【積算】労務費の計算方法とは?人件費との違い・計算方法を解説!
公開日:2024.12.15
▼ 目次
[1] 労務費とは?人件費との違い
労務費は、建設業における積算や原価計算に欠かせない重要な要素です。労務費には直接作業に従事する労働者の賃金や手当、社会保険料が含まれます。一方で、人件費は労務費を含む広範な概念で、管理職や事務職の給与、福利厚生費なども含まれます。
労務費と人件費の違い
項目 | 労務費 | 人件費 |
---|---|---|
対象範囲 | 工事に関係する労務者の賃金や手当、法定福利費 | 全従業員の給与や福利厚生費 |
含まれる費用 | 賃金、手当、社会保険料 | 労務費+管理職や事務職の費用 |
例えば、建設現場で働く職人や現場監督の賃金は労務費に該当しますが、事務職員の給与は人件費に分類されます。この違いを正確に理解することで、原価計算や積算の精度が向上します。
[2] 建設業の労務費の内訳
建設業の労務費は以下の5つに分類されます。
- 賃金
- 雑給
- 賞与・諸手当
- 退職給付金
- 法定福利費
ポイントは、労務費は給料(賃金)だけではなく、施工現場で作業をする方に支払う給料以外のお金が含まれるという点です。ここからは、上記の5つの分類について、詳しく解説していきます。
賃金
賃金とは、直接雇用の従業員に対して作業対価として支払う報酬のことです。具体的には現場で実際に工事を行う、自社の職人に対して支払う給料になります。パートやアルバイトの職員に対して支払う報酬は次で説明する雑給に分類されるので注意が必要です。
雑給
雑給は、非直接雇用の従業員(パート・アルバイト等)の職人に支払う給料や手当を指します。直接雇用の職人に対するものとは異なり、以下のような方に支払うものが対象です。
- パートタイム労働者
- アルバイト労働者
- 日雇いの職人
- 期間工
法定福利費
法定福利費とは、社会保険料や雇用保険などのうち、雇用主が負担する部分であり、主に以下が対象になります。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料
- 雇用保険料
- 子ども・子育て拠出金
- 労働者災害補償保険料
賞与・諸手当
給料とは別に支給される給与全般を意味します。
代表的なものはボーナスですが、他にも通勤手当や家賃補助などの諸手当全般が該当します。
- 家賃補助
- 通勤手当
- 扶養手当
退職給付金
退職給付金は、従業員の方が退職する際に支払われるお金のことです。多くの場合、退職の際に支払うために退職給付金を積み立てておくことになります。一般的なイメージの退職金(退職一時金)の他に、確定給付企業年金や厚生年金基金なども、退職給付金に該当します。
[3] 労務費の分類
労務費は、作業内容や役割によって「直接労務費」と「間接労務費」に分けられます。それぞれの内訳を以下に詳しく解説します。
1. 直接労務費
直接労務費は、現場作業に直接従事する作業員の賃金及び、臨時の従業員に対して支払う雑給が該当します。ただし、複数の現場を掛け持ちしている職人の移動時間に発生する賃金は間接労務費に分類されるため、注意が必要です。
2. 間接労務費
特定の工事ごとにどれだけ消費されたか把握できない労務費のことを、間接労務費といいます。間接労務費は、以下が主な内訳です。注意が必要なのは、現場の労務者に支払う費用であっても、賞与や退職給付金・法定福利費・有給手当・休業手当・育児休暇手当などの費用は、特定の工事現場に対して直接かかる性質の費用ではないため、間接労務費に該当するという点です。
- 賞与
- 有給手当
- 休業手当
- 育児休暇手当
- 法定福利費
- 退職給付金
- 機械のメンテナンスや修理、運搬など、間接作業にかかる賃金
- 研修や教育費用
[4] 労務費の計算方法
労務費の正確な計算は、適切な原価管理や積算を行うために不可欠です。以下では直接労務費と間接労務費の計算方法を解説します。
1. 直接労務費の計算方法
労務費のうち現場で働く労務者の費用である直接労務費は「賃率」 × 「施工時間」で計算し、「賃率」 は「賃金」÷ 「作業時間」で計算します。
例:
作業員が複数現場を掛け持ちして合計で20時間働き、該当の現場での作業は5時間、月の賃金が200,000円だった場合:
「賃金」=200,000円
「賃率」=「賃金」200,000円÷「作業時間」20時間=10,000円
「直接労務費」=「賃率」10,000円 × 「施工時間」5時間 = 50,000円
2. 間接労務費の計算方法
間接労務費の計算方法は以下のとおりです。
・間接労務費=労務費-直接労務費
[5] 労務比率とは?工事種類別労務費率について
労務費率とは、請負金額に占める労務費の割合のことです。労災保険料の計算に必要になります。労災保険料は以下の計算式で算出することができます。
労災保険料=賃金総額×労災保険率
しかし請負労働者の多い建築業では賃金総額の把握が難しいため、「請負金額×労務費率」で賃金総額を計算することが認められています。
賃金総額=請負金額×労務費率
労務費率は業種により比率が厚生労働省によって定められています。
事業の種類 | 労務費率 |
道路新設事業 | 19% |
舗装工事業 | 17% |
鉄道 軌道新設事業 | 24% |
建築事業(既設建築物設備工事業を除く) | 23% |
既設建築物設備工事業 | 23% |
機械装置の組立て又は据付けの事業組 立て又は取付けに関するもの その他のもの | 38% 21% |
その他の建設事業 | 24% |
例:
土木工事で労務費が1,000,000円、労務費率が30%、労災保険料率が0.9%の場合:
労災保険料 = 1,000,000円 × 0.3 × 0.9% = 2,700円
[6] 労務費管理を効率化するおすすめツール
Excel(エクセル)
労務費の管理方法として最も一般的なのはExcelです。Excelは多くの方が利用したことがあり、Windowsの場合PCに標準インストールされているため、無料ですぐに利用を始められる点がメリットです。
また、Excelは会社ごとにフォーマットや計算式などを柔軟に設定することが可能で、現場ごとにシートやブックを作成することで幅広い用途に対応できます。また、関数やマクロを用いればデータの集計を効率的に実施することができるでしょう。
ただし、工事原価や労務費計算専用のツールではないため、最初のフォーマット作成に手間がかかること、ヒューマンエラーや計算ミスが発生する可能性が高いこと、建設現場や入退場データを管理システムやデータベースからエクセルに入力(移管)する手間が毎回発生することといったデメリットがあります。
施工管理アプリ
労務費や労災保険料の計算を効率化するには、施工管理アプリの活用が効果的です。施工管理アプリに蓄積された案件・現場の情報と入退場の記録からスムーズに労務費を計算することができます。特にAnymore施工管理がおすすめです。
Anymore施工管理では、LINE経由でリアルタイムに打刻した入退場記録を集計できるため、労務費の按分や労災保険料の計算がスムーズです。
またAnymore施工管理は、中小規模の現場管理に特化した施工管理(現場管理)アプリであるため、入退場管理に加え、現場が必要とする機能を幅広く備えています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
[6] まとめ
労務費の正確な計算は、建設業のコスト管理や積算精度向上に直結します。直接労務費と間接労務費を適切に区別し、工事種類別の労務費率を適用することで、正確かつ効率的な原価管理が可能となります。さらに、Anymore施工管理のようなツールを導入することで、労務費管理を最適化し、業務全体の効率を向上させることができます。これらを活用し、工事の成功と収益の最大化を目指しましょう!