミキサー) | 40時間 | 10,000円/時間 | 40 × 10,000 | 400,000円 |
工事費の合計
工事費=1,000,000円+360,000円+750,000円+400,000円=2,510,000円
このように、歩掛を用いることで工事全体の費用を構成要素ごとに明確化し、適正な見積もりを作成することが可能です。
[7] 歩掛の設定時に注意すべきポイント
歩掛を適切に設定するためには、いくつかの注意点があります。
1. 最新の単価データを使用する
材料費や労務費、機械費は市場の変動や地域特性によって異なるため、積算時には最新の単価データを使用する必要があります。国土交通省が公表する労務単価や市場データを参考にしましょう。
2. 現場条件を考慮する
現場条件によって作業効率や使用機械が変わるため、実際の工事現場に合わせた歩掛設定が重要です。
- 例:都市部と地方では交通事情により材料の搬入時間が異なる。
3. 予備費を考慮する
工事中には予測不能な事態が発生する可能性があります。歩掛の計算に予備費を含めることで、リスクヘッジが可能です。
[8] 歩掛を活用した工事計画の実践例
1. 小規模工事の例:駐車場の舗装
- 作業内容:アスファルト舗装
- 面積:200㎡
- 工期:2日間
必要リソース
- 労務費:10人工 × 25,000円 = 250,000円
- 材料費:15トン × 10,000円 = 150,000円
- 機械費:ローラー8時間 × 12,000円 = 96,000円
合計工事費250,000円+150,000円+96,000円=496,000円
2. 大規模工事の例:道路建設
- 作業内容:路盤整備と舗装
- 路盤面積:5,000㎡
- 工期:3か月
必要リソース
- 労務費:300人工 × 25,000円 = 7,500,000円
- 材料費:コンクリート500m³ × 12,000円 = 6,000,000円
- 機械費:バックホー500時間 × 15,000円 = 7,500,000円
合計工事費7,500,000円+6,000,000円+7,500,000円=21,000,000円
[9] 歩掛の地域差と調整方法
地域ごとに歩掛が異なる要因として、以下の点が挙げられます。
- 労務費の差
都市部の労務費は地方より高い傾向があります。 - 材料費の差
資材の輸送距離や供給量が地域によって異なります。 - 天候の影響
寒冷地では作業効率が低下しやすく、必要なリソースが増える場合があります。
地域差を反映させた積算のポイント
- 各地域の労務単価を確認する。
- 材料費は現地調達が可能かを検討する。
- 天候や地形条件を考慮して、予備費を加える。
[10] まとめ
歩掛は、建設業界における積算と工事計画の基礎となる重要な概念です。労務費、材料費、機械費を正確に算出し、適切な積算根拠を用いることで、効率的な工事運営が可能になります。
また、最新の単価データや地域特性を考慮し、現場に即した歩掛を設定することで、コスト削減と品質向上の両立が期待できます。本記事を参考に、歩掛の知識を実務に役立ててください。